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第2回:サービスイメージの伝達−デルのブランド戦略

パソコンの購入を検討するとき、性能や価格だけでなく、サポートの良し悪しも考慮する人は少なくない。しかし、性能や価格とは異なり、サポートのような無形のサービスはカタログなどで表現されたものでは比較・評価しにくいため、いきおいイメージ的な要因が介在する余地が大きくなる。

逆に、サービスが良いというイメージをいったん確立してしまえば、それが持続性のある差別化要因として有利に働きやすくなる。

とりわけデルのビジネスモデルは直販が中心のため、販売店のサポートは期待できない。メーカー自身がサポートを充実させない限り、ユーザーのサポートに対するニーズは決して満足されることはない。

そこで、1994年コンピュータ・メーカーとして日本初の「24時間年中無休テクニカルサポート」を開始するなど、デルは他社にさきがけてサポートの充実に努めてきた。

その成果はユーザーからの評価として表れた。

たとえば、日経パソコンが毎年実施している「パソコンメーカー サポートランキング」では、2000年から4年連続でデルがトップとなっている。

このような評判が様々な形で伝わり、「デルはサポートがよい」というイメージが定着した。「価格は安いがサポートがしっかりしているから安心」という理由でデル製品を選んだユーザーは少なくないと思われる。

しかし、人手を介して行うサービスは当然コストがかさむ。コスト低減と人材確保を意図して、同社は中国にコールセンターを開設し、サポート業務の一部を移管した。しかし、「日本語が通じない」、「専門知識が足りない」など、ユーザーの評判は散々だった。日経パソコンの調査では2005年、2006年と続けて主要10メーカー中最下位の評価を受けるまでになってしまった。悪いことに、サポートセンターの評価だけでなく、メール、Web、マニュアルすべてが低い評価を受けている。

同社がもともと力を入れる法人顧客向けのサービスは問題ないという話もあるが、サービスの評判低下は個人、法人を問わず販売にとって決してよいことではない。

これに対して、同社は中国現地において継続的に改善に取り組むほか、2005年11月に新しいカスタマーセンターを宮崎に新設し、サポート体制の強化に取り組む姿勢を見せている。

もっとも、一連の施策が奏功し、再びサービスの評判がブランドの支援材料となるためにはある程度の年月を同社は覚悟しなければならないかも知れない。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。