企業が生み出してきた製品や企業そのものの設立の軌跡、また現在に受け継がれる想いを伝える場所として企業ミュージアム(企業博物館)があります。
企業ミュージアムは創業の地や関係の深い地域など各所に展開され、地域社会の文化的な発展にも貢献しています。
カップヌードルミュージアム(日清食品)や鉄道博物館(JR東日本)などはたびたびメディアでも取り上げられており、耳にしたことがある人や行ったことがある人も多いのではないでしょうか。今回は企業ミュージアムについて尋ねてみました。
認知度が高かったのはカップヌードルミュージアム横浜(日清食品)、鉄道博物館(JR東日本)
下記は首都圏にある10の企業ミュージアムの認知状況を尋ねた結果です【図1】。
カップヌードルミュージアム横浜、鉄道博物館の認知度が高く、6割以上が「知っている(詳しく+少し+名前だけ)と答えました。一方でその他の企業ミュージアムについては「知らない」と答えた人が圧倒的に多くなっています。
ミュージアムの概要を知れば行ってみたくなる
では、これらのミュージアムにはどれくらいの人が訪れているのでしょうか。下記は各ミュージアムの概要を公式サイトで確認してもらったうえで、来館経験・来館意向を尋ねた結果です【図2】。
カップヌードルミュージアム横浜、鉄道博物館、NHK放送博物館(NHK)は1~2割の人が「行ったことがある」と回答しました。
また「行ったことはないが行ってみたい」という人はカップヌードルミュージアム横浜やグリコピア・イースト(江崎グリコ)がおよそ4割と高くなっています。その他のミュージアムについても一定の割合が「行ってみたい」と回答していることから、来館を促すには、まずミュージアムの存在や展示の内容を知ってもらうことが重要であると考えられます。
商品・サービスへの興味が来館意向につながる
続いて、各社の企業ミュージアムに行ってみたい理由を見てみましょう。【図3】。
来館経験・意向者が多かったカップヌードルミュージアム横浜や鉄道博物館、グリコピア・イーストは「商品・サービスの展示コーナーが面白そうだから」「体験コーナーが面白そうだから」が高くなりました。興味を持った商品やサービスを見て、自ら作ったり、操作したりと、『体験』を通して楽しめる点が「行ってみたい」という気持ちを高めるのかもしれません。
その他「この企業の商品・サービスの歴史に興味を持ったから」も全体的に数値が高く、特にNHK放送博物館、ニコンミュージアム(ニコン)、印刷博物館(凸版印刷)、鉄道博物館ではおよそ3割が行ってみたい理由として挙げています。
ニコンミュージアムにはこれまで発売してきたカメラ、レンズの展示コーナーや、フィルム一眼レフカメラを操作できるコーナーなどがあり、カメラに興味がある人にとってわくわくするような空間を提供しています。
主な来館目的
続いて来館経験者が多かったカップヌードルミュージアム横浜、鉄道博物館、NHK放送博物館、東芝未来科学館(東芝)について来館した目的を見てみましょう。下図は来館経験者に来館目的を尋ねた結果です【図4】。
いずれのミュージアムも「家族・友人とのレジャー」が高く、特に鉄道博物館、東芝未来科学館では半数を超えています。鉄道や科学に興味をもったお子さんを連れて家族で来館するケースも多いのではないでしょうか。また「学校の宿題・課題のヒントを得るため」という人も一定数いることから、夏休みに自由研究のネタを見つけるため来館する層も多いものと考えられます。商品・サービスや企業について、専門的な知識や最新の動向をわかりやすく、楽しみながら学べる機会はそれほど多くありません。子供のうちにこうした機会を得ることでその後の職業観や産業に対する考え方も変わっていくかもしれません。
また鉄道博物館は「個人的興味」と答えた人もおよそ3割となりました。「乗り鉄」「撮り鉄」「鉄オタ」「鉄子」などの総称が一般化するほどいつの時代も鉄道を愛してやまないファンがいます。鉄道は車両のモデルチェンジも頻繁に行われており新旧車両の物語など話題も豊富。列車のフォルムの美しさと迫力に魅了される大人も多いことでしょう。鉄道博物館は、そんな彼らの期待に応える施設になっているのではないでしょうか。
来館者の感想
次に企業ミュージアムに対する来館者の感想を見てみましょう。【図5】。
鉄道博物館は、半数を超える人が「わくわくするような体験ができた」と答えており、さらにおよそ4割が「新たな知識が得られた」と回答しています。鉄道博物館には40を超える実物車両の展示や、自分で列車を運転できる「ミニ運転列車」、鉄道車両の運転体験ができるシミューレータなど、鉄道の迫力を体感できる数々のコーナーがあり、鉄道ファンならずとも楽しめる施設となっています。
他のミュージアムの感想も見てみましょう。
カップヌードルミュージアム横浜は「子どもたちひとりひとりの中にある創造力や探究心の芽を吹かせ、豊かに育てるための体験型ミュージアム。」とうたっているように、オリジナル「カップヌードル」を作ることができる「マイカップヌードルファクトリー」や、インスタントラーメンの歴史を圧倒的な数量のパッケージによって表現した「インスタントラーメン ヒストリーキューブ」、創業者安藤百福の言葉や思考、行動の本質を現代アートの斬新なスタイルで表現した「クリエイティブシンキングボックス」など、五感で楽しめる施設となっています。「わくわくするような体験ができた」とともに「このミュージアムにまた訪れたいと思った」人も多くなりました。さらに「この企業の商品・サービスや技術に興味が持てた」も3割を超え、楽しい体験が企業や商品への興味にもつながっていることがうかがえます。
東芝未来科学館は東芝グループの歴史や技術を身近に学び、体験できる施設です。様々な科学実験を実演するサイエンスショーや、実験を体験できる科学実験工房など実際に見たり触ったりしながら科学と触れ合うことができます。半数近い人が「わくわくするような体験ができた」と答えたほか、「新たな知識が得られた」「企業への関心が高まった」「この企業への理解が深まった」「このミュージアムにまた訪れたいと思った」などの支持も高くなりました。
最後に今回尋ねたミュージアムに関わらず過去に訪れたことのある企業ミュージアムで印象に残った体験を自由回答にて尋ねた結果をご紹介します。
カップヌードルミュージアムに関する回答が多くありました。オリジナルカップヌードルを作る体験に関して印象に残っている人が多いようです。
鉄道博物館に関するものや東芝未来科学館に関するコメントも見られました。
今回取り上げた他のミュージアム、さらに今回の対象以外で印象に残っているミュージアムについての感想もいただいています。
その他、企業ミュージアムへの全般的な感想として、限定グッズやお土産が良かったという声も聞かれました。また展示や体験イベントを通して「楽しく企業のことを知ることができた」といった意見も見られ、企業や業界の理解を深めることにも役立っていることがうかがえます。
企業ミュージアムは最先端の技術や産業の歴史、普段なかなか見ることができないコレクションなど企業が持つ様々な資産に触れることができる絶好の場です。一般消費者がその存在を知る機会は多くはないかもしれませんが、存在を知れば行ってみたいと思う人も少なくないのではないでしょうか。また来館による企業に対する理解や好感度醸成の効果も小さくないものと考えられます。
企業側も公式サイトやSNS、あるいは広告などを通じて積極的に認知を促し、来館してもらうことで次世代を担う子供たちをはじめ一般消費者の学びにつながり、企業とのエンゲージメント強化に、延いてはよりよい社会の実現にもつながっていくのではないでしょうか。
調査概要
一都三県(東京、千葉、埼玉、神奈川)在住の20~50代男女(各115名)のインターネットユーザーから回答を得た。
サンプル数 | 330 |
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調査期間 | 2022年6月10日~6月11日 |
調査方法・内容 | 内容:1.カップヌードルミュージアム 横浜(日清食品)/グリコピア・イースト(江崎グリコ)埼玉県北本市/Daiichi Sankyoくすりミュージアム(第一三共)東京都中央区/東芝未来科学館(東芝)川崎市/ニコンミュージアム(ニコン)東京都港区/印刷博物館(凸版印刷)東京都文京区/がすてなーに ガスの科学館(東京ガス)東京都江東区/鉄道博物館(JR東日本)さいたま市/NHK放送博物館(NHK)東京都港区/アドミュージアム東京(電通)東京都港区の認知について(展示・イベントの内容を詳しく知っている/展示・イベントの内容を少し知っている/名前だけ知っている/知らない)よりそれぞれ単一回答、2.カップヌードルミュージアム 横浜/グリコピア・イースト/Daiichi Sankyoくすりミュージアム/東芝未来科学館/ニコンミュージアム/印刷博物館/がすてなーに ガスの科学館/鉄道博物館/NHK放送博物館/アドミュージアム東京の来館経験および非来館経験者の来館意向について(行ったことがある/行ったことはないが行ってみたい/行ったことはなく特に行ってみたいとも思わない)よりそれぞれ単一回答、3. カップヌードルミュージアム 横浜/グリコピア・イースト/Daiichi Sankyoくすりミュージアム/東芝未来科学館/ニコンミュージアム/印刷博物館/がすてなーに ガスの科学館/鉄道博物館/NHK放送博物館/アドミュージアム東京に行った/行きたいと思った理由について(この企業の創業物語に興味を持ったから/この企業の商品・サービスの歴史に興味を持ったから/ご自身の仕事に役立つ情報が得られそうだと思ったから/商品・サービスの展示コーナーが面白そうだから/体験コーナーが面白そうだから/特設ショップのオリジナルグッズに興味を持ったから/この企業が好きだから/この企業の商品・サービスが好きだから/その他/特に理由はない)よりそれぞれ複数回答、4. カップヌードルミュージアム 横浜/グリコピア・イースト/Daiichi Sankyoくすりミュージアム/東芝未来科学館/ニコンミュージアム/印刷博物館/がすてなーに ガスの科学館/鉄道博物館/NHK放送博物館/アドミュージアム東京の来館経験者の来館目的について(企業や業界について情報収集するため/ビジネス上の打合せ・研修・セミナー等に参加するため/学校の宿題・課題のヒントを得るため/学校や子供会の遠足・課外活動/家族・友人とのレジャー/個人的興味/その他)よりそれぞれ複数回答にて、5. カップヌードルミュージアム 横浜/グリコピア・イースト/Daiichi Sankyoくすりミュージアム/東芝未来科学館/ニコンミュージアム/印刷博物館/がすてなーに ガスの科学館/鉄道博物館/NHK放送博物館/アドミュージアム東京の来館経験者の来館した際の感想について(わくわくするような体験ができた/新たな知識が得られた/この企業の商品・サービスや技術に興味が持てた/企業への関心が深まった/企業への理解が深まった/企業への好感が高まった/企業への信頼が深まった/このミュージアムにまた訪れたいと思った/このミュージアムを誰かに奨めたいと思った/当てはまるものはない)よりそれぞれ複数回答、6. 今回取り上げた企業ミュージアムに関わらず、過去に訪れたことのある企業ミュージアムで印象に残った体験について自由回答にて回答を得た。 |