日本で新型コロナウイルス問題が顕在化したのは2020年2月頃。まもなく丸1年が経とうとしています。現在、とりわけ都市部での感染拡大は深刻さを増しています。2021年1月8日より東京・神奈川など1都3県に、14日からは大阪・兵庫や福岡など新たに7府県が追加され、合わせて11都府県に再び国からの緊急事態宣言が発出されており、都府県からは飲食店を始めとした営業時間短縮要請や外出自粛等の強い要請がなされています(1月19日現在)。
コロナ問題発生後、感染拡大防止対策の一環として政府より掲げられた「ステイホーム」の推奨・要請は人々のライフスタイルに大きな変化をもたらしました。働き方、暮らし方、余暇の過ごし方など様々な生活の様式において、誰もが多かれ少なかれ変化を感じた1年だったのではないでしょうか。
第90回となるなんでもランキングでは、日々の生活の中で欠かすことができない「食事事情」にスポットを当て、コロナ前後でのスタイルの変化を尋ねてみました。なお今回調査では、国内でも感染者数が多く、コロナによる生活への影響が甚大な東京都にお住まいの方を抽出し、調査対象としています。
コロナ問題発生前後の食事に関する変化
下記の【図1】は様々な食事のスタイルについてコロナ問題発生前と比べた頻度の変化を尋ねたものです。(「わからない」と回答した人はベースから除く)
「飲酒を伴う外食」、「飲酒を伴わない外食」は6割前後の人が「減った」と回答しています。また4割近くが「別居の家族と食事をする頻度」が「減った」と答えました。なお「外食」や「別居の家族との食事」が「増えた」という人はほとんどいませんでした。
一方で「家庭で料理・自炊する頻度」は4割が、「同居の家族と食事をする頻度」は3割が「増えた」と回答しています。
世帯構成・職業による傾向
世帯構成や職業によって食事スタイルの変化に違いがあるのでしょうか。下記の【表1】は全体的に利用頻度が下がった「外食」や「別居の家族との食事」についてコロナ前より「減った」と回答した人の割合を世帯構成・職業別に示したものです。
「飲酒を伴わない外食」は主に就業者で「減った」という人が多く見られました。新型コロナ問題発生前までオフィス街でランチをしていたオフィスワーカーが、在宅ワークや感染拡大防止の観点より外食以外の手段にシフトしたことなどが要因として考えられます。また「飲酒を伴う外食」は子供のあるなしを問わず「夫(就業者)」において「減った」という人が多くなっています。接待、付き合いと会食の機会が多いサラリーマンですが、コロナ後はその機会が大きく減少していることがわかります。
続いて「外食」以外の食事スタイルについてコロナ前よりも「増えた」と回答した人の割合を属性別に見てみましょう。【表2】
全体的に「夫婦のみ世帯」、特に就業者において数値が高く、コロナ問題発生前後での食事スタイルの変化の大きさがうかがえる結果となりました。
「夫婦のみ世帯」で夫婦どちらか一方でもオフィスに通勤するようなケースでは平日の昼食は必然的に別々となります。また、共働きの場合は夕食もそれぞれに、というパターンも少なくないものと考えられます。コロナ問題発生を機に多くの企業で在宅ワークへの切り替えが加速しました。これにより揃って食卓を囲む機会が増えた夫婦も多いでしょう。平日からパートナーとともに3食を過ごす体験をドラスティックな変化として受け止める人が多かったのかもしれません。就業者では妻、夫ともに「同居の家族と食事をする頻度が増えた」と回答した人の割合が非常に高くなっています。
また子供のあるなしを問わず「専業主婦(主夫)」は「家庭で料理・自炊する頻度が増えた」という人が多くなっています。これまでオフィスや学校で別々に食事を取っていた家族が在宅ワークやオンライン授業により自宅で食事をするようになったことは、家庭の切り盛りをメインで担う専業主婦(主夫)にとってインパクトの大きい出来事だったのではないでしょうか。
フードデリバリーサービスの利用状況
ここでコロナ問題発生後何かと話題に上ったフードデリバリーサービスについて利用状況を見てみましょう。【図2】
最も利用経験者の割合が高いのは「出前館」でした。次いで「Uber Eats」が僅差で続いておりいずれも3割弱の人が「利用したことがある」と回答しています。
続いて各サービス利用経験者のコロナ前後での利用状況の変化を見てみましょう。【図3】
「新型コロナ問題発生前より利用頻度が増えた」「新型コロナ問題発生後利用するようになった」ともに「Uber Eats」が最も高い数値となりました。特に「コロナ問題発生後利用するようになった」割合は他サービスに比べ抜きん出ています。「Uber Eats」は注文も支払いもスマホで簡単にできるといった利便性の高さに加え、チェーン店から地元のレストランまで多くの店舗が加盟登録しているため、豊富な選択肢の中から好きなお店や気になるお店を選びその味を自宅で気軽に楽しめるということで利用する人が増えたようです。
家庭での料理・自炊における変化
最後に最も「増えた」と回答した人が多かった「家庭での料理・自炊」について、どのような変化があったか尋ねてみました。【図4】(「当てはまるものはない」と回答した人はベースから除く)および属性別に見る割合【表3】
世帯構成・職業別に見ると、全体的に「夫婦のみ世帯・妻(就業者)」の数値が高く、特に「家庭での料理・自炊の楽しみが増えた」と答えた人が他属性を大きく上回る結果となりました。
さらに「夫婦のみ世帯(就業者)」は妻、夫ともに「凝ったメニュー・作ったことのないメニューを作ることが増えた」「調味料の購入が増えた」が高い数値となっており、外食の機会が減り、おうち時間が増える中、自宅での料理に新たな楽しみを見出していることがうかがえます。
また「扶養対象の子あり世帯・妻(就業者)」は「今まで利用したことがない調理器具を購入した」「テーブルコーディネートにこだわるようになった」が他属性より高くなっています。子あり世帯で働くお母さんはコロナ問題以前から子どもや夫のため習慣的に料理をしていた人が多いものと考えられます。そのため「料理」そのものへの新鮮味は薄く、むしろ新しい調理器具やテーブルコーディネートなどキッチンに+αの彩りを加えたいと考えた人が多かったのかもしれません。
2021年1月現在、コロナ問題は予断を許さない状況となっています。緊急事態宣言下にある現在は飲食店への時短営業が要請され、応じない店舗については店名が公表されるなど今までにない厳しい措置が取られます。市民に対しても不要不急の外出自粛が要請され、また事業者にもテレワークの徹底が求められるため、必然的に自宅ですごす時間が増えている人が多いのではないでしょうか。行動が制限され、様々な楽しみが失われている現状にもううんざりという人もいるかもしれません。
ただ、このような中でも私たちは折れることなく日常生活を継続していかなくてはなりません。そして、毎日欠かすことなく訪れる「食事の時間」はそのための活力となるものです。
このような時だからこそ、食事の習慣や家族団らんのあり方に目を向け、自炊に挑戦してみたり、親子でキッチンに立ってみたり、パートナーと一緒に近所の気になるお店を見つけランチをテイクアウトやデリバリーしてみたり、「おうちごはん」ならではの楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。
調査概要
東京都の20~60代・男女(各40名)有職者/専業主婦(主夫)のインターネットユーザーから回答を得た。
サンプル数 | 400 |
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調査期間 | 2020年12月11日~12月12日 |
調査方法・内容 | 1.新型コロナ問題発生後、発生前と比較した食事の変化に関して(【飲酒を伴わない外食/飲酒を伴う外食/飲食店のテイクアウトサービスの利用/飲食店のデリバリーサービスの利用/コンビニ・スーパーのお弁当・軽食・惣菜等の利用/ご家庭で料理・自炊する頻度/同居の家族と食事をする頻度(一人暮らしの方は「わからない」を選択)/別居の家族と食事をする頻度】について【増えた/減った/変わらない/わからない】より)それぞれ単一回答、2.新型コロナ問題発生後、発生前と比較したデリバリーサービス利用状況に関して(【menu/Uber Eats/出前館/dデリバリー/楽天デリバリー/fine Dine/マクドナルド/ドミノ・ピザ/銀のさら・釜寅・すし上等!/ケンタッキーフライドチキン】のサービスについて【新型コロナ問題発生前から利用しており、利用頻度が増えた/発生前は利用していなかったが、利用するようになった/新型コロナ問題発生前から利用しており、利用頻度は変わらない/新型コロナ問題発生前から利用していたが、利用頻度は減った/利用したことがない/わからない】より)それぞれ単一回答、3. 新型コロナ問題発生後、発生前と比較したご家庭での料理(食事・お菓子作りを含む)の変化に関して(ご家庭での料理・自炊にかける時間・手間が増えた/家族と一緒に料理する機会が増えた/レシピ動画やレシピサイトを見ることが増えた/調味料の購入が増えた/日常で利用する食材・食料品・飲料等についてネットで購入することが増えた/凝ったメニュー・作ったことのないメニューを作ることが増えた/特別な食材・食料品のお取り寄せをすることが増えた/今まで利用したことがない調理器具を購入した/今まで利用したことがない調理家電を購入した/食事に合わせて食器を選ぶなどテーブルコーディネートにこだわるようになった/ご家庭での料理・自炊の楽しみが増えた/栄養やカロリー、素材の安全性など体への影響を気にするようになった/当てはまるものはない より)複数回答、4.新型コロナ問題発生後、発生前と比較した1か月にかかる「食費」に関して(増えた/減った/変わらない/わからない より)単一回答、5.家族形態・職業について(一人暮らし・有職/親世帯で同居・有職/夫婦のみ世帯・有職/夫婦のみ世帯・専業主婦(主夫)/扶養対象の子供あり世帯・有職/扶養対象の子供あり世帯・専業主婦(主夫)/その他 より)単一回答にて回答を得た。 |