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第129回:ライセンシングでは相手方のロジスティックス能力に注意

Q ブランドをライセンス供与するにあたり注意すべきことは。
A 相手方のロジスティックス能力にも注意を払う必要があります。

ブランド価値を守るうえで大切なことの一つとして安易に安売りしないことがよく挙げられます。

自社で製造し、流通業者を通して販売する場合には、販売者が消費者に対して安易に値引き販売を行わないようにする施策が必要となります。独占禁止法では価格拘束が禁止されていますが、どの流通チャネルに商品を流すかは私的契約の範囲ですので、商品がよく売れているときは意図した結果は実現しやすいといえます。ところが、売れ行きが悪くなって流通在庫がたまると安売り圧力が強くかかるようになります。とはいえ、自社にある製造機能を活かした調整機能は働かせやすい状況にあります。

これに対して、ライセンス契約によって相手方に製造も委ねてしまう場合、どのようにして過剰在庫に伴う安売りを防ぐかが問題になります。契約による制限もないわけではありませんが独禁法上問題になることがあります。むしろ、相手側のロジスティックス能力に注意を払っておくことが実質的に大きな意義を持つことがあります。

たとえば、百貨店で販売するアパレルブランドの中には、予定販売数量の半分だけ海外の安い工場で大量生産し、残りは売れ行を見ながら国内の小規模工場で生産しているものがあります。ライセンシー側がこのような供給体制を持っていれば、ロジスティックスが適切に管理され、その結果価格が安定する可能性は高くなります。

しかし、海外での大ロット生産が前提でしかも店舗間で在庫の調整をする仕組みもないような業態だと、きめ細かな対応は難しくなりいきおい売れ行きが鈍化に伴う処分売りの圧力はより強くなります。また、ロイヤルティの支払条件が実売価格ではなく定価ベースとなっていれば、安売りの直接の損害はライセンシーだけが被りライセンサーには及びません。その結果、ブランド毀損という目に見えない損害をライセンシーがあまり考慮しない可能性があります。この点はあらかじめライセンサー側は注意しておく必要があります。