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第6回:サポートとサービスの統合がもたらす価値

多くの企業は新規契約には興味があるが、既存顧客に対するサービスとなると新規顧客の獲得ほどは熱意がないことが多い。しかし、今日、多くの企業では純然たる新規顧客よりも以前に何らかの接点があった、広い意味での既存顧客に対する販売が非常に大きなウェイトを占めているはずである。

ウェブサイトでは、商品購入は重要なアクセスのきっかけとなっている。

重要なこととして、購入後アクセスは再購入意向率などに表わされる顧客のロイヤルティを高める点にある。

そのため、販売後にどのような接点を持つかは各社にとって重要な課題となる。しかし、それは必ずしも容易でないことも少なくない。

その点、アップル製品は、購入後にウェブサイトを通じて継続的に利用することが基本的なユーザーの利用スタイルとなっている。そのため、iPhoneは他の携帯電話メーカーのサイトと比べ、購入後アクセス率は非常に高い。

多くのユーザーにウェブサイトの利用を習慣付けることは、サポートの効率性の向上にもつながる。

多くのメーカーではコールセンターの費用削減に頭を悩ませている。企業によってはコールセンターへの電話を減らすため、ウェブサイトに電話番号を記載しないなどの対応をしているところもあるが、これは本末転倒である。購入した商品に関してメーカーのサイトにアクセスすることが習慣付けられれば、ユーザーは次第にサポートのページを見る機会も増え、電話せずに自己解決する道が開かれる。

実際、アップルの「Q&Aやサポートのページ」の利用率は他のメーカーと比べて非常に高い(図1)。これは結果的にコールセンターの負担も減り、コストメリットにつながるものと考えられる。

アップル28.6%,富士通15.4%,NEC17.6%,シャープ16.6%,パナソニック15.3%,ソニー・エリクソン16.4%

【図1】サポートページの利用率(2011年、購入後アクセス者ベース)

このように、サービスと狭義のサポートを分離せず、なるべく近づけた状態で運用することができれば購入後も活性化されたユーザーをウェブサイトに呼び込むことができ、それがやがては自社製品の再購入や追加購入につながると期待される。

実際、携帯電話メーカー各社間で比較するとアップルの再購入意向はやはり高い。このような状況がアップルの業績に貢献していることはもちろんだが、iPhoneをラインナップに持つキャリア(携帯電話会社)の顧客の継続意向にも大いに貢献していることだろう。

アップル78.3%,富士通57.2%,NEC67.6%,シャープ62.0%,パナソニック65.0%,ソニー・エリクソン65.6%

【図2】携帯端末各社の再購入意向(2011年、購入後アクセス者ベース)

参考