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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

IT企業のブランド戦略

第8回:一番手の戦略−マイクロソフトのブランド戦略

高いブランドイメージを構築する上で重要なことに「一番手の法則」がある。

市場を始めて切り開いたパイオニアがその後も製品分野を代表するイメージをキープするというものである。ソニーはこの法則どおり、多くの分野で世界初の製品を送り出し、同社の高いブランドイメージの源泉となった。

しかし、マイクロソフトの一番手の戦略はソニーと少し意味合いが異なる。

実は、同社オリジナルの製品は意外と少なく、多くの製品は他社の模倣から生まれた、というのが多くの人が指摘することである。

たとえばGUIを取り入れたパソコンではMacintoshがWindowsに先行していた。ブラウザではNetscapeが、表計算ソフトではLotus-123やマルチプランが、ワープロでは一太郎が、それぞれ先行していた。

だが、マイクロソフト製品はそれぞれの分野でデファクトスタンダードとなり、先行したいたはずの他社は次第にニッチな製品となっていく。

シェア確保の原動力はいうまでもなく同社がOSで圧倒的なシェアを持っていたことだが、それだけではない。製品の継続的な改善も大いに貢献した。

たとえば、表計算ソフトExcelは、継続的なバージョンアップの結果、次第に最も高機能でしかも使いやすい製品になっていった。

一般の消費者は必ずしもこのような経緯をよく知っているわけではない。ここ数年のうちに急速にインターネットに親しむ人が増えたが、その時には既にマイクロソフト製品が当然のようにパソコンにインストールされていた。

今となって見ると、マイクロソフトは革新的な技術力でITの業界をリードしている、というイメージを抱く人は少なくない。変化が激しい業界にあって高シェアの時代を長く維持してきたこと、バージョンアップが継続的に行われていること、からリーダーとしてのブランドイメージが確立されている。

同社の本質は独創的な技術を他社に先んじて生み出す、というより、社外の技術のよい所を参考にしながら、それをより大衆が使えるように継続的にカイゼンする、というところにあるのではないか。小刻みな継続的改善がやがて大きなイノベーションにつながるということはよくある。

その意味で、マイクロソフトはソニーよりもむしろ松下電器によく似ているように思う。一番の違いは社歌がないことか。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。

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