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シリーズ2 第6回:キリンビバレッジ株式会社

話し手
キリンビバレッジ株式会社 広報部 広報担当 主任
松尾 守恒氏
顔写真

キーターゲット層は“個人投資家”

キリンビバレッジの企業情報サイトのコンテンツで最も目を引くのが、IR情報の充実ぶりである。「ここ数年特に力を入れている。キリンビバレッジは元々キリンビールの子会社だったこともあり、個人投資家が少ないため、その増加に向けた施策として展開している」と、キリンビバレッジ広報部広報担当主任の松尾守恒氏は説明する。

「投資家のみなさまへ」と題されたIR情報ページにアクセスし、まず注目されるのがページ左側のサイドナビに示された懇切丁寧な「見出し」である。「経営方針」、「財務情報・報告書」といった一般的に見られる項目のほか、「株主優待・配当金」、「IRよくある質問」、「IRお問い合わせ」、「IR用語集」といった、主に個人投資家を意識したコンテンツを用意する。

【表1】キリンビバレッジWebサイトの歩み

【表1】キリンビバレッジWebサイトの歩み

さらに2006年からは年1回のアナリスト向けの事業方針説明会と年2回の決算説明会の動画配信をスタート(【表1】)。QRコードも追加し、携帯電話から株価情報などをチェックできる仕組みも取り入れた。

経営理念のページも2種類用意している。「会社案内」→「経営理念」という動線を辿るとサイドナビは「会社案内」関連項目を表示するが、企業情報サイトのトップページから直接「経営理念」のページにアクセスすると、サイドナビには「投資家情報」関連項目が現れる。「トップページから経営理念を見に行くユーザーは投資家情報に興味があるという推測のもとに構築した」と、松尾氏は理由を解説する。

トップページには「基礎情報」という名目で、会社の設立年月、本社所在地、資本金などを掲載し、地図ページへのリンクを張る。これは他サイトにはない試みである。「IR担当者から会社概要はページに訪れたときにすぐ分かったほうがいいという意見があり、基礎的な情報だけはトップページで見せることにした」(松尾氏)と、IRを意識した施策であるが、IRに限らず同社に関心がある人に便利な情報となっている。

“CSRコミュニケートサイト”構想

キリンビバレッジでは、より一層企業情報サイトの強化に取り組む姿勢を見せる。「Webサイトは、プロダクツブランド情報、コーポレートブランド情報、エンターテインメントコンテンツの3つを軸に構成している。従来までは8割くらいの力をプロダクツブランド情報に注いでいたが、今後は、コーポレートブランド情報への注力度もアップさせていく方針である」と、松尾氏は展望を示す。具体的には、大きなくくりのCSRに関連したコンテンツを充実させていく意向だ。

既に環境情報では、先行して施策をスタートさせている。05年11月、キリンが開発した、軽量でつぶしやすい環境配慮型のペットボトル「ペコロジーボトル」を紹介する専門サイト「Let’s PECOLOGY」を立ち上げた。コンテンツ紹介キャラクターに「エコパンダ」を起用するなど、専門的な内容を柔らかく伝えられるように工夫。「親子で一緒に楽しめるようなサイトに仕上げた」(松尾氏)。

もう一歩踏み込み、将来的には、「IR」、「環境」、「文化活動」、「お客様とのコミュニケーション」を4本柱とした“CSRコミュニケートサイト”の構築も視野に入れている。

「現在強化中のIR、環境はさらにこの動きを加速させる。文化活動では、今、キリンビールとともにサッカー日本代表の応援サイトを運営しているが、それ以外に、飲料文化を紹介するようなコンテンツ作りも進める。企業情報サイトのトップページで『新しい飲料文化の創造をめざします』とうたっている以上、こういったコンテンツの拡充はキーポイントとなる。お客様とのコミュニケーションでは、現在『お問い合わせ』のコーナーに、寄せられたお客様の声を商品に反映させた例を紹介するコンテンツを設けているが、それをもう少し進化させる方向で検討している」(松尾氏)。

06年中のリニューアルを計画

CSRに力を入れる理由は、「企業は利益だけを追求していては不十分で、やはり社会的責任を全うし、しっかり情報として提供していくことが必要」(松尾氏)という認識が社内でも強まってきたためという。CSR情報の充実だけでなく、企業情報サイト全体を大規模リニューアルし、見た目も大きく変えるようなアイディアも出ており、4月に答申を出し、06年内にはリニューアルを実行に移す計画だ。

ただし、リニューアルは単独で考えるのではなく、親会社のキリンビールとの連携は常に意識している。「キリンビールでもリニューアルを検討しているようなので、そうした動きも考慮して、進めていくことになる」と、松尾氏は話す。また、Webサイト評価のユーザー調査を毎年1回実施しているが、その結果も重要な指標となるという。

いずれにせよ、答えは秋口に出る。CSR情報を数多く盛り込んだ企業情報サイトがどのような形に変貌するのか。それに対するユーザーの評価も含めて、今後も動きを追っていく必要がありそうだ。

キリンビバレッジのWebサイト構築のポイント
  • 個人投資家を意識したコンテンツ拡充を促進
  • 動画配信やQRコードの設置など、IR情報ページのブラッシュアップに注力
  • 環境への取り組みも積極的にPRするために専門サイトを開設
  • 2006年からはコーポレートブランド情報の拡充も推進
  • 具体的な施策として、“CSRコミュニケートサイト”の立ち上げを模索