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第82回:ICT(情報通信技術)を用いたサービスについての調査(2)

前回はICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)を用いた「1.高齢者ドライバー見守りサービス」、「2.高齢者住居見守りサービス」 [1]といった見守りサービスについての40代以上の方の回答結果をお伝えしました。今回はひき続いて下記の「3.地域医療ネットワークシステム」と「4.健康ポイント制度」についてお伝えします。

3.地域医療ネットワークシステム
4.健康ポイント制度
3.4.サービス理解

2つのサービスについて理解できたかどうかを尋ねてみるといずれも6割程度の人が理解できたと答えました。一方、あまり理解ができないという回答は1割程度となりました。
各サービスについて「理解できた」と答えた人が持つ印象について見ていきましょう。

地域医療ネットワークシステム

地域医療ネットワークシステムについて

まずは地域医療ネットワークシステムについてみてみましょう。医療機関における医療記録データが行政や他の医療機関に共有されることで、例えば専門性の高い高度医療機関と地域の医療機関で協働して診療に当たることができるようになります。また救急搬送時の体質や既往症などの確認に関する時間が短縮されます。緊急時には本人や周囲の人が正しい判断が難しい場合があることを経験した人もいるでしょう。最初に本人が登録することで、このような場合に手間や行き違い、誤った判断による間違いが起こる可能性を低くしてくれるサービスです。 

6割を超える人が「このサービスに興味がある」と答え、「このサービスは社会にとって有用だと思う」と答えた人は7割を超えました。一方で、「このサービスを利用したい」と答えた人は5割、「このサービスを周囲にすすめたい」と答えた人は5割をきっています。この「興味」「有用」と「利用」「推奨」の差にこのサービスを広めていくための課題があるといえるでしょう。

年代別利用意向(地域医療ネットワークシステム)

ここで利用意向を年代別に見てみたいと思います。「このサービスを利用したい」について「非常に当てはまる」、「やや当てはまる」と答えた人は40代、50代ではそれぞれ6割近くに上ります。しかし、60代以上については4割以下となっています。

懸念・不安点(地域医療ネットワークシステム)

さらに「懸念・不安点」について尋ねた結果を見てみます。「このサービスによって得られるメリットが感じにくい」と答えた人は1割にも満たず、メリットを感じている人は非常に多いと言えます。しかしその一方で「個人情報流出などのセキュリティ面での不安」が4割近くに上り、「サービス利用者へのプライバシーへの懸念」が2割を超えています。
既往症などの非常に個人的で重要な情報の保護、また個人情報についてのセキュリティについての不安・懸念が高いことがわかります。

健康ポイント制度

健康ポイント制度について

続いて健康ポイント制度について見てみましょう。高齢化社会に伴い健康保険組合解散の危機も叫ばれている昨今、国民健康保険でも財政基盤の立て直しのため、今春より財政運営の主体が市町村単位から都道府県単位に変更になりました。住民や企業で働く人たちが日々の健康活動の促進に取り組むことで生活習慣病の予防や抑制が可能になると、医療費の削減が期待できます。高齢化社会においてはこの医療費削減は自治体にとっても非常に大きな課題です。しかし健康のための日々の運動の大切さは認識していても続けることの難しさは誰もが実感しているところではないでしょうか。

日々、楽しく活動でき、またその活動を記録することができれば自分で成果を確認でき、さらにそれがポイント化され好きな商品という「ご褒美」に交換できたら、三日坊主も克服できるかもしれません。

「このサービスに興味がある」、「このサービスは社会にとって有用だと思う」はいずれも6割近くに上りましたが、「このサービスを利用したい」は5割となりました。

年代別利用意向(健康ポイント制度)

では利用意向について年代別に見てみましょう。利用したいと回答した人は40代の5割がもっとも多く、年齢を増すごとに徐々に減少し、60代では4割を超える程度にとどまりました。40代は健康を気にし始める年齢にさしかかり、またまだ元気でポイントをためやすい年齢であることもあり、他の年代より「非常に当てはまる」と回答した人が多いのかもしれません。

懸念・不安点(健康ポイント制度)

懸念、不安に感じる点については「個人情報流出などのセキュリティ面での不安」、「サービス利用者へのプライバシーへの懸念」が多いながらもいずれも地域医療システムに比べると低くなっています。一方で「このサービスによって得られるメリットが感じにくいは2割近くに上っています。日々の運動の必要性を感じていない人にはメリットを感じにくいこともあるでしょうし、健康ポイント制度といった仕組みにまだ馴染みがない人が多いのかもしれません。

地域医療ネットワークと比較すると「興味」「有用」と回答した人が少なく、懸念・不安点をみると要因は「メリットを感じにくい」ことにあるように思えます。メリットを感じなければ他の懸念・不安点を取り除いても利用者を増やすことは難しいといえます。まずはメリットを感じるサービスにしていく、またメリットを伝えていくことが課題と言えるでしょう。

人生100年時代と言われています。我々の健康は自分で管理していかなければなりません。しかし、状態や細かい数値を把握して、必要な折に正確に伝えることは難しいことです。健康寿命を全うするには日々楽しく健康活動を行う必要もあるでしょう。それらの場面でパソコンはもちろんのこと、タブレットやスマホに加え、スマートウォッチを始めとした身に着けて携帯できる様々な機器のICT技術が助けてくれるのではないでしょうか。機器そのものやセキュリティに関する技術も日々進化しています。プライバシーに関する関係者のリテラシーも向上していくでしょう。私たち一人ひとりが今一度意識を高め、ICTを上手に使って高齢化社会を楽しく過ごしていきたいものですね。

調査概要

全国40代以上のインターネットユーザーから回答を得た。

サンプル数 300
調査期間 2018年5月22日~5月23日
調査方法・内容 ICT(情報通信技術)を用いたサービスについて「メリット地域医療ネットワークシステム」、「健康ポイント制度」について(それぞれ「このサービスについて理解できた」/「このサービスに興味がある」/「このサービスは社会にとって有用だと思う」/「このサービスを利用したい」/「このサービスを周囲にすすめたい」/「当てはまるものはない」)、5. 懸念・不安に思われる点として(「このサービスによって得られるメリットが感じにくい」/「サービス利用者のプライバシーへの懸念」/「個人情報流出などのセキュリティ面での不安」/「サービス利用までの手続きが面倒」/「その他」/「特に懸念・不安に感じる点はない」より)複数回答にて回答を得た。