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第143回:失注理由を追求するよりやるべきことは

Q コンペで失注した理由を究明すると受注確率は上がりますか。
A 受注確率を左右する最大のドライバーは参加企業数のため、ほとんどは無意味に終わります。

受注産業ではしばしばコンペやプロポーザル方式、競争入札によって受注が決まります。このような業界はしばしば製品差別化が難しいか、または経験財であり、発注者側は提供企業間の品質の違いを事前に知ることが困難です。

コンペの場合、JVは別として最終的に1社が選ばれ、残りは選ばれない結果となります。そこで、参加企業側から見ると、多くの場合失注数の方が受注数を上回るということが起こります。この状態は特に不自然ではないのですが、失注が多いことが気に入らない経営者はしばしば「失注理由を徹底的に究明せよ」と社員に要求します。

全力で臨んだコンペに落ちたのは悔しいかもしれません。ただ、基本的に受注確率は入札参加企業数の逆数となります。10社参加すれば確率は10分の1です。他の参加企業も全力で臨み、発注側が公平を期せば期すほどそうなります。それなのに、あたかも自分の会社だけ高確率を期待するのはかなり無理があるように思われます。

たいていの場合、選定理由にはそれなりに明確な理由はあるが、非選定理由には価格以外にはたいした理由はありません。そのようなものを追求するよりも、入札機会数と各入札機会における競合企業数を把握する方が、はるかに計数管理しやすいと考えられます。

トータルの受注数を増やすには入札参加機会を増やすか競争状態を緩和して受注確率を上げることが必要となります。そのためにはいかに情報力を強化すべきか、いかにブランド力を強化すべきか、それぞれの資源配分はどうするか、といった施策を立案しますが、それを上記のような計数管理に基づいて行うのが好ましいマネジメントのあり方と考えられます。