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第84回:電気と電力会社との契約について

電気の小売業への参入が自由化され家庭でも電力会社やメニューを選択できるようになったのは2016年4月のことです。契約している電力会社をすでに変更したという方もいらっしゃるでしょう。一方でニュースに取り上げられることもいささか減ってしまい、元々の会社から変更しないままだという方もいらっしゃることでしょう。自由化から3年以上経ち、電気とガス、また携帯電話やガソリン、インターネットなど他の商品・サービスとのセット割引やポイント制度などのメリットも出てきています。また居住エリア外で発電された電気の購入や、再生可能エネルギーなど発電方法で電力会社を選ぶことも可能になっています。今回は電気と電力会社との契約についてたずねてみました。

電力会社の変更の有無

まずは電力自由化に伴い契約している電力会社を変更したかどうかについて見てみましょう。

全体で29.0%の人が変更したと答えました。特に多かったのは50代の女性で42.9%でした。30代女性は22.2%、40代女性は26.3%と年代が増すにつれて変更した人は多くなっています。男性でも50代が最も多く28.6%の人が変更したと答えていますが、30代は26.7%。40代でも24.1%と年代における大きな違いはありませんでした。

契約している電力会社

次に、現在契約している電力会社をたずねてみました。もっとも多かったのは中部電力で200名のうち48名が契約していると答えています。今回おたずねした200名の居住地域の内訳は東京都74名、大阪府67名、愛知県59名ですので中部電力の48名は実際の数字以上に大きな意味があるといえるでしょう。

中部電力に次いで関西電力、東京電力が続きます。さらに東京ガス、大阪ガスがその後に続いており、居住地域を考慮すると、元東京電力、元関西電力の契約者の一定数は東京ガス、大阪ガスに変更したことが推測できます。

さらにケーブルTVのJ:COM(J:COM電力)、KDDI(auでんき)やガソリンなどのJXTGエネルギー(ENEOSでんき、myでんき)といった新電力企業が続きました。

ここで前出の電力会社変更「有」と答えた人を居住地別に見てみると東京都41.9%、大阪府26.9%、愛知県15.3%と東京都在住者がもっとも多くなっていました。

現在、関西電力や中部電力のみならず中国電力や東北電力などの旧一般電気事業者も首都圏在住者向けのサービスを提供しています。しかし首都圏以外の地域向けプランはそれほど進んでいないようです。今回東京電力が中部電力、関西電力を下回った背景には元々の東京電力の契約者は新電力に加え、各地の旧一般電気事業者なども含めてもっとも選択肢が豊富な状況にあることが考えられます。

電力会社を変更した感想

ここで電力会社を変更した感想についてみてみましょう。最も多かったのは44.8%の人が回答した「電気料金が安くなった」です。一方で「思っていたほど電気料金が安くならなかった/高くなった」も34.5%と「電気料金が安くなった」に次いで多くの人が回答しました。同じ居住形態、家族構成でもライフスタイルによって見積との乖離もあるのでしょう。また実際には大きな変化がないと安くなったとしてもなかなか実感できないこともあるのかもしれません。

次いで多かったのは「電力は安定供給されていて問題ない」19.0%でした。電力供給システムは発電、送配電、小売と3つの部分に分類されていますが、送配電部門はこれまで通り各地域の電力会社(東京電力、関西電力等)が担当するため、どの小売事業者と契約しても電気の品質や停電の可能性などは変わらず安定供給されます。各電力会社からはその点の説明がなされていますが、電力会社変更の際は気になる人も多いのでしょう。実際に電力会社を変更した後、安定供給されていることに安心する人がいるのかもしれません。

さらに、「電気料金が他のサービス(ガス、電話、ガソリンなど)と一括で請求されるので便利になった」が続きました。公共料金や毎月決まって支払いが必要なものは一括で請求されると管理も楽になりますね。「ポイント制度において貯まったポイントが提携ポイントと交換できたり電気代支払いに使えたりするなどメリットを感じる」と同数の12.1%と、一定数の人がメリットを感じているようです。

今後電力会社を変更する上での検討材料

それではまだ電力会社を変更していない人はどういったことが電力会社変更の検討材料になると考えているのでしょうか。「低価格」52.2%、「わかりやすい料金プラン」50.0%とやはり料金を重視する人が多く、半数を超える人が回答しています。続いて「簡単な切替手続き」38.1%、「簡単な見積システム」30.6%と手続きや見積システムの簡便さが求められていることもわかります。

さらに「安定した電力供給」26.9%とここでも1/4を超える人が電力会社が変わることで電力の品質や供給に不安を感じていることが見て取れます。電力の小売業者が変わっても供給方法に変更がないことのさらなる周知徹底が必要なのではないかと感じられる結果となりました。

さらには「他のサービス(ガス、電話、ガソリンなど)とのセット割引」11.9%、「電気代と他のサービス(ガス、電話、ガソリンなど)との一括請求」・「ポイント制度の充実(提携ポイントとの交換、電気代支払い利用など)」いずれも8.2%、とこの辺りが電力会社変更条件のポイントだと言えそうです。

電気について

最後に電気についていくつか質問しました。東京都、大阪府、愛知県での回答率とあわせてみてみましょう。

「電気代や使用量は毎月把握している」について尋ねたところ38.5%の人が把握していると答えました。最も多かったのは愛知県で東京都や大阪府よりも8%程度高くなりました。

「使っている電力の発電方法が気になる」については東京都が最も高く、大阪府や愛知県を8%程度上回りました。2011年の東日本大震災による福島第一原子力発電所事故は多くの人に影響を与えています。原子力による発電なのか、火力・水力による発電なのか、また地球の環境のことを考え再生可能エネルギーによる発電なのか、そういったことを気にする人が多いのでしょう。さらに「電力使用制限のニュースには敏感になる」についても東京都が他地域の2倍程度の12.2%となりました。東日本大震災後には多くの発電所の停止などによる電力不足で東京電力管内では電力使用制限を経験しました。関西電力でも原子力発電所停止により節電の時期はありましたが、東京に住む人はより鮮明に記憶していると言えるかもしれません。

「太陽光発電を自宅で行っている/検討している」は愛知県が他を6%程度上回っています。愛知県は年間の日照時間が比較的に長いこと、さらには土地面積が広いこともあり東京や大阪と比較すると戸建て比率も高く太陽光発電に向いているのですね。加えて人口が多いこともあり実際に住宅用太陽光発電施設の導入件数は全国1位となっています。

「電力の自由化で電力会社が自由に選べるようになったことに好意的である」のは東京都が最も高く、愛知県とは10%以上差がつきました。現状では首都圏には他地域よりも多くの会社が電力を供給していることから、この結果には電力会社を選ぶ上での選択肢の豊富さが関係していると言えそうです。

一方、「電気についてあまり考えたことはない」と答えた人は全体で19.0%となりました。中でも大阪府が23.9%とほかの地域を上回っています。他の項目でも東京都、愛知県と比較すると数値がそれほど大きくなく、差し当たり電気を取り巻く環境についての心配や不満が少ないのかもしれませんね。

東京電力や関西電力、中部電力といった旧一般電気事業者もガスとのセット割引やポイントサービスなど魅力的な料金プランやサービスを打ち出しています。一方で他業種とのセット割引や再生可能エネルギーによる発電などこれまでにないプランがあるのは新電力会社の魅力です。

電力会社の変更はほとんどのケースで自分では解約手続きをする必要がなく、それほど面倒ではないようです。ただその辺りの理解が不十分であることも電力会社変更にブレーキをかけているかもしれません。

家族人数やライフスタイルに合わせて電力会社やサービスを考えてみると、経済的なメリットやこれまでとは違った便利なサービスが受けられるようになったりと生活が少し変わるかもしれません。最近電力自由化に関するニュースは一段落したように思いますが、身近な電気の契約について温暖化などの地球環境のことも含めて今一度考えてみてもよいのかもしれません。

調査概要

東京・大阪・愛知1都1府1県の30~59歳(男女・既婚・子供有)のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 200(東京都74、大阪府67、愛知県59)
調査期間 2019年5月30日~5月31日
調査方法・内容 電気と電力会社との契約について1. 契約している会社について(東京電力/東京ガス/関西電力/大阪ガス/中部電力/東北電力や中国電力などその他の旧一般電気事業者/東邦ガス/JXTGエネルギー(ENEOSでんき、myでんき)/昭和シェル石油(選べる電気)/楽天エナジー(楽天でんき)/ HTBエナジー(H.I.Sのでんき)/ソフトバンク(おうちでんき、自然でんき)/サイサン(エネワンでんき)/ Looop(Looopでんき)/東急パワーサプライ(東急でんき)/ジェイコム(J:COM 電力)/ KDDI(auでんき)/あしたでんき/みんな電力/ @niftyでんき/エネット(太陽のでんき(パートナー:NTTスマイルエナジー)、じぶん電力(パートナー:日本エコシステム)/ F-Power(ピタでん)/その他/わからない より)単一回答、2. 電力自由化に伴い世帯の契約している電力会社を変更したか(変更した/変更していない/わからない より)単一回答、3. (電力会社変更経験者に)変更した感想(電気料金が安くなった/思っていたほど電気料金が安くならなかった・高くなった/電力は安定供給されていて問題がない/停電することが増えた/電力供給が不安定になった気がする/再生可能エネルギーを利用できることになり環境に良いことができたので満足している/電気料金が他のサービス(ガス、電話、ガソリンなど)と一括で請求されるので便利になった/Webサービスやアプリなどで昨年の消費量や他世帯平均と簡単に比較できて役立っている/住宅設備・家電などの修理サービスや水回り・鍵トラブルなどの駆けつけサービス、くらしの見守りサービスなどこれまでの会社にないサービスが役立っている/会社のWebサイトやLINEなどの会員コンテンツやコラムなどの情報が役立っている・楽しい/ポイント制度において貯まったポイントが提携ポイントと交換できたり電気代支払いに使えたりするなどメリットを感じる/電力や電気について考える機会となり良かった/総合的に見て電力会社を変えて良かったと思う/電力会社を変えたが特にメリットは感じていない/以前の電力会社の方が良かった/あてはまるものはない(排他) より)複数回答、4. (電力会社変更未経験者に)電力会社を変更する検討材料になると思われるものについて(簡単な見積システム/わかりやすい料金プラン/簡単な切替手続き/低価格/他のサービス(ガス、電話、ガソリンなど)とのセット割引/安定した電力供給/電気代と他のサービス(ガス、電話、ガソリンなど)との一括請求/Webサービスやアプリなどで消費電力や他世帯平均との比較サービス/住宅設備・家電などの修理サービスや水回り・鍵トラブルなどの駆けつけサービス、くらしの見守りサービスなどの提携生活関連サービス/WebサイトやLINEなどの会員コンテンツやコラムなどの情報の充実/ポイント制度の充実(提携ポイントとの交換、電気代支払い利用など)/再生可能エネルギーについての理解と納得/検討しようとは思わない(排他)/あてはまるものはない(排他) より)複数回答、5. 電気についての考え(電気代や使用量は毎月把握している/使っている電力がどのように発電されているのか気になる/電力使用制限のニュースには敏感になる/電気使用量と温暖化の関係について考えたことがある/太陽光発電を自宅で行っている・検討している/電力の自由化(電力会社が自由に選べるようになったこと)について好意的である/電気についてあまり考えたことはない(排他)/あてはまるものはない(排他) より)複数回答にて回答を得た。
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