企業は商品を販売する際、自社ブランドを付ける場合と反対に自社ブランドをあえて前面に出さない戦略を採る場合があります。
それでは、単独で商品ブランドを見たときと、企業ブランドが付いた商品ブランドを見たときとで、私たちの受けるイメージにはどういった違いが出るのでしょうか。今回は5つの製品について、「商品ブランドのみ」及び「商品ブランド+企業ブランド」で提示したときに受けるイメージをそれぞれ聞いてみました。調査対象は以下の通りです。
項目 | 商品ブランド | 商品ブランド+企業ブランド |
---|---|---|
缶コーヒー | ジョージア | ジョージア(日本コカ・コーラ) |
食品 | SOYJOY | SOYJOY(大塚製薬) |
洗剤 | アタック | アタック(花王) |
インクジェットプリンター | PIXUS | PIXUS(キヤノン) |
自動車 | プリウス | プリウス(トヨタ) |
【表1】商品ブランドと企業ブランド付き商品ブランド
Case1:缶コーヒー ジョージア⇔ジョージア(日本コカ・コーラ)
ジョージア | ジョージア(日本コカ・コーラ) | |
---|---|---|
製品のイメージがわく | 67 | 61 |
親しみがもてる | 57 | 51 |
好感がもてる | 41 | 43 |
品質が良い | 30 | 21 |
信頼できる、安心できる | 33 | 51 |
先進的である | 1 | 5 |
人や環境にやさしい | 0 | 1 |
センスが良い | 7 | 9 |
わくわくする | 1 | 3 |
高級感がある | 1 | 3 |
缶コーヒーシェアトップを誇るジョージア。飲料自動販売機のシェア40%とも言われる日本コカ・コーラの売上トップ製品です。 「ジョージア(以下前者商品ブランド単独)・ジョージア(日本コカ・コーラ)(以下後者企業ブランド付き)」では「製品のイメージがわく」(67%・61%)、「親しみがもてる」(57%・51%)、「品質がよい」(30%・21%)と「ジョージア」単独の評価が高くなっています。シリーズ化された製品は20種類余り。街中でも目にする機会は非常に多く、テレビCMでは企業名よりも商品名「ジョージア」が前面に流れています。同社では企業ブランドを前面に出さない戦略を採っていますが、それが十分な成果として現れているようですね。
一方、「信頼できる、安心できる」については(33%・51%)と企業ブランドが付く方が高ポイントになっています。このように、企業ブランドがあると信頼感という点においては勝ると言えそうです。
Case2:食品 SOYJOY ⇔SOYJOY(大塚製薬)
SOYJOY | SOYJOY(大塚製薬) | |
---|---|---|
製品のイメージがわく | 64 | 55 |
親しみがもてる | 26 | 17 |
好感がもてる | 23 | 27 |
品質が良い | 27 | 34 |
信頼できる、安心できる | 21 | 33 |
先進的である | 22 | 28 |
人や環境にやさしい | 14 | 7 |
センスが良い | 11 | 11 |
わくわくする | 3 | 3 |
高級感がある | 2 | 1 |
次は大塚製薬の大豆の粉にドライフルーツを加えて焼いた大豆バー「SOYJOY」です。大豆を意味する「SOY」と韻を踏んで楽しく食べることを意図とした「JOY」をあわせたネーミングはシリーズ化されたCMの効果もあって多くの人の知るところですね。イメージコンセプトは「お菓子よりも健康的で、機能性食品よりもナチュラル」だそうです。
「製品のイメージがわく」は(64%・55%)、「親しみがもてる」は(26%・17%)、「人や環境にやさしい」は(14%・7%)、と「SOYJOY」商品ブランド単独の方のポイントが高くなりました。一方「品質がよい」(27%・34%)、「信頼できる、安心できる」は(21%・33%)は企業ブランド付きのポイントがそれぞれ高くなっています。
SOYJOYもジョージア同様、企業ブランドを前面には出していませんが、親近感に関しては商品ブランド単独、信頼度については企業ブランド付きが高評価になっているようです。
Case3:洗濯用洗剤 アタック⇔アタック(花王)
アタック | アタック(花王) | |
---|---|---|
製品のイメージがわく | 55 | 58 |
親しみがもてる | 45 | 54 |
好感がもてる | 29 | 38 |
品質が良い | 32 | 34 |
信頼できる、安心できる | 55 | 56 |
先進的である | 3 | 3 |
人や環境にやさしい | 12 | 23 |
センスが良い | 0 | 2 |
わくわくする | 1 | 0 |
高級感がある | 1 | 0 |
続いては、発売から1年で合成洗濯用洗剤における花王のシェアを一気に20%アップさせ、それ以来20年余りに渡りトップシェアを守り続けている衣料用洗剤「アタック」です。酵素配合技術でそれまでの量の4分の1というコンパクト化に成功。洗濯洗剤分野において不動の地位を得ています。
「親しみがもてる」(45%・54%)、「好感がもてる」(29%・38%)、「人や環境にやさしい」(12%・23%)とポイントに差が出たものは全て企業ブランド付きの方のポイントが高くなっています。一方この3項目以外は非常に類似した評価になっています。「アタック」に限って言えば商品イメージも企業イメージも基本的には一致しており、さらに企業ブランドが加わることで一層好感度が高くなると言えるようです。
Case4:インクジェットプリンター PIXUS ⇔PIXUS(キヤノン)
PIXUS | PIXUS(キヤノン) | |
---|---|---|
製品のイメージがわく | 38 | 55 |
親しみがもてる | 22 | 24 |
好感がもてる | 19 | 23 |
品質が良い | 50 | 46 |
信頼できる、安心できる | 38 | 44 |
先進的である | 25 | 24 |
人や環境にやさしい | 4 | 2 |
センスが良い | 22 | 13 |
わくわくする | 4 | 1 |
高級感がある | 12 | 12 |
キヤノンが2001年より発売しているインクジェットプリンターPIXUS(ピクサス)。ネーミングには「pixel(ピクセル、画素の意)やpicture(ピクチャー、写真の意)と似た音感や、無限を意味する「X(エックス)」の文字、またyour styleとも言い換えられる「US」など」の意味が込められているそうです。
「製品のイメージがわく」は(38%・55%)と企業ブランドが付くことで過半数となっています。「PIXUS」という商品ブランドを単独で提示するよりも、プリンタ・オフィス機器メーカー「キヤノン」という企業ブランドが付くことでより製品をイメージしやすくなる傾向があるようです。またポイント差はそれほど開きませんでしたが「信頼できる、安心できる」は(38%・44%)となっており、こちらも企業ブランド付きの方のポイントが高くなっています。
一方で「センスが良い」は(22%・13%)と商品ブランド単独の方のポイントが高くなっています。
このように見るとインクジェットプリンターは「企業ブランドつき商品ブランド」による販売戦略が有効な分野であるといえるかもしれませんね。
Case5:自動車 プリウス⇔プリウス(トヨタ)
プリウス | プリウス(トヨタ) | |
---|---|---|
製品のイメージがわく | 41 | 49 |
親しみがもてる | 9 | 20 |
好感がもてる | 22 | 35 |
品質が良い | 40 | 43 |
信頼できる、安心できる | 31 | 45 |
先進的である | 50 | 65 |
人や環境にやさしい | 72 | 61 |
センスが良い | 13 | 23 |
わくわくする | 4 | 10 |
高級感がある | 22 | 30 |
1997年に発売を開始した世界初の量産ハイブリッド車、トヨタのプリウスです。2003年にレオナルド・デカプリオをはじめハリウッドスターがアカデミー賞授賞式に乗りつけ一気に知名度を上げました。
「先進的である」(50%・65%)、「信頼できる、安心できる」(31%・45%)、「好感がもてる」(22%・35%)、「高級感がある」(22%・30%)、「センスがよい」(13%・23%)、「親しみがもてる」(9%・20%)と多項目に渡りトヨタという企業ブランドが付くことでポイントが伸びています。トヨタは2008年は新車販売台数が米自動車大手ゼネラル・モーターズを抜いて1位となりました。まさに世界一の自動車会社、その企業ブランドの力は偉大です。
商品ブランド単独「プリウス」のポイントが高かったのは「人や環境にやさしい」(72%・61%)でした。プリウスはいまやエコカーの代名詞。トヨタの「環境」イメージをプリウスが引き上げる関係にあるといったところでしょうか。
現在の納車はなんと8ヶ月待ち。そして先月、2009年6月には販売台数が軽自動車を含めた総合で首位となりました。普通・小型車が軽自動車を抑えて総合首位になったのは1年6か月ぶりのことだそうです。このまま内外ともに景気回復を牽引してくれるといいですね。
今回の結果から信頼や安心を訴求する場合は企業ブランドが大きな力を発揮すると言えそうです。また製品の分野によっては企業ブランドがあることでより製品イメージがわきやすくなるものもありますね。一方親近感については商品の特性によってどちらのパターンにも一定の有効性がありそうです。
花王の「トップ」やトヨタの「プリウス」のように企業ブランドと商品ブランドの間に相乗効果が出るような関係であるのが理想的ですね。
一方、独自のイメージを訴求したい場合であれば商品単独ブランドを前面に出す戦略も有効であると言えそうです。
調査概要
全国の10代〜50代のインターネットユーザーから回答を得た
サンプル数 | 200 |
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調査期間 | 2009年6月30日〜7月1日 |
調査内容 | 5つの企業ブランド有無の商品ブランドについてそれぞれイメージを聞いた。 |
調査対象 | 5つの商品ブランド・商品ブランド(企業ブランド付き)(以下【缶コーヒー】ジョージア・ジョージア(日本コカ・コーラ)/【食品】SOYJOY・SOYJOY(大塚製薬)/【洗濯用洗剤】アタック・アタック(花王)/【インクジェットプリンター】PIXUS・PIXUS(キヤノン)/【自動車】プリウス・プリウス(トヨタ)に対し、10のイメージ項目(製品のイメージがわく/親しみがもてる/好感がもてる/品質が良い/信頼ができる、安心できる/先進的である/人や環境にやさしい/センスが良い/わくわくする/高級感がある)の中から複数回答式で回答を得た。 |