ブランド戦略通信 │トライベック・ブランド戦略研究所

実践!ブランド戦略

第140回:フォルクスワーゲン・ショック

Q 日本でフォルクスワーゲンの販売が急減したのは。
A ブランドイメージの悪化の打撃が海外以上に大きかったようです。

フォルクスワーゲン(VW)の排ガス問題を巡り、検査時だけ排ガスをコントロールする不正なソフトウエアを搭載していたことが今年(2015年)9月に発覚しました。この問題を受けて、VWの日本国内での新車販売が10月に前年同月比で半減したことが判明しました。その結果、前年まで15年間維持してきた輸入車首位の座を譲り渡す公算が大きくなりました。

しかし、同社は排ガス不正問題の対象となったディーゼル車を日本では販売していません。販売減の原因はブランドイメージの悪化としかいいようがありません。

しかも、米国では、あくまで実績値公表前の時点ですが、10月の販売台数は小幅増の観測が出ています。VWは新型モデル車の販促や値引きを米国で行っており、排ガス試験不正問題を受けた販売の落ち込みを補っている模様です (出所:2015/10/30ロイター) 。

このように、日本では対象車種を販売しておらず課徴金の問題も生じなかったにも関わらず、ブランドイメージの低下はより大きかったようです。日本市場では、欧州市場でVWが占めている実用車のポジショニングでは競争が激しいため、ドイツ車ならではのブランドイメージで差別化することが重要でした。しかも、よりプレミアム性が高いドイツ車がシェアを伸ばしており、2015年に入ってから輸入車のシェアはメルセデス・ベンツやBMWが伸ばしていました。このような状況でブランドイメージの悪化を食い止めるコミュニケーションはきわめて重要だったと思われます。しかし、少なくとも初動段階において同社から日本の消費者に対するメッセージが出される場面に出会うことは少なく、有効なコミュニケーション施策はあまり行われなかった模様です。

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