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第91回:テレワークに関する意識と課題について

COVID-19の世界最初の症例発生からおよそ1年半。この間世界各国で感染防止のための外出禁止、自粛の措置が取られ、買い物やレジャーはもとより仕事のための出勤さえも厳しく制限されていた時期がありました。
日本国内でも度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の元、企業にはテレワークの導入・徹底が呼びかけられ、仕事を取り巻く環境も大きな変化を遂げました。
そこで今回はテレワークに対する人々の意識と課題について首都圏(東京・千葉・埼玉・神奈川)、関西圏(大阪・兵庫・京都)、愛知、福岡在住の会社員・会社役員・経営者に尋ねてみました。

テレワークの実態と理想

下図は就業している会社でのテレワークの実施の有無と頻度について尋ねた結果をグラフにしたものです【図1】。

「ほぼ毎日テレワークを利用」しているのは10.0%、「週4日程度」は9.5%、「週2-3日程度」が18.0%、「週1日程度」が8.8%で計46.3%が週1日以上テレワークを利用しているものの、「(勤務先としては)実施しているが利用していない」15.0%、「(勤務先が)実施していない」38.8%と合わせて53.8%がテレワークを利用していないことがわかります。

一方、理想のテレワークの頻度を尋ねた結果は次のようになりました【図2】。

「ほぼ毎日」は16.0%、「週4日程度」は11.8%、「週2-3日程度」は30.8%、「週1日程度」は9.3%で週1日以上テレワークを利用したいと思っている人は67.8%に上ります。理想(67.8%)と実態(46.3%)とは20%以上の乖離があり、働き手の理想通りに進んでいるとは言えないようです。

これまでテレワークの導入が難しいと考えられてきた職場でも、実施可能であることが実証され、特に接客を伴わない業種においてはコロナ収束後も働き方の選択肢としてテレワークの取り組みは継続していくものと考えられます。従業員のライフワークバランスを向上させるため、また、多様な人材を求める上で現在テレワーク導入に至っていない企業も引き続き検討する必要がありそうです。
「週2-3日程度」を理想とする人が3割と最も多いことからこれから環境の整備を考えるとすると「週2-3日」のテレワーク実施が一つの目安になると言えるかもしれません。

快適なテレワーク環境に必要とされるもの

それでは、よりスムーズなテレワークを実現するため、どのような環境の整備が必要なのでしょうか。下図は「より効率的で快適なテレワーク環境を作るため、企業において必要と思われる施策」を尋ねた結果です【図3】。

社内ネットワークへのリモートアクセス環境など「ITインフラ」、次いで「セキュリティ対策」が上位となりました。オフィス外での業務には、第一に社内ネットワークへの外部接続環境の構築や、安心して業務を行うためのセキュリティ面の強化などハード面の整備が重要と言えそうです。
次いで高いのがオンライン会議システムやビジネスチャットツールといった「オンラインコミュニケーションツールの導入・強化」で、テレワークで課題となりがちな対話コミュニケーションを、いかに代替するかが重要であると考えている人が多いことがわかります。

同時に、コアタイム廃止やワーケーション導入といった「多様な働き方支援」や「出退勤管理」など各々が安心して働けるように人事・総務的な制度の整備も重要視されています。
さらには「社内稟議/承認システム」「会計/経理・財務システム」「電子契約サービス」の導入・強化のようにこれまで主に人を介して行っていた総務・会計的な業務をどれだけ電子化することができるかも大きなポイントになると言えそうです。

顧客視点で見るテレワーク時代に必要なもの

ここで一度、視点を変えて顧客の立場に立ってみましょう。下図は週1日以上テレワークを利用している人に「過去1年に業務で使用する製品・サービスの導入・利用を検討するため企業のWebサイトのどのようなコンテンツや機能を利用したか」尋ねた結果です【図4】。

「商品情報」の利用が最も多く、「商品説明動画」、「導入事例/成功事例」、「オンラインセミナー」がそれに続いています。
新型コロナ問題発生以降、オフラインでの打合せやイベントホールなどで開催されるセミナーが軒並み中止となり、対面で商品の説明を受ける機会が非常に少なくなりました。
一方で、新しい商品や複雑なサービスを理解するにはパンフレットや簡単な商品説明だけでは難しいケースもあるため、サービス提供側には商品・サービスをより簡単に、分かりやすく理解してもらえるような工夫が求められているものと考えられます。商品情報や導入事例に加え、視覚と聴覚を介して情報を発信できる動画での商品説明やオンラインセミナーには大きな需要がありそうです。
コロナ禍により半ば強制的に推し進められたコミュニケーションのデジタル化ですが、たとえコロナ問題が収束しオフラインが戻ろうとも、オンラインが持つ時間や場所の制約の緩さが、情報を提供する側、される側双方にとって大きなメリットであることに気付いた人は多いのではないでしょうか。今後はオンラインでもオフラインと同等の商品・サービスへの興味喚起や理解深化を促せるような施策がいっそう求められるようになりそうです。

現在、ワクチンの普及とともにようやくコロナ問題にも収束の希望が見えてきたように感じます。
企業も、コロナ後の働き方や営業施策を考えはじめる時期に来ているのではないでしょうか。
コロナ禍を経験し、多くの人が働き方とその選択肢の多様性について認識を新たにすることとなりました。今まで不可能だと考えられていたこともデジタルをはじめとする様々な工夫によって実現できることもわかりました。急速な社会環境の変化とそれに伴う行動様式の変化が、人々が従来持っていた価値観の多様性を顕在化させています。
ポストコロナ時代は従業員の働き方においても顧客とのコミュニケーションにおいても多様なニーズに配慮した取り組みがより重要となっていくのかもしれません。

調査概要

首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)、関西圏(大阪府・兵庫県・京都府)、愛知県、福岡県在住の会社員・経営者・役員である22~59歳・男女(各200名)のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 400
調査期間 2021年6月8日~6月9日
調査方法・内容 1.過去1年以内における業務で使用する製品・サービスの導入・利用を検討するため企業が運営するWebサイトの利用経験について(【ある/ない/製品・サービスの導入・利用を検討したことがない】より)単一回答、2.1.で「ある」と答えた回答者に企業のWebサイトでどのようなコンテンツ・機能を利用したか(【商品情報/商品説明動画/導入事例・成功事例/オンラインセミナー/トレンドや最新情報などの特集コンテンツ/ニュース・お知らせ/経営方針・ビジョン/企業情報(IR情報など)/検索機能/チャット機能/問合せフォーム/あてはまるものはない】より)複数回答、3.お勤め・就業されている会社のテレワーク実施と利用している頻度について(【実施しておりほぼ毎日テレワークである/実施しており週4日程度がテレワークである/実施しており週2-3日程度がテレワークである/実施しており週1日程度がテレワークである/実施しているがテレワークはほぼ利用していない/実施していない】より)単一回答、4.テレワークに関する理想的な頻度について(【ほぼ毎日テレワークで働きたい/週4日程度テレワークで働きたい/週2-3日程度テレワークで働きたい/週1日程度テレワークで働きたい/テレワークは実施せず、出社して働きたい/当てはまるものはない】より)単一回答、5.より効率的で快適なテレワーク環境を作るため勤務・就業している企業において必要と思われる施策について(【ITインフラ(社内ネットワークへリモートアクセスができる仕組みなど)の構築・補強/セキュリティ対策の強化/オンラインコミュニケーションツール(オンライン会議システムなど)の導入・強化/社内稟議・承認システムの導入・強化/会計・経理・財務システムの導入・強化/電子契約サービスの導入/社員の健康管理サービスの導入・強化/人材教育・社内研修・マネジメントの改善/出退勤管理の改善/多様な働き方支援(コアタイム廃止やワーケーション導入など)/自社Webサイトの改善/動画での製品・サービス紹介/オンラインショール―ム、オンライン展示会の構築/オンラインセミナーの実施/社会情勢やトレンドに関する情報発信(メルマガなど)/MA、CRM、SFAなどマーケティングツールの導入/オンライン会議などでも見やすい営業資料の作成/お客様への定期的な電話連絡/お客様への定期的なメール連絡/自社製品・サービスの広告出稿強化/あてはまるものはない】より)複数回答にて回答を得た。