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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第99回 現実の姿と乖離したブランド訴求の害

Q これまでと違うイメージを広告で作り出すことは可能ですか。
A 現実の姿と乖離したイメージ訴求を行っても費用がかさむだけで定着は難しいでしょう。

ブランディングの方法論に「目指すべきブランドの像を描き、そこに至るまでの道筋を明確化した上で、コミュニケーション計画を立案、実施する。」というものがあります。

これ自体は決して間違っていないアプローチと思われるのですが、問題は希求する将来の姿を先取りしたコミュニケーションがともすれば実態とかけ離れた企業像の訴求になりがちな点です。

たとえば、伝統と信頼では優れたブランド価値を確立しているが、革新的イメージが弱い企業があるとします。「革新」、「創造」などのイメージ項目はそれ自体が魅力的なのでブランドビジョンに入れたがるトップマネジメントは少なくないのですが、それは決して現在の姿ではありません。それはあくまで企業ビジョンであって、顧客に約束された当該ブランドの立脚点とは異なるものです。

こうした乖離は、ブランドの担い手である社員に対しても決して良い影響はもたらしません。社員には対外的にこのように言うように、と指示することはできなくもないかも知れませんが、当の社員自身が半信半疑の状態では社外の人にブランドプロミスを説得することは難しいでしょう。

将来のブランドの姿を明らかにすることは非常に価値ある重要なことですが、企業の現実の姿が少しずつでもそこに向かっていると多くの人が実感できる何らかの実態を伴わない限り、広告だけで新しい企業像を作り出すことは非常に難しいか、仮にできたとしても一時的なものに留まらざるを得ないと考えられます。

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