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第4回:製品カテゴリーの代名詞となる−アップルのブランド戦略

製品カテゴリーの代名詞として自社ブランドが市場と分かちがたく結びつくのは強いブランドの証である。

アップルコンピュータはマッキントッシュ(Mac)の時代からコアなユーザーが多いメーカーである。しかし、Macはマイクロソフトの攻勢によって次第にニッチな市場に追いやられ、一時アップルは経営的に厳しい状況に陥った。

これに対し、iPodはアップルの救世主となり、今や同社の躍進を支えている。

もともとデジタルオーディオプレーヤーはアップルが初めて開発したものではない。先行していたブランドとして米国のRIOや韓国のiRiverなどがある。日本メーカーも参入していたが、系列のレコード会社の著作権問題などもあり、消極的な取り組みにとどまっていた。

そこへ、2001年に登場したiPodは、当時としては大容量の5GのHDDを搭載し、優れたデザイン、さらにパソコンと連携して大量の音楽データを扱うためのソフトウエアであるiTunesによって、携帯に適した初めての実用的な製品として瞬く間にヒット商品となった。さらに、MacだけでなくWindowsに対応し、著作権問題をクリアしてiTunes Music Storeという音楽流通の仕組みと連携することによって、多くのユーザーから支持されるビジネスモデルを作り上げた。

今日、iPodという言葉はアップルの製品を指すにとどまらず、時には携帯型デジタルオーディオプレーヤーという製品カテゴリーを表すものとして用いられることがある。

このような状況は、かつてソニーがウォークマンによって音楽をアウトドアで聴くというライフスタイルを世界中に広めた時代があった。

以来、ウォークマンは単にソニー製品を表すだけでなく、携帯型音楽プレーヤーという製品カテゴリーを表す代名詞として用いられ、ソニーブランドの神話の一要素となっていた。

今や、そのメリットを享受できる立場は完全にアップルに移ったようである。

このような状態になると、関連商品もiPodを中心に市場が形成されるようになってアップルにとっては好循環となり、逆に競合メーカーはなかなかシェアを逆転するのが難しくなってしまう。

確かに先行モデルはあったかもしれないが、デジタルオーディオプレーヤーを市場として確立したのはアップルであり、それがゆえの高いブランド力ということができよう。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。