テレビ番組のスポンサーの中には一社単独で提供するものや複数社提供であっても特定の一社が大きな割合で提供しているものがあります。スポンサー企業は番組名に社名の冠をつけたり、番組の合間には自社のCMを大量に流したりすることができます。また番組の中で商品やキャラクターを映したり、出演者がその企業の商品についてさりげなく口にしたりすることもあります。では実際に視聴者はどのように番組スポンサーを認識しているのでしょうか。今回は番組のメインスポンサーについて聞いてみました。
「いただきました。☆3つです。」でお馴染の「チューボーですよ!」
まずは「いただきました。☆3つです。」でお馴染の巨匠こと堺正章さんとの女性アナウンサーが進行する料理番組。今年で19年目を迎える息の長い番組です。毎回VTRで3人の街の巨匠(シェフ)が紹介されそれぞれ同じ料理を作り、それを元に番組内で進行の2人とゲストが一緒に料理を作るというものです。中で繰り広げられる堺さんの軽快なトークとコントでテンポよく番組が進みます。毎回、ゲストが堺さんの料理を星の数で評価し番組はエンディングを迎えます。この番組ではお世辞で料理を褒めたりせず、ゲストが自分の感覚に正直に星の数をつけて採点するのがユニークですね。また最初にビールと今日の料理が登場します。こんなアットホームな雰囲気も土曜の夜に合っているのかもしれませんね。
さて、そのビールのメーカー、サントリーがこの番組のスポンサーです。調査結果ではやはりサントリーが27%と1位でした。もっとも、キリンと回答した人が9%とビールは出てくるけれどどこだっただろうか、と思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし料理をおいしくする飲み物をさりげなく演出する洗練されたプロモーションともいえそうです。「分からない/すぐに思い出せない」方が55%と多いのは番組タイトルに企業名が入っていないことも関係しているかもしれません。
正式名は「日立 世界ふしぎ発見!」
続いては「世界ふしぎ発見!」です。正式には「日立 世界ふしぎ発見!」と「日立」の冠がつく歴史、文化を深く探るクイズ番組です。バラエティ番組やドラマが話題となることが多い中、教養番組でありながら放送開始以来27年を迎える現在でも常に安定した視聴率をたたき出しています。番組出題数は4400を超え、これまで行った国と地域は160を超えるそうです。
司会のスーパークイズマスターこと草野仁さん、アシスタントの女性アナウンサー、そして黒柳徹子さん、板東英二さん、野々村真さんといったレギュラー回答者など穏やかで安定感を感じさせながらも視聴者を飽きさせないそれぞれのキャラクターが番組長寿に大きく貢献をしているのでしょう。ミステリーハンターと呼ばれるリポーターの体当たりのリポートと出題は毎回臨場感にあふれ、ついつい引き込まれてしまいます。メインスポンサーは「日立」と答えた方が55%に上りました。ライバルメーカーと誤認する人が非常に少ないのもこの番組の大きな特徴です。
この番組枠、「この木なんの木」で有名な「日立の樹」のCMの現在の映像はハワイ州オアフ島のモアナルア・ガーデンパーク内にある樹齢130年のモンキーポッドの樹です。「日立グループの総合力と成長性、事業の幅広さ、力強さを、『大地に根を伸ばし、大きな枝を広げ、色とりどりの花を咲かせて実を結ぶ』1本の大樹にたとえた」とのこと。この樹をバックにグループ会社が名を連ねますが、グループ会社の数は多く60秒のCMでは流しきれずに現在では6パターンもあるそうです。成長性、力強さ、事業の幅広さを表現するにはぴったりのシンボルですね。
日曜22時の「おしゃれ…」は資生堂の一社提供
次いで日曜22時から放送のトーク番組、「おしゃれイズム」です。この枠では「オシャレ30・30」、「おしゃれカンケイ」から続いて資生堂の一社提供となっています。上田晋也さん(くりぃーむしちゅー)、藤木直人さん、森泉さんとキャラクターの違った3名をパーソナリティに多彩なゲストをうまくリードし、日曜の夜にふさわしい小気味良い番組となっています。
途中のCMは90秒、60秒とかけて「化粧の力」編で蒼井優さんが、「ビューティーオールスターズ」編で水原希子さん、岸恵子さんを始め一般の人々が化粧をすることで綺麗になるだけではなく明るくはつらつとした表情になっていく様子が描かれており、まさに化粧の力を感じるものになっています。15秒や30秒で流れる女優やモデルだけを起用した格好良いCMとは一味違い、単なる商品ではなく人々の経験としての「化粧」に焦点を当てた企業のメッセージが伝わる気がしますね。
このような「おしゃれイズム」のスポンサーですが、第1位はやはり「資生堂」で40%でした。ただ「おしゃれ…」から化粧品メーカーとだけ察したのでしょうか、「花王」と答える方も9%いました。「分からない/すぐに思い出せない」方も46%と多いのは番組名に企業名の冠がついていないことのほか、回答者のほぼ半数が男性だったことが関係しているかもしれません。
番組内でキャラクターを起用の「ごきげんよう」
平日のお昼の番組「ライオンのごきげんよう」です。1991年から開始の21年を超えたトークバラエティ番組です。こちらも実際にはタイトルに冠がつきますね。毎回3組のゲストが順番に大きなサイコロを振って目に書かれたテーマに沿ったトークを展開。司会の小堺一機さんがうまくまとめます。トークをするゲストの席が決まっており、次のゲストのトークに移るときに席を移動するのがユニークですね。
「ライオンちゃん」というライオンキャラクターの着ぐるみが登場し、サイコロ「今日の当たり目」の目が出るとライオンの製品をゲストや観客、視聴者にプレゼントするなどCMだけでなく番組内のところどころにスポンサー色が出ています。
時間帯を考えると視聴者には主婦の方が多いと思われます。洗剤や歯磨き剤といったCMも流れ、認知度は高いはずですね。55%の方が「ライオン」と答えています。一方で回答が割れるとまではいきませんが「花王」と答えた方も23%と多く、「分からない/すぐに思い出せない」が少ないのも特徴的です。トイレタリー企業だとは知っているけれどもいざとなると社名が出てこないという方も多いのかもしれません。お昼時、家庭にいてテレビをつけているとは言っても家事をしながらなどしっかりとテレビに集中できる環境ではないのかもしれませんね。CMで商品を認知してもらえれば宣伝としては十分なのかもしれませんがせっかくの冠スポンサーですので社名まではっきりと認知されるにこしたことはないかもしれません。
日曜日の朝のギネス認定クラシック番組
最後に1964年から50年近くにわたって出光興産によって一社提供で放送されている「題名のない音楽会」です。本格的なクラシック音楽から、多彩なゲストによる演奏、ジャンルを越えたコラボレーションなど毎回趣向を凝らした内容を司会の指揮者・佐渡裕さんと女性アナウンサーの軽妙なトークで盛り上げます。また公開収録が行なわれており、多くの人に直接音楽と触れ合う機会を提供してきました。2009年には「世界一長寿のクラシック音楽番組」としてギネス認定されています。
これまで放送局そのものが変わったり、放送局名が変わったりと状況が変遷する中でも日本の音楽文化発展に貢献したいという企業の思いから変わらず提供され続けています。また出光興産では「題名のない音楽会」の25周年を記念し、1990年に「出光音楽賞」が制定され日本の若い音楽家の活動を支援しています。現在の司会者佐渡裕さんも以前、受賞されているのですね。
「出光興産」と答えた人は28%と3割近くの方が正解しています。「分からない/すぐに思い出せない」と答えた方が他の番組より多いのは日曜日の午前9時というテレビの視聴自体が高くはない時間帯であることが大きく関係していると思われますが「音楽文化」を意識する人々にはある程度認知されていると言ってもよいのではないでしょうか。
テレビCMの多くが15秒、30秒の現在、一社提供となると「おしゃれイズム」の資生堂のように60秒やそれ以上のCMでよりメッセージ性の強いCMを流し、「世界ふしぎ発見!」の「日立の樹」のように他社CMを気にすることなく延々と伝えたいことを伝えることができます。番組内容によっては「ライオンのごきげんよう」のように番組内にキャラクターや商品を持ち込むこともできますし、「題名のない音楽界」のように企業の思いを込めた番組作りも可能になりますね。番組内容と企業イメージが合致し、効率よくプロモーションが行なえれば視聴者により良い企業イメージで認知されるでしょう。視聴者としては今後も息の長い優良な番組を企業に提供し続けてほしいですね。
調査概要
全国20歳以上男女のインターネットユーザーから回答を得た
サンプル数 | 100 |
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調査期間 | 2012年4月4日~4月5日 |
調査方法・内容 | テレビ番組(「チューボーですよ!」TBS土曜23:30/「世界ふしぎ発見!」TBS土曜21:00/「おしゃれイズム」日本テレビ日曜22:00/「ごきげんよう」フジテレビ毎週月曜~金曜13:00/「題名のない音楽会」テレビ朝日日曜9:00)のメインスポンサー(一社提供、複数社提供の筆頭スポンサーを含む)を選択肢(出光興産・花王・キリン・コスモ石油・サントリー・資生堂・東芝・日立・ライオン・分からない/すぐに思い出せない)の中から選んでもらい1つ回答を得た。
※何も見たり調べたりせず回答してもらうよう依頼。 |