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第3回:成分ブランディング−インテルのブランド戦略

成分ブランディングとは

成分ブランディングはブランド化された成分、すなわち部品や原材料のブランド力を最終製品のブランド力のドライバーとする戦略である。インテルのブランド戦略もこの成分ブランディングの一例と捉えることができる。

インテル・インサイドのキャンペーン

同社は元来BtoBであるが、ブランディングの感覚が優れた企業である。同社が大きなブランド力を獲得するきっかけとなったのは著名な「インテル・インサイド」のキャンペーンである。

インテルの製品は、一部の例外を除き一般消費者が直接購入するようなものではない。しかも、キャンペーンが始められた当時、既にインテルはMPUで高いシェアを獲得していたのである。にもかかわらず、このキャンペーンでは最終消費者に向けたコミュニケーションが行われた。

キャンペーンはパソコンメーカーとの協力のもとで行われた。パソコンメーカーのCMにインテルのロゴとジングル(サウンドロゴ)を露出する代わりに広告費用の一部を同社が負担するという形態だったといわれる。

このキャンペーンの結果、消費者の間にもインテルブランドが浸透しただけではない。消費者にとって、インテルのどのチップが使われているか、が製品の主要な選択理由として定着することにつながった。

以来、パソコン業界で高収益を享受するのはインテルとマイクロソフトという時代が続いてきた。

これからのインテルに注目

インテルは競合メーカーであるAMDの追撃によって脅威にさらされている。

2006年9月、インテルの減益と約10%にあたる1万人の人員削減が発表された。AMDの攻勢で悪化した収益性の回復を目指すためだという。

にもかかわらず、「インテル」というコーポレートブランド、「Pentium」、「Celeron」などのプロダクトブランドは、「AMD」、「Athron」、「Duron」に比べ、はるかに高いブランド力を維持している。同じ性能と価格であれば多くのエンドユーザーは間違いなくインテル製品を搭載したパソコンを選ぶであろう。しかし、競合によってこの前提自体が脅威にさらされているもの事実である。同社がマルチコア化の流れをどのようにブランディングするのか、注目される。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。