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第32回:冷蔵庫の機能名称

各社技術を競い、日々進化している家電。製品そのものだけでなく、それぞれの機能にまでネーミングが施されている製品は他にあまりないのではないでしょうか。今回はそんな家電の中で冷蔵庫にフォーカスしてみたいと思います。

冷蔵庫を選ぶのに、今のご時世省エネ性能は当然のこと。しかしもちろんそれだけでは冷蔵庫は決められません。メーカー側も機能に様々な名称をつけてその特長をアピールしています。それでは消費者が魅力的だと感じるネーミングとはどんなものなのでしょうか。今回は冷蔵庫の5つの機能(冷蔵室(冷蔵機能)・冷凍室(冷凍機能)・製氷室(製氷機能)・野菜室(野菜のための機能)・抗菌・脱臭機能)のネーミンングを任意に選び企業名を伏せた形で30代以上の女性に聞いてみました。

冷蔵室(冷蔵機能)

名称   企業名
ミスト冷却 46 (シャープ)
まるごと鮮蔵室 41 (東芝)
じざい棚 39 (三洋)
真空チルド(ビタミンカセット付) 39 (日立)
入るん棚冷蔵室 30 (Panasonic)
前から冷やそ 18 (三菱)

冷蔵室はどの企業も「大容量」が売りですね。そしてもう1点の売りが食品の鮮度保持です。今回の調査では「ミスト冷却(シャープ)」(46%)が高ポイントを獲得しトップとなりました。食品に風を当てずにパネルで冷やすことで食品の水分をキープする仕組みとのことです。サラダにラップをして冷蔵庫に入れておくと水滴が付くのは風を当てることで野菜の水分が蒸発するからなのですね。水分、ビタミンCを保持し、お肉の脂の酸化も抑制するそうです。「ミスト」という表現がラップをしなくても食品をふんわり包んでくれる印象を与えますね。2位となったのが「まるごと鮮蔵室(東芝)」(41%)です。野菜のための機能として後出の「i-ツイン冷却」により冷蔵室の温度変化を抑え、また冷気を直接食材に当てないことで鮮度を長持ちさせるとのこと。「まるごと」と「鮮」の字が安定した冷蔵機能を想像させます。

3位となったのは「じざい棚(三洋)」、「真空チルド(ビタミンカセット付)(日立)」(ともに39%)です。「じざい棚」はスライドさせることによって背の高いものが冷やせる棚の機能です。スライド幅により前後半々にするなど調節できるのも魅力です。「じざいだな〜」としゃれとも受け取れるネーミング。4文字で機能がうまく表現されているのではないでしょうか。同じく「真空チルド(ビタミンカセット付)(日立)」は独自の技術で真空状態・低酸素化し、真空状態にして抗参加ビタミンを放出しDHA、ビタミンC、アミノ酸などの残存量をアップさせるそうです。以下5位「入るん棚冷蔵室(Panasonic)」(30%)、6位「前から冷やそ(三菱)」(18%)と続きます。

冷蔵室の機能は各社が独自技術を開発しそれぞれ看板機能としてうたっています。冷蔵室は最もよく使う機能なだけに「庫内全体」に対しての効果をイメージさせるようなネーミングが消費者の印象も良いようですね。

冷凍室(冷凍機能)

名称   企業名
クイック冷凍 49 (三洋)
熱いまま”急っと”瞬冷凍 48 (三菱)
新鮮凍結プレート 45 (Panasonic)
約-40℃冷気おいそぎ冷凍 42 (シャープ)
熱もの冷凍 34 (東芝)
デリシャス急冷凍 34 (日立)

次は冷蔵機能と並ぶ二大機能、冷凍機能です。冷凍餃子問題、景気低迷での外食控えなど、最近は多少手間をかけてでも家で食事をするという消費者が増えているそうです。この「家食回帰」の時代、冷凍機能も重視するポイントですね。

最も高い評価を得たのは「クイック冷凍(三洋)」(49%)です。約-30℃の冷気が従来の約5倍の速さで冷凍してくれるそうです。2位は僅差で「熱いまま”急っと”瞬冷凍(三菱)」(48%)です。こちらも瞬時に芯から均一に冷凍することでジャガイモや筍、ヨーグルトなど従来冷凍に向かなかったものも冷凍できるとのこと。料理した食品を冷ます間に失う栄養分や劣化、味落ちを防いでくれるのは嬉しい機能です。上位2つのネーミングはそれぞれ「クイック」「瞬」から文字通り一気に冷やす機能が読み取れますが、共通する「カ行と促音」という音からも急速に冷凍するイメージが伝わります。3位の「新鮮凍結プレート(Panasonic)」(45%)、4位の「約-40℃冷気おいそぎ冷凍(シャープ)」(42%)、以下「熱もの冷凍(東芝)」「デリシャス急冷凍(日立)」(ともに34%)と続きますが、いずれも急冷凍することで食品のうまみや栄養分保持をうたっています。冷凍した精肉の解凍時にドリップが少ないことも全社が説明している機能でCMや店頭での写真などでもよく目にしますね。「急速冷凍」と「その効果」をどれだけ端的に伝えられるか、そこがネーミングの鍵になるようです。

製氷室

名称   企業名
はずして洗える製氷皿・給水パイプ 52 (日立)
Ag抗菌製氷皿 50 (東芝)
Ag+イオン加工 41 (シャープ)
はずして洗える製氷皿 36 (Panasonic)
はずして洗お 32 (三洋)
透明光清氷 28 (三菱)

続いては、製氷室です。自宅でおいしくきれいな氷が作れる、従来は白く濁ってしまっていたミネラルウォーターでも透明な氷ができる。時代とともに製氷室も進化していますね。透明な氷を作るためには雑菌の繁殖を抑えることが必要だそうです。そのためにも製氷皿や給水経路のパーツを洗うことができるのは重要ですね。

1位は「はずして洗える製氷皿・給水パイプ(日立)」(52%)で、半数を超える高ポイントを獲得しました。製氷皿は洗えるのが当たり前、給水パーツも洗えるものが多いのですが、そこまでネーミングで読み取れるかどうかが結果につながっているようです。続いて2位は「Ag抗菌製氷皿(東芝)」(50%)、3位は「Ag+イオン加工(シャープ)」(41%)となっています。Ag+(銀イオン)は微生物に対しても高い抗菌効果をもち、水を浄化させる働きがあるのだそうです。口に直接入れる氷だからこそ、より「洗える」プラスαを求める消費者の支持を得ているのでしょう。 以下、4位「はずして洗える製氷皿(Panasonic)」(36%)、5位「はずして洗お(三洋)」(32%)、6位「透明光清氷(三菱)」(28%)と続きます。6位の「透明光清氷(三菱)」は光触媒の作用により雑菌やカルキを分解しミネラルウォーターでもおいしい氷が作れるそうです。また抗菌製氷皿や、製氷皿おそうじモードでの自動洗浄など他にはない機能も含まれているのですが、ネーミングからはその豊富な機能が今一つ伝わりきらなかったようです。

野菜室(野菜のための機能)

名称   企業名
ビタミン増量野菜室 53 (三菱)
スライドケース 43 (三洋)
ナノテクミスト野菜室 42 (日立)
間接冷却(調湿機能付) 31 (シャープ)
ナノイー野菜室 31 (Panasonic)
i-ツイン冷却 9 (東芝)

共働きの家庭でも外食が減り、これまで以上に週末の食材まとめ買いをする機会が増えているといいます。また、食の安全が見直されるとともに無農薬や有機栽培など野菜にこだわり宅配で1週間分の野菜を購入する消費者も増えています。従来、ものによっては2〜3日でくたびれてしまっていた野菜の鮮度を少しでももたせたいという思いは皆共通ですね。野菜のための機能では「ビタミン増量野菜室(三菱)」(53%)がトップとなりました。LED(発光ダイオード)の光が野菜の還元糖の生成を促しビタミンCを増量。クロロフィルも生成させ緑の野菜もいきいきと保存されるそうです。「ビタミン増量」という食品の劣化を防ぐにとどまらない嬉しいプラス機能がうまくネーミングされています。 続いて2位は「スライドケース(三洋)」(43%)。段差を利用して大きさの違う野菜をうまく収納できる機能ですが、この明解なネーミングはわかり易く、消費者に一定の支持を得たようです。 3位は「ナノテクミスト野菜室(日立)」(42%)。ナノサイズの水分子を吸放湿しケース内の湿度を最適に調整してくれ、ラップなしでも保存できるようです。この機能、ネーミングからもなんとなく想像できますね。以下、「間接冷却(調湿機能付)(シャープ)」、「ナノイー野菜室(Panasonic)」(ともに4位で31%)と続きます。

6位は「i-ツイン冷却(東芝)」(9%)となっています。こちらは冷蔵・冷凍に適した2つの冷却器で効率よく冷やす「i-ツイン冷却」によって野菜室という専用スペースを設けなくても、冷蔵室で野菜に適した温度・湿度を実現してくれるという画期的な機能です。ただ「i-ツイン冷却」というネーミング単体からはそこまでの理解は難しかったようです。

抗菌・脱臭機能

名称   企業名
除菌イオンシャワー 66 (シャープ)
Agバイオ抗菌脱臭 49 (Panasonic)
脱臭フィルター 41 (三菱)
ナノテク除菌・脱臭フィルター+アレルオフフィルター 40 (日立)
ナノフェライト除菌 22 (三洋)
プラチナプラスユニット 14 (東芝)

最後は抗菌・脱臭機能です。暑いこの時期は特に気になりますね。1位は「除菌イオンシャワー(シャープ)」です。プラズマ放電により発生させたイオンを放出して除菌する「プラズマクラスター」技術で庫内の付着菌も抑制するそうです。イオンシャワーで庫内全体に除菌作用が行き渡るイメージが湧くからでしょうか、66%と実に高いポイントを獲得しています。2位は「Agバイオ抗菌脱臭(Panasonic)」(49%)です。Agと窒素系バイオ脱臭触媒で魚の匂いを、硫黄系バイオ脱臭触媒で野菜の匂いを分解してくれる機能です。
以下、3位「脱臭フィルター(三菱)」(41%)、4位「ナノテク除菌・脱臭フィルター+アレルオフフィルター(日立)」(40%)、5位「ナノフェライト除菌(三洋)」(22%)、6位「プラチナプラスユニット(東芝)」(14%)と続きます。抗菌・脱臭機能に関しては聞きなれない新しい技術より耳に馴染みのあるわかり易いネーミングの方が評価される結果となりました。

以上、冷蔵庫の5つの機能名称について見てきました。5つの機能に対するネーミングの魅力度のポイントを合計してみるとトップはシャープで226Ptでした。次いで日立(207Pt)、Panasonic(191Pt)と続きます。冷蔵庫の機能名称は新しい技術、聞きなれないネーミングよりもそれ自体で理解できるかどうかが重要なようです。やはり機能のネーミングですから数種類あるネーミングタイプの中でも機能型(商品の機能をそのままネーミングにしたタイプ)が向いているのでしょう。しゃれや韻を踏むようなものも時には有効のようですね。短い文字数でいかに消費者に機能効果をイメージさせることができるか。ネーミングがヒットすればその機能名称が一般名詞として通用してしまうこともあり得ます。他の家電製品についての機能名称も比較してみると面白そうですね。


調査概要

全国のインターネットユーザー(30歳以上女性)から回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2009年8月11日(火)〜12日(水)
調査内容 冷蔵庫の5つの機能名称(社名を伏せた6社製品)についてそれぞれ魅力的に感じるものを聞いた。
調査対象 冷蔵室(冷蔵機能)・冷凍室(冷凍機能)・製氷室(製氷機能)・野菜室(野菜のための機能)・抗菌・脱臭機能の5つの機能名称【企業名】(以下 ミスト冷却・約-40℃冷気おいそぎ冷凍・Ag+イオン加工・間接冷却(調湿機能付)・除菌イオンシャワー【シャープ製品】/じざい棚・クイック冷凍・はずして洗お・スライドケース・ナノフェライト除菌【三洋製品】/まるごと鮮蔵室・熱もの冷凍・Ag抗菌製氷皿・i-ツイン冷却・プラチナプラスユニット【東芝製品】/入るん棚冷蔵室・新鮮凍結プレート・はずして洗える製氷皿・ナノイー野菜室・Agバイオ抗菌脱臭【Panasonic製品】/真空チルド(ビタミンカセット付)・デリシャス急冷凍・はずして洗える製氷皿・給水パイプ・ナノテクミスト野菜室・ナノテク除菌・脱臭フィルター+アレルオフフィルター【日立製品】/前から冷やそ・熱いまま”急っと”瞬冷凍・透明光清氷・ビタミン増量野菜室・脱臭フィルター【三菱製品】)に対し、魅力的だと思う名称について複数回答式で回答を得た。
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