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第1回:スローライフとイタリアンバール 

本コラムでは、身近な疑問に対して100名にアンケート調査をした結果を掲載しています。

第1回目は、スローライフとイタリアのカフェスタイルについてお届けします。シアトル系カフェのチェーン店が全国展開する中、イタリア系のカフェスタイルを持つカフェが増えてきています。そこで、スローフード、スローライフやイタリアのカフェについてご紹介した後、イタリアンバールの新たな注目ブランドについてご紹介したいと思います。

スローライフとイタリアンバール

10年ほど前、欧州に海外旅行に行ったとき、お洒落なカフェでのんびりとすごす人をみて、うらやましいと思った記憶があります。オープンテラスのカフェ、川沿いに建ち並ぶカフェなど、自分でもこのようなカフェで本を読んでみたい、と思ったものです。そして現在、日本でも、近年のカフェブームで街中にお洒落なカフェが多くでき、かつて望んでいたような、ゆったりした時間を過ごすことができるようになりました。オープンテラスでのカフェ、とても気持ちよいですよね。このカフェ、皆さんはどう使われていますか。

「スローフード」「スローライフ」

「心とものを大切にした、急がない生活」を指す、スローフードという言葉をよく耳にするようになりました。元々は、北イタリアのBRAという小さな村が、地元の食材と食文化を大切にしようと始まったスローフード運動が発端となっています。スローフードのコンセプトは、ファーストフードのような食の画一化に対抗し、特徴的な郷土の食材・料理を守ろうという考え方で、「消えつつある郷土料理や伝統食品を守る」「質の良い素材を供給する小規模生産者を守る」「子供を含めた消費者全体に味の教育を進める」という3つです。この言葉、単にゆっくりと食事をしようということ以上の広がりを持っています。そして、食に限らず、生活全体をさすスローライフという言葉が誕生するにいたっています。

スローライフのイメージ

図1

【図1】スローライフのイメージ

我々は、「スローライフ」という言葉を聞いて、どのようなものをイメージするでしょうか。アンケートの結果では、スローライフという言葉から最も多くの人が連想することは、「食事」「欧州」となっています(図1)。仕事の合間にあわただしく食事を済ませることが多い日常生活を反映しており、また元々の語源であるスローフードが影響しているといえるでしょう。また、言葉の語源であるイタリアを含む、欧州のイメージが強く連想されています。例えば、南仏や北欧におけるバカンス等がイメージに沸いてくるのではないでしょうか。

スローライフへの関心

スローライフ的生活への関心

【図2】スローライフ的生活への関心
自分が行っているスローライフ的生活

【図3】自分が行っているスローライフ的生活

スローライフという生活スタイルに対する関心はかなり高いといえます。今すぐ、または近い将来に、スローライフ的生活を実際に行いたいと考える人々は、回答者の約半数にのぼっています。日常忙しい生活に疲れ、ゆったりした生活に対するあこがれが強くなっているのかもしれません(図2)。

しかし、実際には引越しをする、職を変える等の、ライフスタイルの大きな変化はそう簡単にはいきません。現在の生活の中では、休日をゆっくり過ごす、自然の多い場所に行くなどで、生活の中での気分転換を行っていることがわかります(図3)。

カフェブームとイタリアンカフェ

さて、スローライフというイメージの中心である、食事について。スローフードの語源であるイタリアには、人々が気軽に利用する、”バール”というカフェがあります。バールは、イタリア全土で16万軒もあるといわれており、日々の生活の中に溶け込み、自分のペースで人々が気軽に立ち寄る止まり木の役目を果たしています。人々は、朝は仕事前のカプチーノ、午後や夕刻はエスプレッソをはじめとする様々なカフェを楽しみます。日本でも、スターバックスやタリーズといったシアトル系大手チェーン店から、手作りの隠れたカフェまで、様々なカフェでゆったりした時間を楽しむことができるようになりました。このブーム、近年では、このイタリアンバールをコンセプトとしたカフェチェーン店が出店するようになってきています。

イタリアンバールの新ブランド

カフェを入れる職人のことを、イタリアではバリスタといいます。日本人でこのバリスタの資格を始めてとり、またミラノで開催されるジェラートの大会で85年から87年まで3年連続金賞受賞をしたのが、横山千尋氏。エスプレッソを入れる技術を競う日本の大会でも2回チャンピオンに輝いている横山氏は、六本木・港区を中心に店舗展開をしている「バールデルソーレ(太陽のバール)」というイタリアンバールを経営しています。

バールデルソーレは「イタリアをテーマとし『豊かなコミュニケーションスタイル』を提案する」ことを基本コンセプトとし、本格的イタリアンバールを展開しています。デルソーレの特徴は、通常のカフェや食事に加え、イタリアンバールと同様、バンコと呼ばれる立ち飲みスタイルでの食事・カフェを提供していること、気さくな雰囲気の中で、見知らぬ客同士のコミュニケーションが広がっていることでしょう。

そして、新たなカフェスタイルの提案

バリスタチャンピオンの横山氏は語ります。「イタリア人は、日々の生活の中で、止まり木のようにバールを利用しています。これからのカフェスタイルには、コミュニケーションや地域コミュニティの手助けといった面が必要になってくるでしょうし、デルソーレはこのような止まり木を目指しています」。

昔ながらの喫茶店から近年のチェーン店まで、カフェは我々にとってより身近になったといえるでしょう。一人になりたいとき、ものを考えたいとき、そして人のぬくもりが欲しいとき。様々な種類のカフェを状況に応じて利用し、生活のパワーとしたいものです。