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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

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第33回:新旧ロゴマークイメージ調査

ロゴマークは企業のもつビジョンやコンセプトを視覚化することでブランドを伝達するものです。消費者にとってもロゴマークは企業を認識するための重要な手掛かりとなります。長年消費者に親しまれたロゴマークを変更することは、企業にとってブランド戦略の大きな節目となることが少なくありません。今回は近年変更されたロゴマークについて、新しいロゴマークのどのような点が評価できるのか、消費者のイメージを尋ねてみました。

Case1:明治製菓

明治製菓新(左)旧(右)ロゴ

明治製菓新(左)旧(右)ロゴ

(単位:%)
明治製菓
新しいものの方が個性的である 2
新しいものの方がインパクトがある 3
新しいものの方がわかりやすい 10
新しいものの方が親しみやすい 11
新しいものの方がセンスが良い 3
新しいものの方がイメージしやすい 2
新しいものの方が企業の姿勢が伝わる 1
新しいものの方が好感がもてる 5
新しいものの方が国際的である 0
過去のものの方が良かった 80

この8月に明治乳業とともに新しいブランドマークを発表した明治製菓。おなじみの板チョコのロゴも新しいものに変更されました。頭文字も小文字になり「ふくよかでやわらかな書体、親しみのある小文字を使用することによって、『食と健康』の企業グループらしい明るさと、お客様一人ひとりとのあたたかいつながりを表現」しているとのこと。また「『iji』には、人々が寄り添い支えあう姿」を託しているそうです。同じ赤い色調とはいえ、以前の力強さを感じた字体からは大きな変更ですね。 「新しいものの方が親しみやすい」(11%)、「新しいものの方がわかりやすい」(10%)などの新ロゴへの評価もある一方、「過去のものの方が良かった」は80%と大多数を占めています。変更されてまだ間もないこともあるかもしれませんが、日本を代表するグラフィックデザイナーといわれる故・亀倉雄策氏の手がけたあまりにも有名な旧デザインから新しいロゴに私たちが慣れるまで、少し時間が必要なのかもしれません。

Case2:NTTドコモ

NTTドコモ新(左)旧(右)ロゴ

NTTドコモ新(左)旧(右)ロゴ

(単位:%)
NTTドコモ
新しいものの方が個性的である 3
新しいものの方がインパクトがある 3
新しいものの方がわかりやすい 25
新しいものの方が親しみやすい 17
新しいものの方がセンスが良い 9
新しいものの方がイメージしやすい 7
新しいものの方が企業の姿勢が伝わる 1
新しいものの方が好感がもてる 5
新しいものの方が国際的である 6
過去のものの方が良かった 52

次は、昨年4月に大々的に企業ブランド刷新を発表したNTTドコモ。これまでは「NTT DoCoMo」という表記に“Co”を取り巻く線と点が記されており、字体や色からしっかりとした「いつでも、どこでも、誰とでも」つながる、災害など有事にも頼れるライフライン、そんな質実剛健な雰囲気が感じられるデザインでした。一方今回の刷新ではユーザーとの関係強化、個々の満足度を高める方針が採られロゴのデザインも「優しさなどヒューマンタッチ、未来に向けた可能性を持たせるものになり安心感、信頼感を表現したシンプルで親しみやすいデザイン」になっているそうです。色は暖かみを感じる「ドコモレッド(特別色)」という赤を採用した小文字で「docomo」の表記となっています。

「新しいものの方がわかりやすい」は25%、「新しいものの方が親しみやすい」は17%ととこちらも一定の評価がある一方「過去のものの方が良かった」が52%と変更から1年半経った現在も半数以上が過去のロゴを支持する結果が出ています。「新しいものの方が企業の姿勢が伝わる」(1%)の評価がそれほどなされていないのも気になるところです。

携帯電話は現代では消費者の生活になくてはならないものです。個人の生活に限りなく寄り添う姿勢と、消費者が期待する社会的責任をも大きく背負った国を代表する企業としての信念、その両方をデザインで表現するのは思った以上に難しいことなのかもしれません。

Case3:花王

花王新(左)旧(右)ロゴ

花王新(左)旧(右)ロゴ

(単位:%)
花王
新しいものの方が個性的である 4
新しいものの方がインパクトがある 5
新しいものの方がわかりやすい 8
新しいものの方が親しみやすい 2
新しいものの方がセンスが良い 17
新しいものの方がイメージしやすい 3
新しいものの方が企業の姿勢が伝わる 4
新しいものの方が好感がもてる 4
新しいものの方が国際的である 27
過去のものの方が良かった 51

続いては月のマークでお馴染みの花王です。この6月に「花王と月のマーク」を「kaoと月のマーク」に統一することが発表されました。これはグローバルな成長の達成を目的としたものです。こちらはエコロジーを根幹に据えたCIの発表と同時に行われました。もともとグリーンを採用していたこと、また「美と洗浄のシンボル」として採用された月のマークは踏襲していることから他の企業と比較してみるとマイナーチェンジの感もありますが、見方を変えれば「ぶれない企業理念」とも受け取れるでしょうか。こちらも「過去のものの方が良かった」が51%と半数以上の支持があるものの「新しいものの方が国際的である」(27%)、「新しいものの方がセンスが良い」(17%)と切り替ってから比較的短期間ながら新しいものにも一定の評価がされているようです。

Case4:ローム

ローム新(左)旧(右)ロゴ

ローム新(左)旧(右)ロゴ

(単位:%)
ローム
新しいものの方が個性的である 7
新しいものの方がインパクトがある 33
新しいものの方がわかりやすい 53
新しいものの方が親しみやすい 8
新しいものの方がセンスが良い 12
新しいものの方がイメージしやすい 20
新しいものの方が企業の姿勢が伝わる 5
新しいものの方が好感がもてる 14
新しいものの方が国際的である 5
過去のものの方が良かった 5

創立50周年を機にブランドロゴを変更した半導体メーカーローム。世界的な半導体のメジャープレーヤを目指すためには、『半導体のローム』というブランドイメージをグローバルに発信する必要があった」というのが今回の変更の趣旨です。総合電子部品メーカーを表現したこれまでの青字のロゴから一変、「The promise of reliability and high quality(信頼と高品質の約束)」というデザインコンセプトの下、「ROHM ベンチャーレッド」と名付けられた赤でベンチャー精神のDNAを表現、「ROHM SQUARE」とされる四角は半導体の外形をイメージしているそうです。半導体を意味する「ROHM SEMICONDUCTOR(ロームセミコンダクター)」の字体は、「しなやかで安定感のある企業姿勢を表現」する「ROHM オリジナルフォント」だそうです。半導体が売上高の9割を超えたという現在、力強いロゴからも企業の存在感を感じ取れる気がします。

「過去のものの方が良かった」(5%)という人は非常に少なく、「新しいものの方がわかりやすい」(53%)、「新しいものの方がインパクトがある」(33%)、続いて「新しいものの方がイメージしやすい」(20%)、「新しいものの方が好感がもてる」(14%)、「新しいものの方がセンスが良い」(12%)と新しいものに対する評価が非常に高くなっています。新しいロゴマークは50周年を区切るにふさわしいスタートとなったようです。

Case5:東京タワー

東京タワー新(左)旧(右)ロゴ

東京タワー新(左)旧(右)ロゴ

(単位:%)
東京タワー
新しいものの方が個性的である 17
新しいものの方がインパクトがある 16
新しいものの方がわかりやすい 29
新しいものの方が親しみやすい 39
新しいものの方がセンスが良い 28
新しいものの方がイメージしやすい 6
新しいものの方が企業の姿勢が伝わる 1
新しいものの方が好感がもてる 31
新しいものの方が国際的である 9
過去のものの方が良かった 14

最後は今年5月に約20年ぶりにロゴマークを変更した東京タワーです。「東京タワーがある小高い丘(芝公園)や、地球をイメージ」されたデザイン。オレンジの「T」はタワーを、文字の上に並んだ緑色の丸は地球環境への貢献や、自然との共存をイメージされているそうです。

「新しいものの方が親しみやすい」(39%)、「新しいものの方が好感がもてる」(31%)、「新しいものの方がわかりやすい」(29%)、「新しいものの方がセンスが良い」(28%)、「新しいものの方が個性的である」(17%)、「新しいものの方がインパクトがある」(16%)とこちらも新しいものの評価が「過去のものの方が良かった」(14%)を大きく上回る結果となりました。旧ロゴマークが赤とグレーというシックな色味、デジタル時計を思い起こさせる字体で時代を感じさせるものであったのに対し、新ロゴマークは青字にグリーン、オレンジという鮮やかさが、電波塔としての役割だけでなく、行って楽しい観光地としてのイメージを伝えているように感じられるのかもしれません。

以上、今回は5つのロゴマークについて見てみました。これらのロゴマークに限らず近年はロゴタイプの字体を柔らかい曲線や小文字フォントで表すことによって「やさしさ・親しみ」を表現しようとするところが多いように見受けられます。時代に乗った流行りと言えるかもしれませんが、結果として他と似たようなものになってしまうともいえそうです。しかし、新しいものが古いものより明らかに優れているという場合(しかもそのような場合はなかなか起きにくいらしい)を除き、新しいロゴがすぐに定着することはかなり難しいことのようです。いったん変更したら新しいものを定着させるための努力を継続的に行うことが、新しいロゴをデザインする以上に重要なことのようです。

※各ロゴマークは該当企業サイト、商品パッケージ・印刷物等から画像引用しています。

調査概要

全国の20代〜50代のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2009年9月8日〜9月9日
調査内容 5つのロゴマークについて新旧比較を含めたイメージを聞いた。
調査対象 5つの企業(組織)のロゴマーク(以下【明治製菓】/【NTTドコモ】/【花王】/【ローム】)/【東京タワー】)に対し、10のイメージ項目(新しいものの方が個性的である/新しいものの方がインパクトがある/新しいものの方がわかりやすい/新しいものの方が親しみやすい/新しいものの方がセンスが良い/新しいものの方がイメージしやすい/新しいものの方が企業の姿勢が伝わる/新しいものの方が好感がもてる/新しいものの方が国際的である/過去のものの方が良かった)の中から複数回答式で回答を得た。
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