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第64回:「ら抜き」は気になる?企業が使用する少し気になる表記

Webサイトやメールマガジン、ブログ、twitter、Facebookなど企業が発信するツールが多様化し、企業が顧客と直接つながる機会が増えています。それらの中で本来日本語として誤っているものや、文法的に気になる表記を目にした場合、人々はどのような印象を受けるのでしょうか。今回は「ら抜き言葉」「二重敬語」「行頭の句点」「誤変換」「略語表記」について調べてみました。結論を先に述べると、
・ 「ら抜き言葉」は公式な文書では避けた方が無難
・ 「二重敬語」は容認されることが多い
・ 「行頭の句点」はできるだけ対応した方が良い
・ 「漢字の誤変換」は絶対に避けるべき
・ 「略語表記」はその言葉の定着度による
です。なお、事例はすべて架空のものです。

デジタルビデオカメラの商品サイトでのら抜き言葉

デジタルビデオカメラの商品サイトにて「綺麗に撮れる、見れる」のら抜き言葉が記載されていたらどのような印象を受けるのでしょうか。「ら抜き言葉」とは「見る」のような上一段活用動詞、「食べる」のような下一段活用動詞などにおいて、「見れる」「食べれる」と綴られるものです。本来は「見られる」「食べられる」と助動詞「られる」が入るはずですね。この助動詞「られる」には可能のほかにも尊敬や受動の意味でもまったく同じように使われるので区別するためにら抜き言葉が広まったと言われています。

今回は「見れる」にら抜き言葉が出ていますが、「特に何とも思わない」が58%と半数以上を占めています。これに対して、「違和感がある」人はその約3分の1の19%と少なくなります。気にしない人が多いですが、5人に1人は気にする人がいるようです。

さらに、10人に1人は「幼稚な印象を受けた」12%とかなりのマイナスイメージを抱くようです。最近では話し言葉としては問題視されることも少なくなってきていると言われるら抜き言葉ですが、やはり企業が書き言葉で使用するのは避けたほうが良さそうですね。

自動車会社のメールマガジンでの二重敬語の文章

では、自動車会社のメールマガジンで「…新CMはもうご覧になられたでしょうか。」という二重敬語の文章を見つけたらどうでしょう。

二重敬語とは一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを言います。「ご覧になる」はすでに尊敬語になっています。そこへ「なられる」という尊敬の助動詞がついているので二重敬語になりますね。

「特に何とも思わない」が62%と非常に多くなっています。これに対して、「違和感がある」はやはりその3分の1の20%と少なくはなりますが一定の回答があります。しかし、ら抜き言葉とは異なり、「丁寧な文章だと思った」と感じる人も15%とそこそこいます。文法的には誤りであっても丁寧さに肯定的な印象を受ける人もいるようです。それだけ耳慣れている使い方なのかもしれませんね。

ニュースサイトでの行頭に句点のある文章表記

続いてはニュースサイトでの「、日経平均は15,000円と…」と行頭に句点のある文章表記についてです。ニュースサイトやブログなどで実際に目にする機会も多いと思います。

「読みにくく感じた」が43%と最も多く、「レイアウトが気になった」も29%、さらには「この記事はこれ以上読みたくなくなった」8%、「サイト運営者の信用が落ちた」7%、「サイトの信用が落ちた」5%など多くの人がマイナスの印象を受けています。このように行頭に句点などが現れるのはブラウザの禁則処理上の問題であることも少なくありません。ところが「使用しているWebブラウザを変更したくなった」、「使用しているWebブラウザの信用が落ちた」人より「サイト運営者の信用が落ちた」、「サイトの信用が落ちた」人の方がかなり多い点は気になります。サイト運営者側ですべてのブラウザやデバイス向けに対応するのは難しいかもしれません。しかし主要なブラウザではどのような処理になっているかをあらかじめ確認し、可能な限り対応しておくほうが良さそうです。

Webマーケティング会社セミナーの参加者募集ページでの漢字誤変換の表記

さて、Webマーケティング会社セミナーの参加者募集ページで「…集客できる確立は高くなります。」と漢字誤変換の表記を目にしたらどのような印象を受けるでしょうか。

ほぼ半数の人が「誤字が気になった」と答えています。 一方で、「確率」を「確立」とする誤変換は経験した人も多いのかもしれません。「特に何とも思わない」という人も27%とそれほど少なくはありませんでした。しかし、「違和感がある」人は22%、「この会社の信用が落ちた」は17%、「この会社を利用しようとは思わなくなった」は13%と否定的な回答も一定数ありました。

家電メーカーサイトの製品説明ページでの略語の表記

最後に家電メーカーサイトの製品説明ページで「…省エネ設計。新技術で優れたコスパを実現。」と日本語として正しい表記とは思われない略語が使われていたらどのような印象をもつのか聞いてみました。

「省エネ」は「省エネルギー」、「コスパ」は「コストパフォーマンス(費用対効果)」の略語となっています。企業サイトの製品説明にこれらの略語が使われていることについて「特に何とも思わない」39%、「現代的な感じがする」20%、さらには「軽快な感じがして好感がもてた」6%と好意的に受け取った人もいるようですが、「略語が気になった」24%、「軽い感じがして会社の信用が落ちた」14%、「違和感がある」11%、「この会社のものは選びたくなくなった」7%と否定的に捉えている人も少なくはありません。

「省エネ」は本来の「省エネルギー」よりも定着しており、財団や電力会社、ガス会社も公に「省エネ」の表記を使用しています。一方の「コスパ」はここ数年で、認知されるようになってきており人々が使用するようになってまだ日が浅いため両者が与える印象にも違いがあるかもしれません。

調査概要

全国20歳以上男女のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2014年3月17日~3月18日
調査方法・内容 企業のWebサイトやメールマガジンでの表記について受ける印象を(デジタルビデオカメラの商品ページで「綺麗に撮れる、見れる」のら抜き表現(違和感がある/文法的な誤りが気になった/幼稚な印象を受けた/特に何とも思わない/テンポが良く軽快な印象を受けた/この会社のサイトは読みたくなくなった/この会社の信用が落ちた)、自動車会社のメールマガジンで「…新CMはもうご覧になられたでしょうか。」という二重敬語の文章(違和感がある/特に何とも思わない/丁寧な文章だと思った/この会社を身近に感じた/この会社の信用が落ちた)、ニュースサイトで「、日経平均は15,000円と…」と行頭に句点のある文章表記(読みにくく感じた/この記事はこれ以上読みたくなくなった/レイアウトが気になった/サイトの信用が落ちた/サイト運営者の信用が落ちた/使用しているWebブラウザを変更したくなった/使用しているWebブラウザの信用が落ちた/特に何とも思わない)、Webマーケティング会社セミナーの参加者募集ページで「…集客できる確立は高くなります。」と漢字誤変換の表記(違和感がある/誤字が気になった/この会社を利用しようとは思わなくなった/この会社のサイトは読みたくなくなった/この会社の信用が落ちた/特に何とも思わない)、家電メーカーのサイトの製品説明ページで「…省エネ設計。新技術で優れたコスパを実現。」と日本語として正しい表記とは思われない略語が使われていた(違和感がある/略語が気になった/特に何とも思わない/軽快な感じがして好感がもてた/現代的な感じがする/軽い感じがして会社の信用が落ちた/この会社のものは選びたくなくなった)の中から複数回答式で回答を得た。