ブランド戦略通信

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第47回:製品ジャンルを代表するブランド

市場創造型の革新的ブランドが出ると、その強烈な印象から本来は特定メーカーの登録商標であるブランド名がその製品を含む製品ジャンルの代表であるかのように用いられるようになることがあります。

かつて、昭和の時代には多くの人がコピーを取ることを「ゼロックスする」といったり、携帯カセット音楽プレーヤーのことをウォークマンと呼んだりしたものでした。

製品ジャンルの代表のように用いられることには強いブランドであることを示す象徴的意義があります。

今回はそうしたブランドを取り上げ、日常における一般消費者の用い方を調べてみました。

ヤマト運輸以外の「宅配便」を「宅急便」と呼ぶことがある人は62%

宅急便はヤマト運輸のサービスブランドですが、これを一般名称のように用いている人は62%(「当てはまる」+「まあ当てはまる」)でした。およそ3人に2人というのはかなりの割合ですが、今回取り上げる事例の中では最も低い割合となっています。

いくつか原因が考えられますが、「宅配便」という一般名称が比較的言い易いこと、「宅配便」と「宅急便」の違いがいわゆる豆知識の話題として取り上げられることが比較的多いこと、などが挙げられます。また、単に「荷物を出す」、「荷物を受け取る」などの表現で済ませる機会も多いことがあるかも知れません。

当てはまる40%、まあ当てはまる22%、あまり当てはまらない25%、まったく当てはまらない8%、よく分からない5%


TOTO以外の「温水洗浄便座」を「ウォシュレット」と呼ぶことがある人は83%

次はTOTOの「ウォシュレット」です。これを一般名称のように用いている人は83%もいました。一般名称は「温水洗浄便座」といいますが、この呼び方を知っている人は果たしてどれくらいいるのでしょうか。

宅配便と宅急便の場合と比べ、「温水洗浄便座」はかなりハードルが高いように思われます。仮に知っていたとしても、宅急便と宅配便なら語呂も近く簡単に言い換えられそうですが、「温水洗浄便座」はすらすらと口から出てきづらい言葉のように感じられます。
対して「ウォシュレット」は多くの人から親しまれる、優れたネーミングといえそうです。

当てはまる57%、まあ当てはまる26%、あまり当てはまらない12%、まったく当てはまらない2%、よく分からない3%


旭化成以外の「食品用ラップフィルム」を「サランラップ」と呼ぶことがある人は72%

次は旭化成のサランラップです。これを一般名称のように用いる人はウォシュレットよりは少ない72%でした。一方、まったくそのような用い方をしない人(「まったく当てはまらない」)は11%で、これは今回調査した中で最も多い割合でした。

「食品用ラップフィルム」という一般名称は確かに日常用語として長すぎて言いづらいという面はあると思いますが、これに対しては「ラップ」というとても短くて便利な省略語があるため、これを用いる人が多いためと思われます。それにしても、「ラップ」と呼んでいる人が、「サランラップ」を省略した「ラップ」なのか、はたまた「食品用ラップフィルム」を省略した「ラップ」なのか、どちらの積もりで用いているかはとても興味深いところですが、アンケート結果を見る限り、「サランラップ」の省略語の積もりの人はかなり多いことが推測されます。

当てはまる51%、まあ当てはまる21%、あまり当てはまらない16%、まったく当てはまらない11%、よく分からない1%


はごろもフーズ以外の「ツナ缶」を「シーチキン」と呼ぶことがある人は82%

「シーチキン」ははごろもフーズの登録商標で、一般名称としては「ツナ缶」です。この一般名称は「温水洗浄便座」などと比べるとはるかに思い出しやすく言いやすいはずです。

にもかかわらず、ツナ缶のことを「シーチキン」を呼ぶことがある人は82%と、ウォシュレットとほぼ同じだけいます。

消費者の頭の中には「ツナ缶」=「シーチキン」が深く刷り込まれているのでしょう。

カテゴリーを代表するブランドがカテゴリーの名前のように用いられる典型的なパターンといえそうです。

当てはまる56%、まあ当てはまる26%、あまり当てはまらない11%、まったく当てはまらない7%、よく分からない0%


SANYO以外の「コンパクトデジタルカメラ」を「デジカメ」と呼ぶことがある人は92%

最後はSANYOの「デジカメ」です。これが一般名称のように用いられている背景にはある事情があります。

「デジカメ」は三洋電機の登録商標であるため、同業他社は注意深くこの用語を避けています。たとえばソニーは同ジャンルの製品を「デジタルスチルカメラ」と表記していますし、キヤノンには「デジタルカメラ」の表記はありますが「デジカメ」の表記はありません。

しかし、メディアでは「デジカメ」の用語が特に断りなく用いられているため、一般にはこれが特定メーカーの登録商標とは意識されずに用いられているのです。

もしこの用語が使えなかったらどうなるでしょう。とても不便なはずです。何といっても「コンパクトデジタルカメラ」は文字数が多いのでそのままでは字数制限のあるメディアには向きません。何か略称を考える必要がありますが、「デジカメ」ほどぴったりな呼称は難しそうです。しかし、メディアの表記にいちいち目くじらを立てないメーカーの寛容な姿勢により、多くの人々が恩恵を受けているのです。

ここで、「デジカメ」と呼ばない人が少数ですが含まれています。これは、三洋電機のデジカメを意識した回答というよりは、むしろ質問に「コンパクト」の文字が含まれていたため、コンパクトタイプを「コンデジ」や「コンパクト」と呼んで一眼レフとの区別にこだわる人がそのように回答したのではないかと推測されます。

当てはまる84%、まあ当てはまる8%、あまり当てはまらない6%、まったく当てはまらない1%、よく分からない1%


今回取り上げたブランドは、いずれもその名称がないと困るほど親しまれ浸透した、優れたブランドといえそうです。

調査概要

全国20歳以上男女のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2011年6月10日~2011年6月11日
調査対象 一般名称「宅配便」に対するヤマト運輸「宅急便」/一般名称「温水洗浄便座」に対するTOTO「ウォシュレット」/一般名称「食品用ラップフィルム」に対する旭化成「サランラップ」/一般名称「ツナ缶」に対するはごろもフーズ「シーチキン」/一般名称「コンパクトデジタルカメラ」に対する三洋電機「デジカメ」
質問方法 それぞれの製品分野において、特定メーカーのブランド名を一般名称のように用いているかどうかを尋ねた。
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