ブランド戦略通信 │トライベック・ブランド戦略研究所

Webマスターに聞く!

シリーズ2 第5回:株式会社東芝

話し手
株式会社東芝 広報室 ホームページ戦略担当 グループ長
廣田 宏二氏
顔写真
株式会社東芝 広報室 ホームページ戦略担当 主務
蔵冨 麻衣子氏

一体感のあるデザインと抜群の情報力

「サイト・エクスペリエンス・ナンバーワン」——。この標語のもと、東芝では、Webサイトの絶え間ない改良に取り組んできた。現在、トップページを見れば、丸型で3層構造のプロモーションエリアを設けて、マウスオーバーするごとに画面が切り替わるように設定するなど、スペースを有効活用し、できるだけ多くの製品や取り組みを同時にアピールするような洗練された仕組みが整っている。企業情報サイトも非常にブラッシュアップされた印象を受ける。各コンテンツは下の階層までビジュアルイメージやサイドナビが統一された、一体感のあるデザインである(【図1】)。「企業情報サイトは6つのコンテンツに分かれているが、東芝ブランドとして同じイメージであることが理想。それぞれのコンテンツを担当する部門に依頼し、合わせてもらっている」と、広報室ホームページ戦略担当主務の蔵冨麻衣子氏は説明する。また、コンテンツのうち、「投資家情報」、「社会・環境活動(CSR)」、「採用活動」は今回の調査で「良かったコンテンツ」として評価した人の割合が、各々18.5%(247社平均は10.0%)、17.3%(同9.0%)、15.8%(同7.4%)に達している。これは、全体の平均を大きく上回り、競合他社を大きくリードする結果であり、同社のWebサイトの優れた情報力を示している。しかし、当然一朝一夕でこの完成度が高いWebサイトが生まれたわけではなく、ここに至るまでには紆余曲折、試行錯誤があった。

ユーザビリティ向上手法を続々導入

東芝Webサイトの歩み

【表1】東芝Webサイトの歩み

東芝のWebサイトが産声を上げたのは、1995年4月のことである(【表1】)。「当時は専任の組織はなく、広報、広告、情報システムなどに携わるメンバーが中心となり委員会を設け、会合を開いてやり方を決め、運営していく仕組みでスタートした。その後、2000年になってようやく広報室に『ホームページ戦略担当』という専任部隊を発足させた」と、広報室ホームページ戦略担当グループ長の廣田宏二氏は述懐する。

ホームページ戦略担当部隊の最初の大仕事がトップページの再構築だった。とにかくデザイン性の高いものにしようと、フラッシュ技術を採用し、01年にリニューアルオープン。「理論的な観点はほとんどなかった。ユーザビリティ、アクセシビリティという言葉は知っていても、具体論となるとまだ乏しかった」(廣田氏)。

理論的な考え方に基づきリニューアルを実施したのは翌02年。インフォメーション・アーキテクチャー(IA:情報構造)の考え方を本格的に導入し、ユーザビリティを大幅に強化した。例えば、製品情報は、「パーソナル向け」、「ビジネス向け」とナビゲーションを分けていたが、製品によっては行き着く先は同じコンテンツであり、そうしたユーザビリティの問題はWebサイト中に山積していた。ガイドラインを作成し、そうした欠陥にメスを入れたわけだ。

03年には一歩進めて、ユーザーアンケートで上がってきた意見を、Webサイトに体系立てて落とし込むために、「品質機能展開」という品質管理の手法を活用。ユーザビリティの向上をさらに図ると同時に、東芝のビジョン、ポリシーのアピールにも力を注ぎ始める。「その最たるものが企業情報サイトの充実や見せ方の改善。東芝のスタンス、ビジョン、CSRの取り組みなど訴えたいポイントをどのように埋め込んでいくかという発想が加わった。また、トップページで製品情報と同列に企業情報の見出しを扱うなど、前面に出すようにも配慮した。丸型のプロモーションエリアを三層構造に作り直し、そのうち一層でCSRなどの企業情報を取り上げるようになったのもこの時期(【図2】)」と、廣田氏は振り返る。

セキュリティ対策をいち早く断行

03年以降、大幅なリニューアルは実施していない。しかし、ユーザーの目には見えない“Webサイトの裏側”では、着々と改善が進められた。そのひとつが、セキュリティの強化である。04年、米国では金融機関の偽ページにカード番号を記入させて悪用する「フィッシング詐欺」が横行し、被害が報告されていた。東芝では、いち早く、Webサイトのインターフェース周りをチェックする担当者を決め、対策に乗り出す。

まず、トップページや企業情報サイトなど広報室が管轄するページから着手する。具体的には、アドレスバーやステイタスバーをどのページでも表示することなどである。「別ウィンドウをポップアップで立ち上げるときなどは、クリエイティビティの観点から隠しがちであるが、その手法を明確に否定し、ガイドラインに記載して各部門にも順守を徹底した。このようないくつかの対策で、ユーザーに偽ページとの区別を容易にさせ、東芝のサイトをフィッシング詐欺などに悪用される危険性を低減させた」(廣田氏)。

東芝は05年、130周年を迎えるにあたり、企業活動のコンセプトとして、「驚きと感動」、「快適」、「安心と安全」を掲げた。「照らし合わせると、01年のデザイン性の強化で『驚きと感動』、その後のユーザビリティの改善で『快適』、セキュリティの強化で『安心と安全』と、Webサイトでは先行して推進してきた」と、廣田氏は語る。

今後は、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム:テキストや画像、レイアウト情報を一元的に保存・管理し、レイアウトやリンクを自動生成するなどしてWebサイトを構築するシステム)の導入も視野に入れる。「そのタイミングでWebサイトのデザインを刷新することもありうる」と廣田氏は語る。今後も、Webサイト専任のホームページ戦略担当5人による、「サイトエクスペリエンス」向上のための飽くなき挑戦は続く。

東芝のWebサイト構築のポイント
  • スローガンは、「サイトエクスペリエンスNo.1」
  • 企業情報サイト内のコンテンツはデザイン・サイドナビを統一し一体感を持たせる
  • インフォメーション・アーキテクチャー、品質機能展開などの手法を採用し、ユーザビリティの向上を徹底
  • フィッシング詐欺対策としてセキュリティの強化に注力
  • CMSの導入も視野に入れ、更なる「サイトエクスペリエンス」の向上へ
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