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第12回:外部資源の活用−アマゾン・ドット・コムのブランド戦略

誰しも自分が書いた本は売れて欲しいものだ。

だから、ささやかかも知れないが、周囲の人に一所懸命宣伝をする。(もっとも、相手が友人だと売りつけることはできず、結局あげることになるのだが。)

かくいう筆者もはじめて共著でなく単独で一冊書き上げたときは、新聞や雑誌の書評欄で取り上げてもらおうと、学校の先生に書評を書いてもらったものだ。(もっとも、実際には自分で書いて持っていって了承をもらうのだが。)

それが、今やアマゾンでレコメンデーションされたり、カスタマーレビューがたくさんつくことが良い宣伝となる時代となった。

インターネット草創期の1994年、インターネット書店アマゾン・ドット・コムの前身、Cadabra.comがオープンして以来、何年もの間赤字続きだったために、アマゾンは「成長性と革新性で注目されるが、ビジネスとして本当に成り立っていけるのか?」という存在だった。

しかし、その後インターネットバブルがはじけ多くの企業が消え去る中で利益を上げ始め、一転ビジネスモデルの優秀さに注目が集まるようになった。

アマゾンが購買意欲を喚起する仕組みの一つにカスタマーレビューがある。

カスタマーレビューは多くの人が参加することで価値がある。本人が書くのはいかがかという気がするし、仮に友人に好意的に書いてもらうとしてももせいぜい1、2件にとどめた方がいい。だいたい、レビューがどれも5つ星なんてちょっとわざとらしい。

CGMは好意的な書き込みの中に適度に批判があるからこそ信憑性がある。主張があるような本ならむしろ賛否両論あるからこそ自分もぜひ読んでみたいという人も少なくない。

アマゾンには外部のサイトが同社の情報を利用できるようにする仕組みがある。外部サイトは、アマゾンの情報を利用して自社サイトの魅力を高めることもできるし、アマゾンに誘導して商品が売れれば自分の収入にもなる。外部サイトが個人のブログならちょっとしたお小遣いだ。もっとも、実際にはせいぜいランチ程度のお小遣い程度の人が多いようだ。これをアマゾン側から見ると、1件1件は小さくても、数がまとまればそれなりの収入となるだろう。しかし、こうした売上への目に見える貢献ももちろん大切だが、これだけあちこちのサイトにリンクされ露出すると、それ自体の宣伝効果が無視できなくなってくる。こうして、アマゾンのブランド力はますます高まることになる。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。