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Brand Strategy journal ブランド戦略通信

IT企業のブランド戦略

第10回:サービスイメージの伝達(その2)−auのブランド戦略

昔の携帯電話は名前の通り、携帯して通話するための道具だった。

通話という基本性能に対して、ユーザーは「つながらない」、「聞こえにくい」、「すぐ切れる」という不満を抱き続けてきた。それに対して、キャリア側は技術開発とインフラ整備によって応えてきた。

しかし、1999年にiモードが登場して以来、ビジネスモデルは一変した。音声サービスではなく、データサービスが中心となった。差別化のポイントは技術やインフラそのものよりも、その上で展開されるサービスに移っていった。

そのような時期に、KDDI(『KDDI』がDDI、KDD、IDOの3社が合併して発足したのは2000年10月、auのブランドはそれより少し前の同年7月、cdmaOne方式はそれより以前から提供されていた)が展開したcdmaOneの宣伝は、cdmaOneという方式そのものや「途切れにくく、クリアな音声」というアドバンテージを強く訴える、技術主導型のマーケティングであった。

その一方でデータサービスのEZwebは、当初はパケットではなく通話時間に応じた料金だったことなどの理由でユーザーからの支持を集めることができなかった。その結果、NTTドコモに圧倒的な差をつけられてしまうことになる。

しかし、同社は第3世代のCDMA2000 1Xでは、cdmaOneでの反省を生かし、サービスを重視した戦略を徹底して行うようになった。

その結果生まれたサービスが「着うた」であり「EZナビウォーク」だ。

同社は端末のデザインの向上にも取り組んだ。それまでの携帯電話の端末は無骨な印象を与えるものが多かった。大きさも女性の掌にはやや太すぎるものが少なくなかった。同社は他のメーカーで活躍していたインダストリアルデザイナーを引き抜き、端末メーカーと協力して魅力的なデザインの端末を世の中に送り出した。お陰で、「auの端末はデザインがいい」というイメージができた。その後、ドコモがデザイン重視の携帯を開発して大々的に宣伝し、今ではどのキャリアの携帯も魅力的なデザインの端末を出すようになっている。

今日、携帯の端末は偉大なひまつぶしの道具だ。

ゲームができ、音楽が聴け、メールをやり取りでき、Webページを見られる。ワンセグ対応端末ならテレビも見られる。ひまつぶしにはうってつけだ。その道具には確かに先端技術がたくさん詰め込まれている。しかしユーザーが欲しいのは小難しい技術用語ではなく、外出先でのちょっとした空時間を有意義に過ごすための小道具である。

※本コラムは、2006年11月〜2007年4月にかけて「japan.internet.com」に掲載された内容に加筆・修正したものです。

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