ブランド戦略通信 │トライベック・ブランド戦略研究所

ブランドなんでもランキング

第61回:企業不祥事と消費者の態度

企業のコンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、未だ企業の不祥事は後を絶ちません。ではこのような不祥事を消費者はどのように受け止めているのでしょうか。今回のなんでもランキングでは不祥事を起こした企業に対する消費者の態度について調べてみました。
なお、今回調査では以下の観点より対象事例を選定しました。
1、商品・サービスが専門性の高い第三者の推奨によって選ばれる企業
2、商品・サービス名と企業名が異なるため企業名が認識されにくい企業
3、他社に乗り換えるためのスイッチングコストが非常に大きい企業

商品・サービスが専門性の高い第三者の推奨によって選ばれる企業の事例

大衆薬は別として、医療用医薬品の選定は事実上医師が行っているといっても過言でないほど、医師が重要な役割を果たしています。ただし、近年は患者が薬局の窓口で購入する際、後発薬など自分が希望する同等品に替えてもらうという選択肢も出てきています。では、いざ自分が選ぶ立場に置かれた場合、一般の人はどのような行動を取ると考えているのでしょう。

ノバルティス ファーマが販売する高血圧治療の降圧剤「ディオバン」について、臨床研究データのねつ造疑惑が起きました。もし自分が降圧剤を処方される立場になったら一般消費者はどうするでしょうか。
最も多いのは「医師の判断に従う」(42%)、次いで多いのは「製品名を見ても(聞いても)わからないので医師に確認する」(20%)と、医師の考え方、ないし説明に判断を委ねようとする人が非常に多いことがわかります。しかし、「患者の立場ではどうしようもない」は10%と少なく、自分の判断を完全に放棄しているわけではないようです。一方、製品名や会社名を自分で調べようとする人も、10%台と割合は高くありませんが、見られます。

では、降圧剤の中でも特にデュオバンが処方された場合はどうでしょう。
さすがに問題になった製品名が出てくると「医師の判断を尊重する」(21%)人が減り、「医師または薬局に確認する」(29%)が増えます。しかし、次に多いのは「気付くことはないだろう」という人です。
医師は患者に薬の説明をすることはあっても製品名を伝えるケースは少ないため、実際の現場ではこの回答のような人が非常に多くなるものと思われます。
一方、決して多くはないものの、「別の薬を出すよう依頼する」(13%)、「今後は処方される薬に注意を払う」(10%)という人が一定数存在する点が注目されます。医療用医薬品の選択も完全に医師任せの世界ではなくなりつつあるのでしょうか。
これに対し、「処方した医師や病院に不信感を抱く」(5%)、「今後は処方した病院を避ける」(3%)は少なく、単に処方しただけで不信感を抱くというより、患者にとって納得できる説明であるかどうかが重要なようです。

商品・サービス名と企業名が異なるため企業名が認識されにくい企業の事例

次に、雑誌の事例を取り上げます。雑誌は出版社名とは異なるタイトルで販売されていることが多く、企業名と商品ブランド名とが必ずしも一致しない典型的なパターンの一つです。
今回は景表法違反で消費者庁から措置命令を受けた秋田書店の事例について消費者の反応を調査しました。

調査の結果、「内容的に欲しいものだったら構わず購入する」(26%)が「内容的にどうしても欲しいものでなければ購入を見合わせる」(18%)を大きく上回りました。
どんな商品でも欲しいものは購入したいし、欲しくないものは購入たくないのが人情ですが、あえて「構わず」購入する、と言っているところが多くの人の気持ちの表れとなっています。一方で「同社も認めておりすでに処分を受けたことなので気にすることではない」(3%)はほとんどいません。気にしないわけではないが、結局は欲しければ買ってしまうというところでしょうか。もっとも、一部の人が抽選でもらえるにすぎない景品は、商品本体の内容を左右するものではないということも関係している可能性があります。
また、「景品に応募することはあり得るが購入判断が左右されることはない」(14%)と「景品に応募することはないので購入判断が左右されることはない」(11%)は拮抗しています。
「出版元に気付かない可能性大」(11%)は先のデュオバンの「気付くことはないだろう」(16%)より小さくなっており、ともに企業名と商品名が異なるケースですが専門性の高い医薬品よりも企業ブランドと商品ブランドの関係が確認しやすい点が関係しているかもしれません。

他社に乗り換えるためのスイッチングコストが非常に大きい企業の事例

次は反社会的勢力との取引が問題になったみずほ銀行です。銀行はほとんど消費者にとって必要不可欠な生活インフラであり、取引銀行を変えるのは多くの人にとってとても大変なことでしょう。
そこで、多くの人は「その後の報道に注意」(44%)し、しばらくは様子見をすることになると考えられます。そして、「個人的な取引を控える」(18%)とする人がいる一方、「何かできることはないかと考えるが、結局何もできないと思う」(18%)人がそれと同じだけいます。そして、「インターネットで詳細を調べる」(10%)は多少いるものの、「ブログやSNSに書く」(1%)までする人は非常にまれです。
関心はあるが様子見をしようとする人が多いのは、スイッチングコストの大きさもありますが、調査時点ではこれからさらに第三者委員会の設置などにより真相究明が進みそうな様相でもあったことも影響しているように思われます。

以上の質問をしたうえで、最後に不祥事を起こした企業に対する各人の態度を尋ねてみました。
「自分がふだん利用していない商品であっても、利用を検討することがあれば注意する」(28%)人が多いようです。「自分がふだん利用している商品がない限りあまり気にしない」(21%)も、言い方は逆ですが、同じような意味合いのことのように受け取れます。また、一方で、それに劣らず率直に「もっぱら自分の必要性に基づいて判断したい」(27%)人が多くみられます。
こうした判断には、不祥事の内容が企業や商品の根源的な部分に関わる部分を含んでいるかどうかも影響するものと思われます。いずれにせよ、「企業名と商品名が結び付きにくい商品については、知らずに利用するかもしれない」(21%)ということはあっても、「政府の役割に期待したい」(11%)、「専門家の判断に委ねたい」(7%)といった政府任せ、人任せの意識の人は必ずしも多くないようです。また「自分がふだん利用しているかどうかにかかわらず気にしない」(2%)というまで無関心な人はほとんどいないようです。

調査概要

全国25歳以上男女のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2013年10月10日~10月11日
調査方法・内容 企業の不祥事事例3件(ノバルティス ファーマの降圧剤「ディオバン」の臨床研究のデータ操作/秋田書店の景表法違反/みずほ銀行の一部提携ローンにおける反社会的勢力との取引)について、それぞれ消費者の態度を尋ねた。

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