ブランド戦略通信 │トライベック・ブランド戦略研究所

Webマスターに聞く!

シリーズ3 第7回:au(KDDI株式会社)

話し手
KDDI株式会社 au営業本部 au営業推進部 販売促進グループ 課長補佐
小保内 勝也氏
顔写真

MNPをにらみ矢継ぎ早にコンテンツを拡充

【図1】auのWebサイトトップページ


【図1】auのWebサイトトップページ
【図2】コメントパーク


【図2】コメントパーク

携帯電話の加入者が別の事業者(キャリア)に契約を切り替えても、元の番号がそのまま使える「番号ポータビリティ制度(MNP)」が、2006年10月24日にスタートした。MNPは各事業者のシェアを大きく塗り替える可能性をはらんでいるが、それを意識したWebサイト改革を積極的に進めてきたのがauである。2006年は大型コンテンツや新機能の導入を矢継ぎ早に進め、来るべき決戦に向けて備えてきたのだ。

06年3月。「コメントパーク」が先陣を切って立ち上がる。(【図2】)これはauユーザーがau端末・サービスの楽しさ、便利さ、安心さ、オトクな点などを投稿するコンテンツだ。画面上の小さな画像をクリックするだけで、投稿されたコメントを誰でも読むことができる。「auユーザーの声をもっと出せないかということを考えて、早い段階で導入した。寄せられた声は、できるだけそのままの言葉で載せるようにしている」と、WebマスターとしてWebサイトを取り仕切る小保内勝也氏は話す。コメントパークは同年9月に「さあ、auへ」と題したMNP総合情報サイトに吸収され、現在も人気コンテンツとして活況を呈する。

ブログスタイルのコンテンツも開設

【図3】auケータイ探検隊


【図3】auケータイ探検隊

06年9月。auのインターネット接続サービス「EZweb」向けの公式サイトやコンテンツの情報をチェックできるPCのポータルサイト「DUOGATE」にも、「auケータイ探検隊」と銘打つコンテンツが新登場した。(【図3】)新しくデビューするauの端末のデザインや機能、開発者の声を紹介するコンテンツであり、内容の充実ぶりには目を見張るものがある。

さらに、注目すべき点が、記事に対してブログのようにコメントを書き込みできることだ。モデルによっては、50件、100件と活発な書き込みが見られるものもある。書き込みに参加するには、Eメールアドレスや性別、生年月日、郵便番号などの属性を記入するIDの登録が必要。また、コンテンツ内を定期的にパトロールし、不適切なコメントが見つかれば即時に削除するなど、“荒らし対策”にも余念がない。

元々、05年にソニー製端末の企画・開発担当者のブログをトライアルで立ち上げていた。ほぼ週2回の更新を約2ヶ月間続け、その際はトラックバックのみを受け付けた。各ユーザーのブログでは、この企業ブログが話題となり、試みは成功。「ここまで更新を頻繁にするか、またどこまでブログ機能を付けるか。悩んだ末に、WINの新機種を全て紹介するなど対象を広げ、更新はせずにユーザーの方々に色々とコメントを書いていただくスタイルにした。07春モデルも1月中旬に追加している」(小保内氏)。

新規コンテンツのキーワードは“CGM”

【図4】なるほど!au


【図4】なるほど!au

そして、06年12月。さらに新コンテンツを開設した。参加するユーザー同士が質問と回答をやりとりできるQAコミュニティサイト「なるほど!au」の開設である。(【図】4)質問者が特に役に立った回答者に対してポイントを付与する仕組みも導入。高ポイント取得者にはauから端末の購入の際などに使えるauポイントがプレゼントされる。質問と回答は誰でも自由に閲覧可能だが、実際に質問したり、回答するにはKDDIのIDを取得した上で、さらに「なるほどau」への会員登録が必要。適切な運営のための対策に万全を期す。登録後はPC、携帯電話の両方から利用が可能となる。

このコンテンツは国内最大級のQAサイトを展開するOKWaveの仕組みを採用。質問や回答は常時監視され、荒らしや誹謗中傷など不適切な書き込みが確認された場合は、即座に削除される。また、コンテンツはお客様対応部門が管理。QAサイトの導入で、コールセンターへの問い合わせ件数の減少を見込む。

新規に導入されたコンテンツの共通点は、ユーザー参加型のCGM的な展開を見せていることである。Webサイトを訪れるユーザーにとって、そうした意見や助言は同じ立場、同じ目線で語られているということで、安心感や親近感を覚える。ユーザーの共感を得る手法として非常に有効である。

しかし、一方で、運営側のコントロールが効かなくなる可能性もある。「運営自体に難しい部分はあると思うが、MNPが始まる時期に是非やるべきだという結論に達した」と小保内氏は胸中を明かす。他キャリアのユーザーが知りたいのは、実際の使用者のコメントやアドバイスである。そのニーズに応えるために、リスクを認識しながらも果敢に手を打つ。auのWebサイトには、本業にも通ずる顧客満足度を重視する姿勢がうかがえるのだ。

Webサイト内外で導線を整備

MNPを念頭に置いた対策は、コンテンツだけにとどまらない。06年9月には、トップページに手を加えた。「音楽を聴く」、「映像を見る」、「ゲームを楽しむ」などの項目を羅列した「目的で探す」という誘導路を設け、より直感的に求める情報にたどり着けるような仕掛けを構築したのである。他社ユーザーが初めてWebサイトに訪れる場合、au独自の製品名、サービス名が理解できないために、情報がないと判断する可能性がある。このナビゲーションはその機会損失を防ぐ役割を担うわけだ。

こうしたユーザビリティの改善は、基本的に年1回実施するWebサイト上でのアンケートも参考にする。05年に取ったアンケートを分析した結果では、初めて訪問したユーザーにとって情報が探しづらいページであることが判明したという。その結果もあり、MNP前に改善策を施したわけである。

また、各種メディアを活用したWebサイトへの積極的な誘導にも注力している。06年9月から、キャンペーンなどの告知物には必ずURL(www.au.kddi.com)を入れている。このURLはPCだけでなく携帯電話でも有効であり、打ち込むと、携帯電話向け公式Webサイト「au style」にアクセスできる。携帯電話でGoogleやYahoo!を使って「au」と検索しても、この公式Webサイトにたどり着ける。つまり、他社ユーザーの携帯電話からもauのWebサイトが簡単に見られるようになっている。auでは、アクセス数増加を見越し、サーバーやネットワークも増強。実際にアクセス数は確実に上がっているという。

スペシャルサイトで世界観を訴求

【図5】2007年春モデルのスペシャルサイト


【図5】2007年春モデルのスペシャルサイト
【図6】auデザインプロジェクト第6弾「MEDIA SKIN」のスペシャルサイト


【図6】auデザインプロジェクト第6弾
「MEDIA SKIN」のスペシャルサイト

一方で、従来からのauのWebサイトの特徴として、フラッシュを巧みに使い、作りこんだビジュアルコンテンツを多数立ち上げてきたことも忘れてはならない。それは、auデザインプロジェクトや、新機種ラインナップの紹介、音楽配信サービス「LISMO!」などでスペシャルサイトという形で度々開設されている。「スペシャルサイトではauブランドの世界観を伝える。そのイメージを掴んでもらった上で、機能やサービスの詳しい説明は、本体のWebサイトで提供する。単純に役割を分けているだけ」と、小保内氏は説明する。

要は、視覚や感覚に訴えるイメージ作りに非常に力点を置いているのである。ビジュアルが織り成す世界観で心を掴み、関心度を高めた後に機能や具体的な内容の説明を施す。二段階の訴求により、ブランドのファンになる確率はより高くなる。

スペシャルサイト作りでは、Webサイトの制作会社と各プロダクトの担当者だけでなく、端末をデザインした工業デザイナーも参画する。ビジュアルやその動きが実際のプロダクトのイメージと合致しているかを確認しながら、ブランドの一体感を徹底的に図っていく。完成度の高い統一性を兼ね備えたスペシャルサイトはこうして生まれるのだ。(【図5】、【図6】)

auの現在の携帯電話契約者数は約2600万人、シェア約27%。これを3000万人、30%に引き上げるのが当面の目標である。ユーザーのパワーを借りながらさらに進化を遂げようとしているWebサイトが、目標到達のための重要な役割を担うことは言うまでもない。

auのWebサイト構築のポイント
  • MNPを意識し、他社ユーザーのauの魅力が伝えるようなコンテンツを拡充
  • ユーザーがコメントや質問、回答を書き込みできるようなCGM的な展開を強力に推進
  • 初めて訪れるユーザーのために「目的で探す」という導線を追加し、直感的な情報到達を実現
  • 各種メディアの告知物にURLを付記し、PC、携帯電話の両Webサイトへの誘導に注力
  • 新機種、新サービスの訴求ではスペシャルサイトを開設し、フラッシュを駆使したビジュアル展開でブランドの世界観をアピール
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