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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

ブランドなんでもランキング

第22回:企業ニュースに対するイメージ調査

毎日メディアを賑わすさまざまなニュースたち。今回のなんでもランキングは、そんなニュースの中から企業側が発信した、企業のブランドイメージを左右するものをピックアップし、どんなニュースが、どんな影響を与えたかを調べてみました(各ニュースの詳細に付いては表1をご参照ください)。

企業名 ニュース内容
松下電器 パナソニックに統一 松下、ナショナル廃止 ブランド戦略強化 (2008年1月10日)
松下電器産業は10日、会社名を国内外でブランド名として利用している「パナソニック」に変更する方針を明らかにした。欧米やアジア市場では、ブランド名のパナソニックが、社名の松下より浸透していることから、社名も統一して世界的なブランド戦略を強化するねらいで、社名から創業家の名称が消えることになる。国内で使用している「ナショナル」ブランドも廃止する方針。
ソニー バイオ、OperationからOrganizerへ(2008年7月16日)
ソニー株式会社は、パーソナルコンピューター“VAIO(バイオ)”の事業において、1996年の事業開始以来、ブランド名に込めてきた「VAIO=Video Audio Integrated Operation」という意味を、「VAIO=Visual Audio Intelligent Organizer」と再定義し、その実現を指針の一つとして、新しい価値の創造を進めていくという。
キッコーマン キッコーマン、ロゴ21年ぶり刷新、国内用と海外用統一。(2008年3月27日)
キッコーマンは26日、企業ロゴマークを21年ぶりに刷新すると発表した=写真は新ロゴマーク。これまでは国内と海外でロゴマークが別々だったが、海外の営業利益の比率が半数を超えたことから、統一することにした。同社の2006年度の営業利益のうち海外は51%を占める。
NTTドコモ NTTドコモ、反撃へロゴ変身(2008年4月19日)
NTTドコモは新しいロゴを発表した。7月から使う。前身のNTT移動通信網が設立された92年7月以来、ロゴの変更は初めて。携帯電話市場の飽和や競争の激化を受け、新たなブランドイメージを作り、劣勢を転換する狙いがありそうだ。ドコモの契約シェアは低下しており、07年度末は52%になっている。中村維夫社長は記者会見で「新規獲得よりも、既存の利用者との関係の長さと深さを重視する。長く愛されるブランドにしたい」と挨拶した。
カネボウ カネボウ「クラシエ」に社名変更(2007年2月28日)
日用品などカネボウの非化粧品部門であるカネボウ・トリニティ・ホールディングス(東京)は、「クラシエホールディングス」へ7月1日に社名変更する。1887年の創業以来使われていたカネボウの商標は、花王傘下となったカネボウ化粧品(東京)が引き続き使用する。
社員公募に基づく新社名は「快適で楽しい暮らしへ」という願いを込めており、小森哲郎社長は同日の記者会見で「顧客に向き合う姿勢を鮮明化したもの」と述べた。
【表1】各社のニュース内容

今後への期待感がいっぱいのパナソニック

(単位:Pt)

Panasonic
この企業に対して興味を持った 9
この企業の製品・サービスに興味を持った 4
この企業に好感が持てた 6
この企業に対する信頼が増した 3
この企業の今後に期待できる 21
趣旨に賛同できる 15
意義が理解できる 9
企業のメッセージが伝わる 15
企業のビジョンが伝わる 19

「松下電器、ナショナル廃止、パナソニックに統一」。こちらについては「この企業の今後に期待できる」が5社中トップの21ポイントになりました。

松下製品は欧米において主に「パナソニック」というブランド名で発売しています。国内や一部の国では「ナショナル」ブランドが使われていますが、「パナソニック」の方が広く通用しやすいとの判断だそうです。今後の世界市場拡大に向けた戦略として、「ナショナル」「パナソニック」というふたつのブランドを擁するより、グローバルにブランド名を統一した方が良いという意図は消費者にも納得しやすかったのか「企業のビジョンが伝わる」「趣旨に賛同できる」「企業のメッセージが伝わる」も高いポイントとなりました。

興味を喚起させたソニーのバイオ

(単位:Pt)

v a i o
この企業に対して興味を持った 11
この企業の製品・サービスに興味を持った 9
この企業に好感が持てた 6
この企業に対する信頼が増した 2
この企業の今後に期待できる 15
趣旨に賛同できる 8
意義が理解できる 4
企業のメッセージが伝わる 10
企業のビジョンが伝わる 8

一方、ソニーの「vaio(バイオ)の定義を『Video Audio Integrated Operation』から『Visual Audio Intelligent Organizer』へ拡大」というニュースでは「この企業の今後に期待できる」が15ポイントとなりました。次いでポイントが高かったのは「この企業に対して興味を持った」で11ポイント、「この企業の製品・サービスに興味を持った」も9ポイントと比較的高くなっています。ただ「この企業に好感が持てた」「信頼が増した」は各6ポイント、2ポイントとなっており、商品単体のニュースは企業に対する信頼感や好感よりも、商品そのものや企業に対する興味を喚起させる力が強かったといえるでしょう。

グローバルな視点が共感をもたらしたキッコーマン

(単位:Pt)

キッコーマン
この企業に対して興味を持った 5
この企業の製品・サービスに興味を持った 4
この企業に好感が持てた 8
この企業に対する信頼が増した 2
この企業の今後に期待できる 13
趣旨に賛同できる 10
意義が理解できる 7
企業のメッセージが伝わる 17
企業のビジョンが伝わる 16

さて、キッコーマンは21年来使って来たロゴマークを刷新、日本だけでなく世界のグループ各社でも導入するとのこと。調査の結果では、「企業のメッセージが伝わる」が最も高く17ポイントとなりました。従来の亀甲マークは、日本文化の中ではわかりやすいものでしたが、アルファベットで社名を記したロゴマークを用いることにより、海外でも社名を覚えてもらおうという試みといえるでしょう。こうしたグローバルな視点が消費者に共感をもたらしたのか「企業のビジョンが伝わる」「この企業の今後に期待できる」「趣旨に賛同できる」もそれぞれ高ポイントになりました。新ロゴにも記された「seasoning your life」(「おいしい記憶をつくりたい」)という新コーポレートスローガンを同時に発表したのも企業のメッセージを強く感じさせた一因かもしれません。

ドコモのロゴ刷新には好感と親近感

(単位:Pt)

docomo
この企業に対して興味を持った 5
この企業の製品・サービスに興味を持った 3
この企業に好感が持てた 10
この企業に対する信頼が増した 2
この企業の今後に期待できる 8
趣旨に賛同できる 7
意義が理解できる 12
企業のメッセージが伝わる 14
企業のビジョンが伝わる 9

初のロゴ刷新を試みたドコモ。「この企業に好感が持てる」が10ポイント、「企業のメッセージが伝わる」は14ポイント、「意義が理解できる」も12ポイントとなりましたが、「企業のビジョンが伝わる」「この企業の今後に期待できる」はさほど高くなりませんでした。とはいえ、ロゴ刷新は好感を持って迎えられているようで、ドコモの中村雅夫社長が「既存の利用者との関係の長さと深さを重視する」と言ったように、すでに築いた関係の強化/再確認という面では肯定的な捉え方をされているようです。製品・サービスにより積極的に関心を持ってもらえるのはこれからの取り組み次第と思われます。

新社の魅力伝わる宣伝活動を期待したいクラシエ

(単位:Pt)

カネボウ
この企業に対して興味を持った 5
この企業の製品・サービスに興味を持った 6
この企業に好感が持てた 2
この企業に対する信頼が増した 3
この企業の今後に期待できる 11
趣旨に賛同できる 8
意義が理解できる 14
企業のメッセージが伝わる 12
企業のビジョンが伝わる 8

さて、社名変更と言えば「カネボウ、『クラシエ』に社名変更」のニュースがあります。花王傘下の「カネボウ化粧品」はそのままに、その他部門を「クラシエホールディングス」へ社名変更するという大胆な改革ですが消費者にはどのように捉えられているのでしょうか。「クラシエ」にこめられた「快適で楽しい暮らしへ」という思いはどの程度伝わっているのでしょうか。

今回の調査では「意義が理解できる」が14ポイントと高く、次いで「企業のメッセージが伝わる」12ポイント、「企業のビジョンが伝わる」は8ポイントとになりました。しかし「この企業に好感が持てた」は2ポイントであり、意味は理解できても共感や期待感を抱かせるまでに至らなかったようです。各種メディアでは商品ラインの縮小も報道されており、総合的に前向きなイメージは感じにくのかもしれません。しかしカネボウ時代からの看板商品であった漢方薬の分野は成長を続けており、今後新生クラシエの魅力が伝わる活動を期待したいところです。

こうして5社それぞれの結果を並べてみると、各社のニュースが企業のイメージアップに強い影響があることがわかります。ニュースの発信はブランドのコントロールにも役に立つのではないでしょうか。

調査概要

全国の10代〜50代のインターネットユーザーから回答を得た

サンプル数 100
調査期間 2008年8月22日〜8月23日
調査内容 5社の企業ニュースについてイメージを聞いた。
調査対象 5社の企業ニュース(松下電器/ソニー/キッコーマン/NTTドコモ/カネボウ※企業ニュースの内容については前述の表1を参照)に対し、10のイメージ項目(この企業に対して興味を持った/この企業の製品・サービスに興味を持った/この企業に好感が持てた/この企業に対する信頼が増した/この企業の今後に期待できる/趣旨に賛同できる/意義が理解できる/企業のメッセージが伝わる/企業のビジョンが伝わる/あてはまるものはない)の中から複数回答式で回答を得た。
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