ブランド戦略通信

Webマスターに聞く!

シリーズ2 第10回:日産自動車株式会社

話し手
日産自動車株式会社 グローバル広報・CSR・IR本部広報・CSR部インタラクティブ・コミュニケーショングループ課長代理 井原 徳浩氏
顔写真

ユーザー指向のデータベース

「とにかく“お客様のためのデータベース”であることを念頭に作ってきた。知りたい情報があり、うまくたどり着けるナビゲーションがあることが基本」と、日産自動車(以下日産)グローバル広報・CSR・IR本部広報・CSR部インタラクティブ・コミュニケーショングループ課長代理の井原徳浩氏が語るように、日産の企業情報サイト(【図1】)では、常にユーザーオリエンテッドなデータベース作りを心がけてきた。実際にアクセスすると、その情報量の豊富さは実感できる。特に、日産が企業として注力するCSRや社会貢献活動、環境、安全などへの取り組みやIR情報に関する情報量の厚みは目を見張るものがある。また、ナビゲーションはサイドナビに加え、ページ上部にも設置され、深い階層に入っても、すぐに違うカテゴリーに飛ぶことができる。迷うことなく直感的に情報を探せるまさに抜群の使い勝手を誇るデータベースといえる。
コンテンツの項目分けにも、細心の注意を払う。例えば、CSR。日産では、2004年に新たにCSRという項目を設ける際に、それに関わるすべての活動を含めてひと括りにまとめるという意見もあった。しかし、どこまでをCSRに含めるかは、狭義、広義など捉え方の問題もあり、線引きが非常に難しい。そこで、日産は、CSRという項目では、活動概念や考え方をCEOやCOOの言葉とともに紹介し、各活動に関しては、別立てで項目を設けて掲載。「コンセプト」と「アクション」の住み分けにより、スッキリとわかりやすいページ構成が実現した。

「環境への取り組み」(【図2】)のページにも、小項目の立て方に入念に練られた痕跡がうかがえる。サイドナビで、「クルマでの取り組み」、「工場での取り組み」、「販売店での取り組み」とジャンル分けして紹介するほか、「地球温暖化」などのテーマごとに分別したり、国別に分けるなど伝えるための工夫を凝らす。ユーザーを着実に目的地に誘導するテクニックが随所に散りばめられている印象を受ける。ユーザーに対する姿勢も、「メールで寄せられる、『こういう情報が足りない』、『ここを改善してほしい』という意見は、可能な限り落とし込む」(井原氏)と、極めて真摯だ。

デザインに求められる“日産らしさ”

日産の企業情報サイトの特徴をさらに挙げるとすれば、「デザイン」に言及すべきだろう。「カルロス・ゴーンCEOも、クルマのデザイン力を極めて重視するが、そうした日産らしいデザインは、クルマ以外の部分にも反映されている。身近なところでは、販売店の店舗デザインや、テレビCM・広告だったり。言葉にはできないが、デザインやイメージを通じ何となく日産らしいという部分を感じられるモノでなくてはならない、それはWebサイトも例外ではない。画像やレイアウト、ナビゲーションなどは、「日産らしさ」が求められ、それはデザインのクオリティチームによりワールドワイドで厳正に管理されている。私たちがいいと思って出しても、クオリティチームの了承を得なければ外には出せないし、差し戻されて再考を命じられることも少なくない」と、井原氏は説明する。

確かにデザインは全ページで統一され、サイドナビの位置、画像のイメージ、レイアウトからは、洗練されたクルマのデザインを彷彿させるような、日産らしさが伝わってくる。また、コンテンツとしても「デザインへの取り組み」という項目を設けて、詳細にアピールする(【図3】)。こうした項目を設置しているところからも、デザインへの並々ならぬこだわりが伝わってくる。また、今年度中のフラッシュの導入も予定している。ただし、先にフラッシュありきではなく、まず、中身を考えて、それに必要であれば採用していくというスタンスである。また、マーケティングサイトで見られるような遊び感覚のものではなく、あくまで、使い勝手を向上するための導入を検討する。トップページやIRのグラフ、ストリーミングで流しているコンテンツのフラッシュ化などを視野に入れる。
一方で、キッズ向けコンテンツの充実も図り、今秋にリニューアルオープンさせる。「幼少期に潜在的なイメージを与えるのは重要なこと。小学校では、企業情報サイトが教材に使われていることもあり、日産でもキッズ向けを強化する。内容は大人でも楽しめるものに仕上げ、親子で見てもらえるようなコンテンツにしたい」(井原氏)。
こうした情報、ナビゲーション、デザインが優れたサイトへの評価の高さは、同業他社と比べると一目瞭然である。企業情報サイトを見ることで、企業好感度は17.0%、製品・サービスの購入意欲は14.7%アップするなど、群を抜く結果となった。日産の企業情報サイトは確実にユーザー心理に好影響を及ぼしている。

データベースからメディアへの脱皮

日産では、更なる企業情報サイトのブラッシュアップを計画する。その大きなコンセプトが「データベースからストーリングテラーへ」進化を遂げることである。当初目指していた“お客様のためのデータベース”は一応の完成形を見た。次のステップでは、単なる情報の宝庫ではなく、より情緒に訴えるような物語性に富んだコンテンツを発信していこうというわけだ。 ストーリーは、Webチームが独自に取材し、制作する。クルマと関連のないニュースや、営利目的には直結しないものも含まれる。そして、一度他の部門からパーミッションを受けた情報を発信するという従来型の枠から脱皮し、独自のストーリーを数多く生み出す“メディア”を目指すという。「企業情報サイトの役目は究極的には企業の魅力付けであり、心の底から信じられるイメージを消費者に持っていただく役割を担う。そういう意味で、滞在時間や理解力を高めるコンテンツが必要であり、ストーリングテラーが今後のキーワードになる」(井原氏)。
日産ではすでに脱皮への一歩を踏み出している。「社会貢献活動」の中に、「活動レポート」という項目を設け、イベントの取材やインタビュー記事を載せている(【図4】)。今後も独自取材のコンテンツを増やし、企業の信頼性をその“ストーリー”から醸成していく。

【表1】日産自動車のWebサイトの歩み

【表1】日産自動車のWebサイトの歩み

現状に満足することなく、常に理想形に向けた歩み止めない日産の企業情報サイト(【表1】)。特に「メディアへの進化」は、これからの企業情報サイトの試金石となる動きであり、大いに注目したい。

日産自動車のWebサイトの構築のポイント
  • コンセプトは“お客様のためのデータベース”
  • コンテンツの項目分けにも細心の注意を払い、ユーザーを目的地に巧みに誘導
  • デザインはクルマとの統一感を持たせ、“日産らしさ”を追求
  • 今後はデータベースからストーリングテラーへ脱皮し、“メディア”に進化
  • 幼少期の潜在的なイメージ付けを重視し、キッズ向けコンテンツを拡充
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