ブランド戦略通信

ブランドなんでもランキング

第72回:環境問題と企業の環境コミュニケーション活動について

2015年12月、温暖化防止のための国際会議「COP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)」がパリで開催されました。「パリ協定」が採択され、アメリカや中国の2大排出国を含む196カ国が温室効果ガスの削減の責務を負うこととなりました。地球の平均気温上昇を産業革命前より2度未満(努力目標としては1.5度以内)に抑えることとし、5年ごとに各国の目標を見直すことなど平均気温の上昇で起きる生態系の変化や海面上昇、異常気象といった様々な問題を食い止めるため、協力し合うことに各国が合意したことは非常に大きな成果であるといわれています。そこでみなさんは環境問題と企業における環境活動をどのように捉えているのか尋ねてみました。

環境問題について

現在のような経済活動をそのまま続けた場合、100年後には世界の平均気温は4度前後上昇すると予測されているそうです。その結果海面上昇によって南太平洋に浮かぶキリバス、ツバル、またインド洋のモルディブなどの島国は存亡の危機に瀕すると言われていますし、日本でも3,400万人の住む地域に影響が出るといわれています。異常気象やインフラ機能の停止、熱波による疾病、また干ばつによる食料不足などもたらされる影響も深刻です。まずは環境問題についてどのように考えているか尋ねました。

環境問題について

「気になっている人」は37%ですが、20%の人が「将来を考えると不安である、深刻に受け止めている。」としています。さらに18%の人が「自分でできることを考え実行している。」と答えています。このようなことから5人に1人は単に気になるにとどまらず深刻に捉え行動にも移していることがうかがわれます。

また、「政府、マスコミ、教育現場など国をあげてもっと啓発すべきだ。」、「自分だけが意識しても大した効果はない。」と答える人がそれぞれ11%、さらに「各企業単位で解決に向けてもっと取り組むべきだ。」と答える人が10%と、もはや個々人が意識しているだけでは間に合わない、より大きな力が必要であると考えている人が一定数いることも垣間見えます。

知っている環境用語

知っている環境用語

ところで、新聞や雑誌、Webサイトなど環境問題が話題になっている場面で使われている単語はどれくらい一般化しているのでしょうか。いくつか例を挙げて尋ねてみました。
現在、主なエネルギー源となっている石油・石炭などは限りがある資源です。これに対して太陽光や水力、風力、バイオマス(再生可能な、生物由来の有機性資源)、地熱などは利用しても再生が可能であり、資源に限りがないエネルギーであるため「再生可能エネルギー」として注目が高まっています。この「再生可能エネルギー」はニュースなどで耳にする機会も多いのでしょうか。55%の人が知っていると回答しました。

続いて47%の人が知っていると答えたのが「京都議定書」です。日本の地名が入っていることも手伝ってか、最近(昨年12月に)行われたCOP21より高い認知度を誇ります。とはいえCOP21も連日ニュースでも取り上げられ、39%の人が知っていると答えています。
これら認知度の高い3つの用語に対し、「3R」、「サステナビリティ」、「カーボンニュートラル」は10%台の認知度で、それほど高くはないというイメージです。

ちなみに「3R」は英語のReduce(リデュース=ごみの出る量ができるだけ少なくなるようにものを製造、販売すること)、Reuse(リユース=使用済みになっても、その中で再度使えるものはくり返し使うこと)、Recycle(リサイクル=ごみを資源としてできるだけ再生利用すること)の頭文字で、「サステナビリティ」は主に自然環境や資源開発で使われている現在から将来にわたってそれを持続することが可能であるという概念、「カーボンニュートラル」は例えば植物の成長段階における光合成よって吸収される二酸化炭素の量と植物の焼却によって排出される二酸化炭素の量が相殺され、二酸化炭素の排出量と吸収される量がプラスマイナスゼロとなることを意味します。

一方であまり知られていない用語としては「カーボンクレジット」、「GHG」、「モーダルシフト」があります。これらは専門用語の色合いが濃く耳にする機会も少ないことが関係しているように思います。「カーボンクレジット」とは地球温暖化の原因ともされている二酸化炭素の排出枠において企業・政府間で取引することができるとされており、その取引の際の削減・吸収量のことを意味します。「GHG」は最近日本でも使われている英語(Greenhouse Gas)で温室効果ガスを意味し、「モーダルシフト」は省エネルギーや二酸化炭素排出削減などのためにトラックや貨物機による輸送を貨物列車・貨物船による輸送で代替、転換を図るといった意味です。

企業の環境活動について

企業の環境活動について

企業の環境活動についてはどのように考えているのでしょうか。もっとも多かったのは「すべての企業は積極的に活動すべきだ。」で40%の人が支持しています。そして21%の人が「環境活動は企業イメージ向上に関係する。」と答えており、15%の人が「企業の環境活動について興味がある。」と答えています。

一方で「企業の環境活動は本業とは別に評価する(または)評価している。」、「企業の環境活動について具体的に知っているものがある。」はそれぞれ9%と多いとは言えず、企業が環境活動を行っているということ自体、まだ浸透しているとは言いがたい状況であると言えるかもしれません。

良いと思う企業の環境活動について

良いと思う企業の環境活動

それではどういった活動が支持されるのでしょうか。こちらもいくつか例を挙げて聞いてみました。サントリーは美しい水を守る活動とともに次世代環境教育として「水育」を行っています。森や水に触れる自然体験プログラムや小学校への出張授業、Webサイト上のキッズコンテンツなど包括的な「水育」を2004年以来10年以上に渡って行ってきました。企業のキャッチコピーにもなっている「水と生きる SUNTORY」からも親しみのある人が多いのでしょうか、44%の人の回答が集まりました。

JTは「たばこ」「医療」「食品」などそれぞれの商品が自然の恵みによって成り立っているという想いにより森林保全活動を進めています。社員や家族も参加、地元の森林組合や住民の協力も得ながら全国8ヵ所の森を育てているそうです。JTは分煙のCMなども行っています。環境問題と結びつきやすいこともあるのでしょうか、34%の人が支持しています。

そのほか、根を張る範囲が広く、保水力のある強い地盤が育つとされているどんぐりの森を社員や家族、地域の人などの活動で増やして行くTOTOの「どんぐりの森づくり」、世界の無電化地域に10万台のソーラーランタンを届けるパナソニックの「ソーラーランタン10万台プロジェクト」など企業と関連性のある、またわかりやすいプロジェクトが支持されています。また1999年から続く東京海上日動のマングローブの植林活動「マングローブワールド」を始めいずれの取組みも数年に渡る長期のプロジェクトとなっており、企業が環境問題にかける本気の度合いが見て取れます。

しかし、先の質問でも答えているように具体的な企業の環境活動を知っている人はまだまだ少なく、個々人の環境への意識、また企業イメージに与える影響は大きいとは言えないのが少々残念です。

企業が積極的に自社の環境活動をPRすることについて

企業が積極的に自社の環境活動をPRすることについて

それでは企業が自社の環境活動を積極的にPRすることについてはどのように考えているのでしょうか。半数を超える54%の人が「必要なことだと思う。」と答えました。

また「企業のブランド価値が向上すると思う。」(23%)、「製品PRとは別のPR効果があると思う。」(21%)、さらに「環境活動を積極的に行っているとわかればその企業の製品を買ってみたい。」(10%)という人もおり、環境活動をPRすることによって企業のブランド価値向上に、ひいては間接的に本業へのPR効果まであると考える人が少なからずいることがわかります。

企業が環境活動をあまり積極的にPRするのはどうかという意見もあるかもしれませんが、このアンケート結果を見るかぎり、好意的に受け止められることが多いようです。そして、そのような活動を無駄と考える人はほとんどいないと見られます。企業は環境活動を行うだけでなくそれを多くの人に認知してもらう活動にも大きな社会的意義があると考えられるのではないでしょうか。

調査概要

全国20~59歳男女のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 調査期間:2016年3月23日~3月24日
調査方法・内容 環境問題と企業の環境活動について(1. 環境問題についてどのように考えているか(「気になっている。」/「将来を考えると不安である、深刻に受け止めている。」/「自分でも何かできることはないか考え実行したいと思っている。」/「自分でできることを考え実行している。」/「家庭や職場で、または友人たちと話題にすることがある。」/「政府、マスコミ、教育現場など国をあげてもっと啓発すべきだ。」/「各企業単位で解決に向けてもっと取り組むべきだ。」/「あまり気にしていない、考えたことがない。」/「自分だけが意識しても大した効果はない。」/「当てはまるものはない。」より複数回答)、2.内容を少しでも知っている言葉について(「サステナビリティ(持続可能性)」/「GHG」/「京都議定書」/「COP21」/「カーボンニュートラル」/「カーボンクレジット」/「モーダルシフト」/「3R」/「再生可能エネルギー」/「知っているものはない。」より複数回答)、3. 企業の環境活動について(「すべての企業は積極的に活動すべきだ。」/「企業の環境活動について興味がある。」/「企業の環境活動は本業とは別に評価する(または)評価している。」/「環境活動は企業イメージ向上に関係する。」/「企業の環境活動について具体的に知っているものがある。」/「当てはまるものはない。」より複数回答)、4. 企業の環境活動について良いと思うもの(「Bird Branch Project(キヤノン)」/「ソーラーランタン10万台プロジェクト(パナソニック)」/「ITエコ実験村(日立製作所)」/「どんぐりの森づくり(TOTO)」/「JTの森(JT)」/「『空気をはぐくむ森』プロジェクト(ダイキン工業)」/「こどもエコ絵画コンクール(ブリヂストン)」/「水育(サントリー)」/「若武者育成塾(アサヒ)」/「マングローブワールド(東京海上日動火災保険)」より複数回答)、5. 企業が積極的に自社の環境活動をPRすることについて(「必要なことだと思う。」/「企業のブランド価値が向上すると思う。」/「製品PRとは別のPR効果があると思う。」/「環境活動を積極的に行っているとわかればその企業の製品を買ってみたいと思う。」/「進んで行うことで産業界全体の環境活動が向上すると思う。」/「活動をするのはよいがPRは必要ない。」/「本業に専念すべきで活動もPRも無駄だ。」/「当てはまるものはない。」より複数回答にて回答を得た。
印刷する 印刷する