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第48回:ランキングによる企業イメージの変化

世の中には企業を対象とした様々なランキングが発表されています。
そのデータは自社に有益な情報をもたらしてくれますが、公表される順位を見て外部の人がどのように感じたかも気になるところです。
今回はそんなランキングによる企業イメージの変化を調べてみました。
調査の結果は以下の通りです。

グーグル
(転職人気
企業1位)
IBM
(女性が
活躍1位)
ソニー
(CSR
1位)
日産
自動車
(革新的
4位)
トヨタ
自動車
(環境
1位)
この企業に
親しみを感じた
1417151015
この企業への
信頼感が増した
1822241324
この企業に
興味を持った
2819151510
この企業の
良さを再認識した
1512221824
この企業で
働きたいと思った
66653
この企業を
誇らしいと思った
3281211
この企業であれば
順当だと思った
2113311528

転職人気企業1位のグーグルには「この企業に興味を持った」

転職サイトのDODA(デューダ)が社会人5,000人に対するアンケートに基づいて行う転職人気企業ランキング(http://doda.jp/guide/popular/index.html [1])の1位はグーグルでした。
男女ともに1位という結果です。
転職サイトの行うランキングですのでさぞかし「この企業で働きたいと思った」人が多そうな気がしますが、結果は「この企業に興味を持った」人が28%で最多となり、「この企業で働きたいと思った」人はわずか6%にとどまりました。
想像するに、検索サービスとしての「Google」は知っているが、企業としてのグーグル社は米国の新興企業であることもあり実は良く知らない人が多かったのではないでしょうか。そのため、今回のランキングをきっかけに会社に興味を持った人が多かったのではないかと思います。

女性が活躍する会社1位の日本IBMには「この企業への信頼度が増した」

次は「日経ウーマン」が実施した「女性が活躍する会社ランキング」(http://wol.nikkeibp.co.jp/article/special/20110401/110527/ [2])です。「すべての働き女子を応援します!」というキャッチフレーズの雑誌らしい特集記事となっています。
2011年のランキング1位は日本IBMでした。これに対しては、「この企業への信頼感が増した」人が同社の中で最も多く、全体の22%を占めました。先に取り上げたDODAのランキングは一般の人に対するアンケートに基づくものでしたが、このランキングは当事者たる企業に対するアンケートに基づくものです。そのため、結果は一般の人の抱くイメージとは必ずしも一致しないかも知れません。しかし、その企業が職場環境を一般の人が外部から窺い知ることは容易ではありません。「信頼感が増した」という背景には企業内部の取り組みの一端が認知され、印象となって現れた部分があるかも知れません。

CSR評価2位ソニーと環境評価1位のトヨタは「順当」、「信頼」、「再認識」

次は東洋経済が行った「CSR企業ランキング」(http://www.toyokeizai.net/corp/release/2011/20110221.php [3])で2位になったソニーとインターブランドが行った「グローバル・グリーンランキング」(http://www.interbrandjapan-seminar.info/aboutus/pdf/BGGB_PressReleases.pdf [4])で1位となったトヨタ自動車です。
前者は一般消費者に対するアンケートと財務分析の組み合わせ、後者はアンケートと公開情報に基づく企業の環境パフォーマンスの組み合わせと、評価モデルはやや複雑なものになっています。
ちなみに東洋経済の解説によれば、CSR2位のソニーはアンケート調査では高得点だったにも関わらず、調査の前年の業績があまり芳しくなく財務分析の得点が伸び悩んだため、わずかに1位のトヨタ自動車の後塵を拝する結果となったようです。
この結果に対して「この企業であれば順当と思った」と回答した人が31%を占め、全企業全選択肢中、最も高い値となっています。次いで「この企業への信頼度が増した」が高く24%、「この企業の良さを再認識した」が22%となっています。
また、環境で1位のトヨタ自動車に対してももやはり「順当と思った」28%、「信頼感が増した」と「良さを再認識した」がそれぞれ24%とほぼ同じような数字が出ています。
これらの企業が高い評価を得たのは順当な結果と受け止めつつ、改めて結果を目の当たりにして信頼感が増し、良さの再認識につながったという人々の反応が窺えます。

世界で革新的と認められた日産自動車は「誇らしい」

最後は米ビジネス雑誌FastCompanyが行った「世界で最も革新的な企業ランキング」(http://www.fastcompany.com/most-innovative-companies/2011/ [5])で4位となった日産自動車です。
この調査は1位がアップル、2位ツイッター、3位フェイスブックと、今が旬の米国IT企業、ネット企業が上位を独占する中、トップ10の上位に日本企業で唯一ランクインしたのが日産自動車です。
この結果に対して、上位企業には日本人にはあまり馴染みがない顔ぶれが多かったせいか、今ひとつ回答者の反応が鈍かったようです。それでも「この企業の良さを再認識した」人は少なからずいたようです。注目されるのは、「この企業を誇らしいと思った」人の割合が他の4社と比べて高かった点です。
やはり、海外で評価されるということは日本人にとって格別の意味を持つようです。海外で活躍し、評価される日の丸ブランドに対して、同じ日本人として誇らしいと感じるのが人情なのでしょう。

ランキングを見る人の受け止め方は様々ですが、上位という結果を素直に受け止め、その企業に対する信頼感を再確認する人は少なくないようです。そのことが更にその企業のブランド価値を幾分か高めるという効果も期待できそうですね。

調査概要

全国20歳以上男女のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2011年7月29日~2011年7月30日
調査対象 DODA「転職人気企業ランキング2011」1位グーグル/日経ウーマン「女性が活躍する会社ランキング2011」1位日本IBM/第5回東洋経済CSR企業ランキング(2011)2位ソニー/FAST COMPANY「The World’s Most Innovative Companies 2011」4位日産自動車/インターブランド「Best Global Green Brands 2011」1位トヨタ自動車
質問方法 それぞれの調査のランキング結果を提示し、被験者にその印象を尋ねた。