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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

実践!ブランド戦略

第113回: NPS(Net Promoter Score)という名の推奨意向

Q NPSとはどのようなものですか。
A ロイヤルティ指標として従来から用いられてきた推奨意向と本質的に同じものです。

NPS(Net Promoter Score)とは、顧客に対して「あなたはこの会社の製品・サービスを友人に薦めますか?」という質問を行い、0~10までの11段階の評価をもとに、高評価者(上位2段階)の回答者の割合から低評価者(下位7段階)の回答者の割合を差し引くことによって算出されるスコアです。

これはロイヤルティに関する指標として従来から用いられてきた推奨意向の特殊な場合です。推奨意向には何段階評価でなければならないということもありませんし、スコア化の方法もさまざまですが、NPSはこれらをルール化しています。ただし、経年変化を見ために評価方法を一定にするのは一般的な推奨意向においても変りません。

この推奨意向はさらに満足度の特殊な場合と考えられます。

通常、満足した人のうちの一定割合が推奨意向を持つと考えられるからです。実際、ほとんどのケースで、満足度と推奨意向は比例関係にあり、満足度の値を小さくしたものが推奨意向の値となります。まれに満足度の大小関係と推奨意向の大小関係が逆転することがありますが、多くの場合、合理的な説明が困難な誤差に過ぎません。

このような性質を踏まえ、推奨意向が指標として有効な典型的ケースは、「満足度ではどのブランドも数値が高すぎてそれぞれの間の比較が行えない。より小さな数値が出現し、差異を見やすい指標が欲しい」場合となります。逆に、無効なケースとして典型的なものは、「推奨意向ではどのブランドの値も小さすぎて違いを見ることができない」場合です。

このように、あえて推奨意向やその特殊ケースであるNPSを用いなければならない場合は必ずしも多くありません。それでもこれらの指標が用いられる大きな理由は、人に推薦するくらいのものだから強いロイヤルティがある、あるいは人に推奨するくらいでなければならない、という意味付けの正当性を信奉する層があるからに他なりません。推奨意向は素直な満足度より癖のある数値になりがちですが、マネジメントが好ましい指標と考えるなら前向きに活用することに十分意義はあるものと考えられます。

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