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第89回:コロナ禍における消費者のサービス・施設・店舗利用の意識について(2)

新型コロナウイルス問題は緊急事態宣言発令した4月より7か月が経過しましたが未だ収束の気配がありません。ヨーロッパでは第2波が猛威を振るい、ドイツやフランス、イギリスなど各国で再びサービスの営業停止など制限措置が取られました。東京都でもこのところ200人を超える感染者の報告があり国内もなお先行き不透明な状況が続いています。

なんでもランキング第89回では前回 [1]に引き続きコロナ禍における旅行、飲食、運輸、エンターテインメント、娯楽業界のサービス、施設、店舗利用について意識調査の結果をお伝えします。

第2回となる今回は「新型コロナの影響が調査時(2020年9月下旬)の状況から変化がなく、ウィズコロナの生活が今後しばらく続くと仮定した場合、有料でも利用したいと思うサービス」と、さらに「新型コロナウイルス感染症問題が収束したら利用したいサービス」について尋ねた結果をお伝えします。

ウィズコロナの生活において有料でも利用したいと思うサービス

下記の【図1】はもし新型コロナの影響が調査時(2020年9月下旬)の状況から変化がなく、ウィズコロナの生活が今後しばらく続くと仮定した場合「有料でも利用したいと思うサービス」の回答の割合を示したものです。

最も利用意向が高かったのは「これまで店舗提供のみだった飲食店のテイクアウト・宅配サービス」で26.8%でした。コロナによる自粛要請や営業時間の短縮要請を受け多くのホテルや飲食店がテイクアウトサービスを提供しはじめました。緊急事態宣言終了後はテイクアウトのサービスを終了した店舗もあるようですが、継続する店舗も多く見られます。コロナ以前より広がった「お店の味をお家でも」という選択肢をメリットとして受け止めた消費者が多かったようです。

次いで多かったのは「これまで店舗提供のみだった商品のECサイト販売」で16.5%となっています。コロナを機にECサイトでの販売を開始した企業・店舗のほか、すでにECを提供していた企業・店舗でもより利便性が高い非対面での販売方法を工夫しています。今年5月には、楽天西友ネットスーパーで商品配達時、原則非対面受け取りを実施するなどの対策が取られました。またイオンのネットスーパーでは各地で水揚げされた魚を新鮮なまま届ける「鮮魚ボックス」の販売地域を広げるなど、より多くの人がECサイト販売ならではのメリットを享受できるようサービスを展開しています。これらのサービスの提供地域や店舗は現時点では限られているようですが、便利なサービスが導入されることにより、これまで利用していなかった消費者にもECサイト利用という選択肢が広がってきたと言えそうです。

性別・年代による意識の傾向

ここで属性による回答傾向の違いを見てみましょう。下の【表1】は性別、年代別の回答割合を示したものです。

全体で26.8%と最も利用意向が高い「これまで店舗提供のみだった飲食店のテイクアウト・宅配サービス」はどの属性からも一定の支持を得ており、特に40~60代女性の数値が高くなっています。中でも50代女性は46.9%と半数近くが「利用したい」と回答しました。

次いで2番目に利用意向が高い「これまで店舗提供のみだった商品のECサイト販売」も各層から一定の回答がありました。特に40代女性の数値が高く27.8%と3割近くが「利用したい」と回答しています。

50~60代では子供の独立などで世帯人数の減少、教育費や住宅ローンなど一定の費用に目途がつき余裕のある家庭が増えてくる時期なのかもしれません。このためもともと他の世代よりも外食への需要が高い可能性があります。一方40代は子育て中という家庭も多く、食事や日用品の買い物に時間もお金もそれほど多くかけられない中でECなどによる食品や日用品の購入の需要が高い傾向にあるのかもしれません。

なお「飲食店のテイクアウト・宅配サービス」「ECサイト販売」はいずれも男性より女性の需要が高いという結果となりました。日常生活において「食事の準備」や「買い物」の機会が多い女性のほうがその代替手段をより切実に考える傾向が強いといえるでしょう。

続いて全体で10.3%の回答があった「オンラインでのライブ、コンサート配信」です。利用意向が最も高かったのは20~30代女性で19.4%となっています。続いて40代男性16.3%、20~30代男性13.2%と若年層において回答割合が高い傾向が見られました。

また、20~30代女性は「オンラインでの商品説明、コンサルティングサービス」や「オンラインでの講演会配信」などの需要も比較的高い傾向が見られます。若年女性層は仕事にも娯楽やエンターテインメントにも、オンラインの活用に積極的な人が多いのかもしれません。

コロナが収束したらやりたいこと

今年に入りすっかり生活が変わってしまったという人も多いかと思いますが、そろそろ疲れも見えてくる頃かもしれません。ここで「新型コロナ問題が収束したらやりたいこと」について尋ねた結果を見てみましょう【図2】。

「旅行(国内)」をしたいという人が最も多く半数近くの回答を得ました。また、「旅行(海外)」や「大人数で会食」がしたいという人も多く、仕事や日常の買い物といった身近な生活圏での移動や自宅内で過ごすだけの生活から開放されたいという思いがうかがえます。
また「映画鑑賞(映画館で)」は22.5%と2番目に高い数値となっています。オンラインで手軽に映画を観ることができるようになっても迫力と臨場感を感じられる映画館での映画鑑賞を求める声が多いことがわかります。
さらに「帰省」と答えた人がおよそ2割と、長時間の移動や家族への影響などを考えなかなか故郷に帰れないでいる人が一定数いることがうかがえる結果となりました。

性別・年代による意識の違い

次に【表2】で性別、年代別の回答割合を見てみましょう。

押しなべて男性よりも女性の数値が高く、また年代が高いほど意向が高い傾向が見られました。特に「旅行(国内)」は40~60代女性の半数以上がやりたいことだと回答しています。

一方「あてはまるものはない」は40代男性でもっとも回答割合が高くなっています。男性の40代は一般的に仕事が忙しく、また責任も増える時期です。余暇に割く時間がとりづらい状況を反映しているのかもしれません。

とはいえ、40代男性でも5割以上の人が、全体では8割近くの人が「コロナ収束後にやりたいことがある」と感じています。それだけコロナ禍の生活に不自由を感じている人が多いことを表しているといえるでしょう。

ただ一方で、制限された状況下でも企業や事業者は時世に即した新しいサービスを次々と考え提供し、また、それを受け入れ消費する消費者がいます。新たなチャレンジの中で、新たなメリットや価値観が生まれることもあるでしょう。

不自由を乗り越えやがて必ず訪れるコロナ収束後の未来は、コロナによって失われた時間を取り戻す未来であるとともに、ウィズコロナによって培われた新しいメリット・価値観も備えたより明るいものになるかもしれません。

調査概要

2020年9月下旬時点で新型コロナウイルス感染者が一定数確認されている東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・大阪府・愛知県の20~60代(男女)のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 400
調査期間 2020年9月28日~9月29日
調査方法・内容 (前回の1.2.につづき)3. 新型コロナの影響が2020年9月現在の状況から変化がないと仮定して有料でも利用したいと思うサービスを (これまで店舗提供のみだった飲食店のテイクアウト・宅配サービス/これまで店舗提供のみだった商品のECサイト販売/オンラインでの商品説明、コンサルティングサービス(化粧品、不動産、インテリア、リフォーム等)/オンラインでのライブ、コンサート配信/オンラインでの舞台(ミュージカル・演劇等)配信/オンラインでの映画封切り上映/オンラインでの講演会配信/ホテルの客室や飲食店の個室を使ったワーキングスペース提供/あてはまるものはない)より複数回答、4 . 新型コロナウイルス感染症問題が収束したらどんなことをしたいかを(旅行(海外)/旅行(国内)/大人数で会食/コンサート鑑賞/ライブ鑑賞/スポーツ観戦/舞台(ミュージカル・演劇等)鑑賞/映画鑑賞(映画館で)/カラオケ/生活必需品以外の買い物/帰省/出張/セミナー/あてはまるものはない)より複数回答にて回答を得た。