- ブランド戦略通信│トライベック・ブランド戦略研究所 - https://japanbrand.jp -

第77回:ふるさと納税に関するイメージ調査

2008年より開始されたふるさと納税は、生まれ育った地域や自分が応援したい地域に寄附する仕組みです。ふるさと納税を行うことで現住地域に納める住民税と国に納める所得税の一部が控除されます。また寄付を行った自治体の特産品などの返礼品が送られてくることも多く、話題となりました。開始より9年が経ったふるさと納税ですが、みなさんはどのようなイメージを持っているのでしょうか。今回は総務省の発表でもふるさと納税控除適用者がもっとも多い東京都在住の方にたずねてみました。

納税経験とイメージ

納税経験やイメージ

まずは納税経験についてです。「納税経験はないが、興味はある」27%、「ふるさと納税の制度をよく知らない」22%、「納税の経験がなく、興味もない」12%、「興味はあるが、億劫で寄附したことはない」3%となり、重複回答があるものの、ふるさと納税経験のない人が「ふるさと納税経験があり、今後も寄附したい」12%を上回っています。ふるさと納税について知ってはいてもその内容や、実際にどうしたらよいのかについてはまだ十分に周知されていないことがうかがえます。

制度を含めたイメージとしては「一部の自治体に寄附金が集中し、自治体に格差が生まれる懸念がある」10%、「返礼品目当てに寄附することにあまり賛成できない」9%といった回答も一定数あり、「ふるさと納税の趣旨・制度に賛成している」3%、「ふるさと納税の返礼品が嬉しかった」3%といった肯定的イメージの回答を上回りました。

ふるさと納税で寄附したい自治体

寄附をしたい自治体

それではどのような自治体に寄附をしたいと考えているのでしょうか。「魅力的な返礼品のある自治体」がもっとも多く29%でした。「返礼品が選びやすい自治体に寄附したい」が9%、「何度も返礼品が受け取れる自治体に寄附したい」3%など返礼品がふるさと納税の大きな動機となっていることがわかります。地方自治体では特設サイトを設けたり、ふるさと納税サイトに自治体の返礼品を掲載したりしてサイトから簡単に寄附ができるようにしています。

また、「自分や家族の生まれ故郷に寄附したい」20%、「災害復興のために寄附したい」15%、「住んでいる自治体に寄附したい」13%といった意見も多く見られました。総務省ふるさと納税ポータルサイトによるとふるさと納税の意義の一つとして「生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度であること。それは、人を育て、自然を守る、地方の環境を育む支援になります。」と記載されています。制度としても応援したい自治体の力になれる制度となっていることがわかります。

興味のある返礼品

返礼品として興味があるもの

返礼品として興味があるものをたずねてみると、肉類、魚介類、米・パン類、果物類、加工食品などその地域で生産されるなどものなど普段なかなか手に入らない食品に人気が集まっていることがわかります。食品の他にはその地域で使える旅行券やその地域で催されるイベント招待、地元の店舗で使える食事券なども人気です。総務省のサイトではふるさと納税の意義としてさらに「自治体が国民に取組をアピールすることでふるさと納税を呼びかけ、自治体間の競争が進むこと。それは、選んでもらうに相応しい、地域のあり方をあらためて考えるきっかけへとつながります。」ともうたっています。返礼品として望まれているものを知ることで地元の名所、名産、産業をどうアピールしていくかの参考になるかもしれません。

ふるさと納税の使い道

使い道

ふるさと納税の使い道として賛同するもので多かったのは「まちづくり」、「災害復興」、「医療福祉」、「子育て・教育」でした。

「災害復興」としては、ふるさと納税の仕組みを使って被災した自治体に直接寄附をすることが可能です。代理で控除申請に対応してくれる別の自治体を通して寄附をすることができるところもあり、被災した地域に「何かしたい」というそれぞれの気持ちにちょうど良い形で寄附ができることで、支援のハードルを下げてくれるものになっているかもしれません。災害から少し時間が経過してからも継続的にその地域の復興を応援することができます。さらに「医療福祉」、「子育て・教育」はそこに住む人々が現在、そして未来に充実した生活を送ってほしいというエールのように思えます。

ふるさと納税は寄附をする人がその使い道を選べる自治体も多くなっており、税金の使い方をあらためて意識する良い機会にもなっているようです。いずれもそのまち、そこに住む人が輝くために使ってほしいものですね。

寄附した経験のある自治体にもったイメージ

納税を経験した自治体のイメージ

最後に寄附した経験のある自治体にもったイメージをたずねました。「親近感が湧いた」50%、「応援したい」29%が多く、「旅行してみたい」、「その自治体のことを知るきっかけになった」、「対応がよくイメージが良くなった」がいずれも14%とその自治体に対するイメージが大きくプラスに方向に働いていることがわかります。さらに「今後も寄附したい」43%と一度寄附をした人の半数近くがまた寄附をしたいと感じているというのも興味深いです。「返礼品が期待したものとは異なっていたのでイメージが悪くなった」、「返礼品に不備がありイメージが悪くなった」と答えた人はいませんでした。

きっかけはたとえ返礼品だったとしても、上記の結果のようにふるさと納税によってこれまで以上にその自治体を身近に感じ、応援したくなるようです。最近では、寄附を集めるため高額返礼品やプリペイドカードや商品券が出るなど返礼品競争の過熱が問題となり、総務省により全国の都道府県知事宛に返礼品の価格割合を3割以下にするなどの通知が出され、自治体による対応がなされていることがニュースとなっています。制度についての課題は残されていますが、ふるさと納税はこのような人々の自治体を応援したいの気持ちを比較的簡単に届けられる制度ですので、地方自治体には今後も様々な形で地域の魅力を発信してもらいたいですね。

調査概要

東京都在住30~59歳のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2017年6月22日~6月23日
調査方法・内容 ふるさと納税に関するイメージについて(1. 納税経験やイメージについて(「ふるさと納税の経験があり、今後も納税したい」/「ふるさと納税の経験はあるが、今後しばらく納税する気はない」/ふるさと納税の経験はないが、興味はある」/「ふるさと納税の経験がなく、興味もない」/「ふるさと納税に興味はあるが、億劫で納税したことはない」/「ふるさと納税の趣旨・制度に賛成している」/「ふるさと納税の返礼品が嬉しかった」/「返礼品目当てに納税することにあまり賛成できない」/「一部の自治体に寄付金が集中し、自治体に格差が生まれる懸念がある」/「ふるさと納税の制度をよく知らない」/「あてはまるものはない」、2.寄附する自治体について「住んでいる自治体に寄附したい」/「自分や家族の生まれ故郷に寄附したい」/「以前住んでいたことのある自治体に寄附したい」/「災害復興のために寄附したい」/「魅力的な返礼品のある自治体に寄附したい」/「返礼品を選びやすい自治体に寄附したい」/「何度も返礼品が受け取れる(複数回同じ返礼品が選べる、他にも魅力的な返礼品がある)自治体に寄附したい」/「定期便や一括申込など申込作業回数が少なく済む自治体に寄附したい」/「返礼品のカタログやポイント制がある自治体に寄附したい。」/「返礼品を贈り物対応(送付先変更や「のし」対応など)してくれる自治体に寄附したい」/「あてはまるものはない」、3. 返礼品として興味があるものについて「肉類」/「魚介類」/「米・パン類」/「麺類」/「果物類」/「野菜類」/「卵・乳製品」/「加工食品(瓶詰・缶詰・総菜・レトルト・納豆・ジャムなど)」/「調味料」/「酒類」/「飲料(酒類以外)」/「菓子」/「電化製品」/「旅行券・イベント・チケット」/「雑貨・日用品(食器・調理器具・タオル・紙製品・寝具・インテリアなど)」/「花・観葉植物」/「カタログ」/「あてはまるものはない」、4. 使い道として賛同するものについて「子育て・教育」/「環境保全」/「観光・定住促進」/「まちづくり」/「医療福祉」/「農林・漁業」/「災害復興」/「自治体に任せたい」/「使い道については興味がない」/「あてはまるものはない」、5. 寄附した経験のある自治体について「親近感が湧いた」/「今後も寄附したい」/「旅行してみたい」/「住んでみたい」/「応援したい」/「その自治体のことを知るきっかけになった」/「対応が良くイメージがよくなった」/「返礼品が期待したものとは異なっていたのでイメージが悪くなった」/「返礼品に不備がありイメージが悪くなった」/「あてはまるものはない」)より複数回答にて回答を得た。