従来の広報のターゲットとは対象者が異なる
伝統的な企業広報のターゲットはマスコミ関係者であり、中でも新聞が重視されてきた。
第1回で見たように、新聞は、部数こそ減少を続けているものの、一般消費者の意識の上で依然として信頼のメディアとしての地位を保っている。しかも、企業経営者が接触するメディアにはかなり偏りがある(日本経済新聞しか読まない方が多い)。経営者の覚えをめでたくしたいなら、広告、記事とも日経で露出するようにした方がよいという考え方は十分理解できる。
しかし、企業情報サイトの閲覧者に報道関係者はほとんどいない(グラフ参照)。報道者のほか、アナリスト、研究者を加えてわずか1%である。しかもこのような方々に対する発表の場は記者会見などウェブサイト以外にしっかり用意されていることが多い。企業情報サイトでメインターゲットにすべき人たちはもっと他にいる。
特定のターゲット層に絞るのは難しい
企業情報サイトユーザーのステークホルダー属性として最も多いのはその企業の顧客である。しかし、最も多いBtoC顧客であっても、その割合は50%を少し上回る程度である。
当企業への投資に興味がある人も30%近くと比較的多い。実は、投資経験者の割合はもっと高く、70%近くもいるのだが、特定企業への投資に興味がある人となるとその半分以下となる。
他にも周辺住民の方が10%近くと、決して無視できない割合で存在する。
企業情報サイトのターゲットについては、顧客にすべき、いや投資家にすべき、といった議論が繰り返されることがあるが、このようなユーザープロファイルが分散している状況を見ると、特定のステークホルダーに絞ることは非常に難しいことがわかる。結果的に、業界や環境問題その他特定の分野について非常に深い知識を持つ人もいるが、どちらかといえばそうでない人が多数含まれる状況が想定される。コンテンツ制作にあたってはこの点を十分認識して行うことが重要である。
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