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第142回: 買わない理由を探索するのは無意味

Q 当社商品でなく競合商品を選んだ人に、買わなかった理由を尋ねると、もっと売れる理由はわかりますか。
A たいていの場合、積極的に買わない理由はなく、あまり意味のあるアプローチにならないと考えられます。

よく、自社ブランドが競合ブランドほど売れていない状況を克服するには買わない理由を解消すればよいから、自社ブランドではなく競合ブランドを買った人を集めて「なぜ当社ブランドを買わなかったのですか」と尋ねる調査を行おう、という議論が行われることがあります。

しかし、多くの場合、消費者は、買ったブランドに対してはそれを買ったそれなりの理由を持っていますが、買わなかったブランドに対してはたいした理由を持っていないことが多いのです。このような人にあえて買わない理由を挙げてもらっても、その方は明確な意思を持ってそのブランドを除外したわけではないので、「たまたま機会がなかったから」、「今回は欲しい別のブランドがあったので」程度のことしか出てきません。

このように、消費者心理の実態を無視した、買わない理由を探索するアプローチは多くの場合不発に終わります。むしろ、消費者が積極的に購入する理由を見つけ、提示してあげた方がはるかに効果的なことが多いといえます。
よく、顧客のペイン・ポイント(悩みの種)を解決することが重要だ、といいます。これは、あくまで顧客が抱えている課題を解決してあげれば購買につながる、ということであって、自社ブランドの課題(この場合、売れない理由)を解決すれば売れる、という意味ではありません。むしろ、ペインポイントの解決は、顧客が自社ブランドを積極的に購入する理由を提示する、ということにつながります。

しかし、「不買理由をつぶせ」は一見もっともらしく見えるため、とりわけ会社の上司が強硬に主張した場合は組織人として対処に苦労するかもしれません。