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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

Webマスターに聞く!

シリーズ2 第9回:味の素株式会社

話し手
味の素株式会社 広報部 Web担当部長
棗田(なつめだ) 眞次郎氏
顔写真

必要なのは“情報”と“ナビゲーション”

【表1】味の素KKのWebサイトの歩み

【表1】味の素KKのWebサイトの歩み

「お客様のほしい情報がきちんと置いてあること、そこにたどり着くナビゲーションがしっかり構築されていること。これが企業情報サイトの基本」。味の素KK広報部Web担当部長の棗田眞次郎氏は極めてシンプルな考え方を示す。味の素KKの企業情報サイトはこのあるべき姿に向けて、長年にわたり試行錯誤が繰り返されてきた(【表1】)。

味の素KKは元々情報発信を徹底的に推進してきた企業だ。その姿勢攻めの情報発信だ。背景には、「味の素」という調味料に関して、昔から世界中で様々な噂や根拠のない情報が飛び交うケースが多かったことがある。そのため自ら正しい情報を発信して世間の誤解を解く必要性があり、自然とこういった積極的な姿勢が培われてきた。それが、「Webサイトという、自分たちの意図やメッセージがストレートに出せる自社メディア」(棗田氏)を手に入れて、より一層加速、「05年6月に今の形になり、ようやく企業情報サイトは一応の完成を見た」。

【味の素KK】企業情報

【図1】【味の素KK】企業情報

サイトを覗くと、コンテンツの充実度は一目瞭然であり、そこはまさに情報の宝庫といった趣である(【図1】)。また、味の素KK本体のトップページに企業情報サイトの見出しを列挙したり、「お客様相談センター」のコンテンツへのリンクを同じトップページの目立つ位置に配置するなど、ナビゲーションにも配慮する。

そして、味の素KKが最も伝えたいメッセージを企業情報サイトの中央に配する。野菜などの原料について解説した「原料へのこだわり」と、商品の「味の素」を詳細に解説した「ミセス・マミー」の両コンテンツである。こうしてコンテンツに優先順位をつけて、ページレイアウトにメリハリをつけることも、ナビゲーションの向上につながっている。

Webサイトの最先端に挑戦する“はしり”

コーンレンジャー便り

【図2】コーンレンジャー便り

各コンテンツの内容も、先進的な取り組みにより、“味付け”が加えられている。「原料へのこだわり」では、原料のコーンと野菜についてそれぞれブログを開設。特にコーンのブログ「コーンレンジャー便り」(【図2】)のオープンは04年10月であり、企業ブログのまさに“はしり”である。

「コミュニティは以前からやりたいと思っていた。当初はネガティブな書き込みへの不安もあったが、ネットにはネットの自浄作用があり、そうしたユーザーは自然と淘汰されると考え、思い切ってブログ開設に踏み切った。しかも最初からトラックバック、コメントの両機能とも閉ざさないフルオープンの体制で始めた。」と、棗田氏は話す。

さらに、もうひと工夫、ライブカメラを加える、である。ブログ開設と同時期に北海道にある自社のとうもろこし畑に設置し、生育の様子をリアルタイムに見せた。「単なる思い付き。原料へのこだわりを言うときに、何か『賑やかし』、『前ふり』が必要だと考えて映像提供を始めた」(棗田氏)。05年にはコーンの背丈あてクイズを実施し、実測する様子も放映するなど、エンターテインメント性の演出にも活用、大手企業のサイトには珍しい大胆な試みが、ファン獲得に一役買っている。

ライブカメラ バード・サンクチュアリ

【図3】ライブカメラ バード・サンクチュアリ

ライブカメラは三重県四日市にある味の素KK東海業所内のバード・サンクチュアリにも設置している(【図3】)。こちらも、ユーザーがパンやチルト、ズームなどカメラのアングルを自在に操作できるなど、さらに楽しめるような機能が装備されている。

05年、コーンレンジャー便りでは、とうもろこし畑がある北海道常呂郡訓子府町の地元小学校がコーンの観察を授業に取り入れ、その報告をブログ上で展開する新しい試みをスタートさせた。「リアルとバーチャルの融合である。畑の観察をするので、理科の授業にもなるし、工場見学により社会科の授業にもなる。今後は、ブログに載せるところまで生徒にやってもらうなどコンピュータ教育まで発展させることも視野に入れている」と、棗田氏は構想を描く。企業と教育との連携、地元密着、未来のファンの醸成。比類なき挑戦により様々な可能性が広がる。

情報発信サイトとして極めて高い評価

ミセス・マミーの「味の素」と“うま味”のふか〜い関係

【図4】ミセス・マミーの「味の素」と
“うま味”のふか〜い関係

「原料へのこだわり」で、味の素KKの現場での取り組みをアピールする一方で、「ミセス・マミー」では、味の素KKの原点である商品としての「味の素」や「うまみ成分」について徹底解説する(【図4】)。イラストを交えながら分かりやすく説明するなど、あらゆるユーザーが理解できるような工夫も凝らす。「お客様相談センターのコンテンツの中でも「味の素」は説明されているが、よりきちんと伝えようということで、このコーナーを作った」と、棗田氏。話題性の高いコンテンツだけでなく、コアなメッセージも忘れずに押さえるバランス感覚の良さも特筆すべき点といえよう。

今回の調査で、味の素KKの企業情報サイトを「役に立つ」と回答したユーザーは全体の27.2%を占め、調査対象の250社中トップであった。このほか、「文章が分かりやすい」で1位、「使いやすい」で2位と、情報発信サイトとして総合的に極めて高い評価が得られている実態が読み取れる。

味の素KKの企業情報サイトも02年までは単に会社案内や採用情報などの項目が並ぶだけで、「今から見ると、メッセージ性はほとんどなく、何もなかったに等しい」(棗田氏)。それが数年でコンテンツが凝縮した先端的な情報発信の場に生まれ変わった。「コンテンツは揃ったので今後は次のステップに移る。それが何かはまだ分からないが、うま味や食文化をしっかり伝えていくのが、企業情報サイトの本分だと思う」。今後も更なる“大胆な味付け”に期待したい。

味の素KKのWebサイト構築のポイント
  • “情報”と“ナビゲーション”が企業情報サイトの両輪
  • “攻め”の情報発信で最先端の試みに次々と挑戦
  • 企業ブログやライブカメラなどを他企業に先んじて導入
  • 小学校とのコラボレーションでリアルとバーチャルの融合プロジェクトを始動
  • 「先端」と「原点」をバランスよく訴求して重層的な情報発信を実現
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